大統領選挙でオバマが勝利を収めて終わり、ここ数年の緊張したアメリカの空気が少しは緩んだようである。

 選挙前数日間の両陣営のインターネット上の攻勢もすごかったようだ。ことに資金に恵まれていたオバマ陣営は、「これからの選挙活動はこう変わる」と思わせるいくつもの戦略に出た。

 投票日数日前に、接戦が予想される州で若い有権者を対象にした携帯電話の広告キャンペーンを張った。

 「早めに投票しよう」というバナーが表示されるこのキャンペーンは、ブーストモバイルというプリペイド携帯の所有者を対象に広告を打ち、SNSテキスト・メッセージ付き。「オバマ」というリンクをクリックすると、近くの投票所が表示されるしくみだ。ブーストモバイルは、1カ月あたり200万のインプレションがあるという。

 それ以前にも、オバマ陣営はウェブサイトやFacebookで支持者層を広げ、選挙資金を募っていたが、選挙日が近づくと遊説先の演説に集まってくる支持者にテキスト・メッセージングのワークショップを開いていたらしい。

 ワークショップは演説が始まる1時間ほど前から始まり、家族や友人にどうやってテキスト・メッセージを送るのか、オバマのFacebookにどう加入するのかといった方法を指南していたという。オバマ支持層をサポーター自身によって広げてもらい、選挙所に確実に出向いてもらおうというもくろみだ。

 副大統領候補を発表する直前、オバマ陣営はその名前を支持者には誰よりも早くテキスト・メッセージで伝えると発表して、これに多数の有権者が登録した。実際には何100万人に充てた同時送信がうまく働かず、テレビ・ニュースがジョー・バイデン上院議員の名前を先に報道してしまったのだが、この際支持者の名前や郵便番号を集め、その後の選挙戦略に利用したという。何でもオバマ陣営が握っていた有権者の携帯電話番号は、600万とも1000万人分とも言われているからすごい。

 ウェブサイトやFacebookだけでなく、オパマはつぶやきブログのTwitterにもアカウントを持っていて、選挙日までほぼ毎日か1日おきに遊説先からのメッセージが送られてきた。数カ月前、私は試しにこのTwitter でオバマのフォロアーになってみたのだが、すぐさまオバマが私のフォロアーになるという手で返答して来たのには舌を巻いた。こんなもの、もちろん自動設定によって行われているのだが、その細やかな配慮ぶりはオバマ陣営の絨毯作戦のようなインターネット戦略を想像させたのである。

 大統領選のインターネット利用を追っている専門家によると、2004年頃までは共和党の方がインターネット利用で先を行っていたらしい。ところが、使い方がまずかった。「私は○○○」「我が党はXXX」と一方的に叫ぶばかりで、このメディアの両方向性をうまく理解できていなかったという。それに対してオバマ陣営は、資金集めからコミュニティーの組織化、メッセージとあらゆる活動側面であらゆる手段を講じ、口コミやネットワークを利用してどんどん固い支持層を築いていったのだという。

 だが11月4日の選挙当日、テキスト・メッセージは大に悪用もされた。多数の大学生やマイノリティー住民地区の住民に向けて、「選挙所が大変に混み合っているので、オバマ支持者は明日になってから投票するように」とか「あなたの選挙登録は不備なので、選挙はできません」というメッセージが届いたのだ。若者やマイノリティーが多いオバマ支持者を選挙所に向かわせないようにしようという必死の策略である。

 さて、本日のオバマのTwitterにはこんなメッセージが載っていた。

 「We just made history. All of this happened because you gave your time, talent and passion. All of this happened because of you. Thanks(僕たちは共に歴史を作り出しました。すべては、あなたたちが時間と才能と情熱を傾けてくれたからです。すべては、あなたの力で起こったのです。ありがとう)」