新春の就職シーズンを前にして、日経パソコン編集部にインターンシップ制度を通して学生が職場体験にやってきました。現在、東京大学3回生の彼は、いまどきの学生には珍しいほど真面目で、さわやかな笑顔が印象的です。

 そんな彼に大学でのパソコン・ネットの利用状況をたずねてみると、興味深い話が飛び出しました。話の発端は、ある授業で出されたグループ発表の課題です。内容は携帯電話が存在しない国の国王に対して、どんな機能をアピールして携帯電話を普及させるかというもの。ポイントは携帯電話の本質を何ととらえるか。発表は翌週の授業、つまり1週間しかありません。

 インターン生の彼が組んだグループは全部で5名です。国家資格の1次試験に合格し、連日、官庁訪問で忙殺される学生が1人。大学院受験を控え、試験勉強で忙しい学生が2人。最後の1人はデザイン系の仕事もしている学生で、仕事の締め切りが近いとのこと。互いに忙しく、スケジュールもバラバラのため、到底全員で集まる時間を確保できそうにありません。

 そこで彼らが利用したのが「Googleドキュメント」です(図1)。ご存じの方もいらっしゃるかと思いますが、Googleドキュメントはインターネット上にアップした文書の内容を、複数人が次々と更新していけるWeb 2.0的なサービスの一つです。Googleドキュメントを使えば、メールで文書を送って修正を待つといった面倒な作業は不要になります。

図1 インターネット上で同じ文書を複数人がリアルタイムに編集できるWebサービス「Googleドキュメント」。図は実際にグループ発表の資料作成で作った文書
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 彼らはまずメーリングリストを使って、各人のアイデア出しとGoogleドキュメントで文書作成するための予定を調整しました。実際にGoogleドキュメントを使って文書を作成したのは、1週間のうち2回。夜の11~12時にグループ各人がパソコンの前に座って、Googleドキュメントの指定文書を開きます。作業は2時くらいまで続けたとのこと。

 作業を開始すると、どんどん修正が加えられます。その間のコミュニケーションは、Gmailのチャット機能を併用。ある程度内容がまとまったところで、発表当日の授業開始1時間前に、ようやく5人が顔を揃えました。今度は5人がノートパソコンを持ち寄ってGoogleドキュメント上の文書を開き、顔を突き合わせながら最後の修正を施しました。

 無事、プレゼンが終了。彼らのグループは携帯電話の本質をネット、テレビ、音楽といった「さまざまなメディアにたどり着けるリモコン(入り口)」ととらえました。国王に対しては、利用者の興味に応じて各メディアにアクセスできる機能を後から追加できる携帯電話をアピールしようと考えました。余談ですが、他のグループでは電車やベッドの中でも携帯電話を手放せない人にヒントを得て、携帯電話の本質を「指のおしゃぶり」ととらえるアイデアも出たようです。

 彼らがGoogleドキュメントを使った感想を聞くと、「僕たちの状況ではGoogleドキュメントなしだと、とても1週間で発表資料を作成できなかった」とのこと。また、アイデアと同時に作成した議事録も、メンバーで随時確認しながら修正できる上、後から清書する必要がなかったので、非常に効率的だったようです。

 不満点は、修正内容が文書に反映されるまで時間がかかること。ほかには、同じ個所を複数人が同時に編集できないことや、文書が2ページに渡った場合は文書全体を見渡せないので、いつ修正が入ったのか分からず困ったとのこと。前者については仕方ないですが、後者については修正個所に色を塗ることで対応したそうです。

 多少の不満はあるものの、やはりGoogleドキュメントの利便性は高いようで、現在ではサークルの合宿での部屋割り表をGoogleドキュメントで作成するなど、幅広く活用しているようです。同じ文書を見ながら修正を加えられるため、「この人とこの人は相性があまり良くないから違う部屋にしよう」といったコミュニケーションが円滑に進められるといいます。

 最近の学生はITに慣れ親しんでいるとよく聞きます。しかし、ここまで活用しているとは、正直驚きました。今後、彼らが社会に出ると、仕事の進め方は大きく様変わりすることでしょう。インターン生に教える立場の私が、逆にいろいろと学ばせてもらう結果となったようです。