太陽活動が不活発になると、なぜ地球が寒冷化するのか――「太陽か地球に届く熱エネルギーが減れば、地球が冷えるのは当然だろ」。いやいや、そう簡単なことではない。もちろんそれも影響するが、それだけでは説明がつかない。

 この問題で、今、地球温暖化の問題とも絡んで科学者の間に議論を巻き起こしている仮説がある。

 デンマークのヘンリク・スペンスマルクという宇宙物理学者が1997年に提唱した仮説だ。一言でいえば、「地球上の雲は、銀河系の彼方から飛んでくる強力な宇宙線のせいでできる」というものである。現在、「スペンスマルク効果」と呼ばれている。

 「なんのこっちゃ?」と思う人も多いだろう。空を流れる雲はできるのが当たり前。それに銀河宇宙線が関連しているとはどういうことだろうか。

 しかし、だ。雲ができるという現象は、よくよく考えるとかなり難しい問題をはらんでいる。飽和水蒸気に何らかの刺激が加わると一気に水蒸気が液化し、大気中を浮遊する小さな塵を核にして水の微粒子となる、と、こんなシナリオが描けるが、では何らかの刺激とは何なのだろうか。

 そこでスペンスマルクは、銀河系空間から飛んでくる高いエネルギーを持った宇宙線が、雲が生成するきっかけであると提唱した。

 放射線をカウントする霧箱という実験装置を見たことがあるだろうか。アルコールなどの飽和蒸気を満たした箱の中をアルファ粒子などの放射線が通過すると、通過したところの飽和蒸気が刺激されて霧となり、放射線の軌跡の通りに、霧の筋ができる。
 これと同じ原理だ。高エネルギーの銀河宇宙線が大気上層部に到達し、その中を飛ぶと、大気中の水蒸気が凝結する。それが核になって雲ができるというわけである。太陽からも様々な粒子線が地球に吹き付けているが、エネルギーが小さいので雲を生成するには至らない。

 雲は光エネルギーを効率的に反射する。雲ができると、地球は太陽からの熱エネルギーを吸収する割合が減る。このため、雲が増えると地球は寒冷化する。
 つまり、地球に到達する銀河宇宙線が増えると、雲が増えて地球は寒冷化、銀河宇宙線が減ると、雲が少なくなって地球は温暖化、ということになる。

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