遅ればせながら、さあ、私もiPhone 3Gを買うぞと思った矢先に、「3Gの技術的不具合」の噂が広まっている。

 不具合は、通話中に接続が切れるとか、電波が弱くて繋がらないという通信問題。発売直後には、オンラインでメールや住所録などのデータを同期できる個人ユーザーのためのサービス、MobileMeで問題が出ていた。データがごっそりなくなったとか、アクセスを拒絶されるといった内容だ。これについてはすでに先月、アップルがその落ち度を認めて、ユーザーに1カ月の利用料を無料にするというお詫びの手に出ている。

 一方、通信問題の方は7月終わりごろから世界各地でクレームが出始め、まだはっきりした原因もつかめず、解決もわからないという状態。「いったいいつ頃になったら、安心して買えるものかな」と思って、サンフランスシコのアップル・ストアーに立ち寄ってみた。

 この不具合のせいで、ひょっとしたら閑古鳥が鳴いているかと思ったが、まったく反対。夏休みの観光客と、強いユーロにモノを言わせたヨーロッパからの旅行者で、店内はますますの繁盛ぶりである。利発そうな店員を捕まえて聞いてみた。

「iPhoneを買いたいと思っているんですけれど、不具合があるそうで、いつ頃ならば解決されているでしょうか」

 うっかりしていたが、アップルはまだ不具合を認めていないのだった。彼の答はこれ。

「ああ、それは他の人々がiPhoneについて言っていることであって、アップルではそういう問題は認識していないんです。買ってもらって、もし問題があればすぐに取り替えますよ」

 噂によると、不具合の原因にはいく通りの可能性があるとされている。ひとつは、内蔵されたインフィニオン製のチップのシグナル感度を上げすぎたため、都市部で利用者が集中したところでは3G通信幅がすぐにいっぱいになってしまうというもの。もうひとつは、製造のムラによって起こるハードウェア上の問題。さらにチップとソフトウェアの噛み合わせという見方もある。やはり噂によると、アップルはソフトウェアのアップデートでこの通信問題を解決しようとしているらしいが、ソフトでは解決できないから製品リコールだろうとか、いや、リコールするほどの問題でもない、と噂もいろいろ錯綜している。

 「やっぱりもう少し買うのを待とう」と思って、店を出ようとすると、もう一人、今度はジニアス・バーの店員が声をかけてきた。「iPhoneについてご質問ですか?」本当にアップル・ストアーは店員のしつけがいい。

 やはりアップルでは不具合があるとは考えていないと言うこの彼のアドバイスは、もし3Gで接続が悪ければ、エッジネットワークに切り替えて設定しておけばいい、とのこと。でも、高速ネットワークが使いたいから買いたいのだけれど……。やっぱりもう少し待つべし、店を出て来た。

 しかし、感心したのは、二人の店員がいずれも示した最初の反応である。

「技術的不具合の噂とは、どんな不具合ですか?」

 と、まずはこちらの情報量を探ってくるのである。やっぱりしつけがいい。

「ええっと、インフィニオン製のチップが問題だとか……」。

 そう言えば、アップルは内蔵されている部品のメーカーの名前も公表していないのだった。

 アップルは技術的不具合をなかなか認めない会社として有名だが、別の客の様子を見て、やっぱり噂は本当そうだと思った。子供を乳母車に乗せた若い母親とおばあさん、友人という女性ばっかりの3人連れだ。

「旅行でサンフランシスコに来たら、iPhoneに電話がかからないの。そこのジニアス・バーでチョイチョイと直してもらえるかしら? それも今すぐに」

 問題があれば製品を交換するが、それがわかるまで待ってほしいと言われ、その女性は「いやよ。休暇中なんだから、そんな携帯のために時間を費やすなんて。すぐ修理できないの?」と噛み付いている。

 iPhoneは、コンピュータ並みの機能盛りだくさんな複雑な製品。残念ながら、靴のかかと修理のように簡単にはいかないのだ。さて、アップルは8月18日になって、「バグ修正」と称してソフトウエアのアップデートを行った。これが接続問題を解決するのかどうか、関係者は様子見に入っている。