またぞろ眠っていたはずの妖怪が動き出した。「iPod」をはじめとする携帯音楽プレーヤーにも「私的録音録画補償金」を課そうではないかとの提案が文化庁から出てきた。ここ数年、音楽はネットから購入することしかしていない私などからすれば「何を今更、時代錯誤も甚だしい」としか言えない動きだ。

私の購入費は確実にアーティストに流れている

 文化審議会 著作権分科会(文化庁長官の諮問機関)私的録音録画小委員会の2008年度第2回会合(5月8日)で文化庁が示した提案の中に、音楽CDや無料デジタル放送からの録音・録画に関して今後もしばらく存続すべき、との考え方に加え、録音録画を主たる用途としている機器及び記録媒体を対象とすべき、として、iPodやBlu-ray Discレコーダー、HDD内蔵の録画機能付きテレビ受像機などを補償金の対象機器として追加するとの提案を盛り込んだ。

 いやはや、今や、世界の音楽流通はCDなどで売りさばかれるより、ネットで販売されることがはるかに大きなビジネスになりつつあるのをご存じないのだろうか。iTunes Storeで楽曲を売っているアップルは大型小売チェーンのウォルマートを抜いて全米第1位の音楽小売業者に成長した(アップルの発表)。既に音楽流通の主流はCDからネットへと逆転している。

 重要なのは、ネットワークを通じたその売り上げは、1曲ごとに厳密に管理され、権利者であるアーティストにきっちりと支払われている、ということだ。私の例で言うと購入した楽曲、あのグラミー賞をめでたく受賞したハービー・ハンコックの「River:The Joni Letter」も、これまたグラミー賞を獲得したマリア・シュナイダー(Maria Schneider)の「Sky Blue」も私の支払った楽曲購入代の数%は確実に著作権保有者に支払われている。(写真1)

写真1 グラミー賞受賞アーティストのマリア・シュナイダーはメジャーレコード会社とは無縁の存在だがその音楽活動は高く評価されている
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 にもかかわらず、iPodに「私的録音録画補償金」を上乗せして、著作権者に分配する。まったく意味不明の官僚的発想だ。

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