原因はトンネル効果

 電子が絶縁体をすり抜ける(実際には同量のエネルギーが反対側に伝搬する)のは、量子力学で言うトンネル効果によるものだ。ミクロの世界では、電子が絶縁体という壁を一定の確率で越えるという現象があり、強い電圧を与えることで電位差が生じ、確率が高まる。20Vもの高電圧を加えるのはこのためだ。絶縁体の浮遊ゲートに蓄えた電子はすぐに漏れ出すことはなく、ゆえに電源を落としてもフラッシュメモリーのデータは消えない。
 しかし、書き込み時や消去時に強い電圧を与えると、浮遊ゲートを構成する絶縁体はわずかながら劣化する。書き込みや消去を繰り返していくうちに劣化は進んでいき、最終的には電子が浮遊ゲートから漏れ出すようになる。つまり、正しいビット情報を保持できない。この特性が、フラッシュメモリーに書き込み回数の制限がある理由だ(図14)。

【寿命があるのは電子の漏れが原因】
図14 セルに高電圧をかけなくても電子は絶縁体を通過することがある。書き込みを繰り返して絶縁体が劣化すると、電子が漏れやすくなるほか、通常の状態でも電子は一定の確率ですり抜ける
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 また、通電していない状態でも、電子はトンネル効果により一定の確率で絶縁体から少しずつ漏れ出す。5年や10年という長い期間を経るといずれは自然消失する。また絶縁膜が劣化すると、電子が漏れる確率はより高くなる。要するに書き換えた回数が増えると保持期間も縮むのだ。フラッシュメモリー特有のデータ保持期間という仕様は、このような仕組みに由来する。

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