毎週日曜朝8時からの「仮面ライダーキバ」が見逃せない。なにしろ、今回の仮面ライダーはヴァイオリン職人なのだ。主人公紅渡(くれない・わたる)は仮面ライダーとして、人類の敵であるヴァンパイア一族のファンガイアと戦いつつも、父親から継いだ工房でヴァイオリン製作に勤しんでいる。子供の頃には変身ヒーローが日頃どのようにして身を立てているかなど気にしたこともなかったものだが、今回の仮面ライダーはちゃんと定職に就いている。

 いや、定職に就くどころの話ではない。なにしろヴァイオリン職人である。なりたくとも誰にでもなれるような職業ではない。天才と呼ばれた父が遺した銘器「ブラディ・ローズ」の美しさを再現しようと、ニスの材料に使うために食べ残しの魚の骨を集める姿はまさに現代の名匠ストラディヴァリだ。だが魚の骨が発する異臭にご近所からは苦情が殺到、ついたあだ名は「お化け太郎」。

 紅渡は汚名を返上すべく、ご近所さんを無料招待しヴァイオリン・ミニリサイタルを開くが、極度の緊張からことごとく音を外してさらに不評を買ってしまう。彼は世間に対する適応力が異様に低い「この世アレルギー」なのだ。ひとたび仮面ライダーに変身すればヒーローの主人公だが、変身前はとことん後ろ向きのネガティブな思考の持ち主。それが新ライダーの持ち味である。

 物語は2008年の主人公と1986年の主人公の父親を交互に描きながら進行する(この父親がまた80年代バブルにぴったりな軽薄な男でおかしい)。さすがに「のだめカンタービレ」のようにオープニングがクラシック曲だったりはしないが、主人公およびその父がしばしばヴァイオリンを手に取ってくれるのが嬉しい。さらに変身後の仮面ライダーがガルルフォーム(というのがあるんです)でパワーアップして戦闘する場面では、ショパンのエチュード作品10-4のアレンジが流れる。あれ、ヴァイオリン職人なのにピアノ原曲?と思わなくもないが、スリリングで緊張感のあふれるこの難曲を戦闘シーンに使うというアイディアは見事だ。

 すでに放映された第5話までの段階では、物語の全体像はまだまだ明らかになっていない。だが、おそらくどこかで銘器「ブラディ・ローズ」が重要な役割を果たすに違いない。

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