ネット通販の展開を黎(れい)明期、拡大期、収穫期の3段階に分けて考えている。もはや拡大期に入ったと思う。拡大期に入って、主な客層、販売主体、技術基盤、主力商品が変われば、おのずと戦略も変わってくる。

 黎明期の客層は研究者、技術者、ビジネスリーダーや、新しもの好きの生活者が中心だったが、今は次第に一般企業や消費者にまで拡大している。販売者の方も、先端的なネット専業の通販業者や個人商店主のみならず、今では本業で実力のある流通業者からメーカーまで、企業規模を問わず参入している。未成熟で高価だった技術基盤も、高性能パソコン、ブロードバンド、次世代ケータイのほか関連サービスが充実し、ネット通販は今や安くて便利で身近な存在だ。主力商品にしても、株式、チケット、書籍、CD、特産物など、いかにもネット通販っぽかったのは今や昔。カタログ通販で扱われるような一般的な商品も売れて採算が合う時代だ。今後は法人間の卸売取引も盛んになろう。

 こうした構造変化の兆しを感じ、拡大期に応じた戦略シフトを考えている。

1.Google対策≠受け身客対策

 例えばこれまでの集客対策は、検索エンジン対策が中心だった。目的買いの積極客のために「Tシャツ」「オーダー」「プリント」などのキーワードの組み合わせで、常にトップ表示されることが重要だった。しかし拡大期には、一般的な受け身客も視野に入れる必要がある。顧客リストが豊富な通販サイトと協力した顧客開拓が必要となろう。

2.ネットコミの時代は終わった

 黎明期の商売は、キーマン同士の口コミならぬネットコミの自然発生で広がった。いわば相互扶助のネットワーカー精神のたまものだ。今後は多くの一般人による「草の根ネットコミ」、Webログとアフィリエイトによる趣味とお小遣い稼ぎの両立が広まるだろう。

3.文字だけのメルマガでいいのか

 新たな客層相手には、メールマガジンのあり方も一考を要する。通信環境が未熟な黎明期は文字中心で、客層もそれに納得していた。しかし今はPOPチラシやテレビCMのようなメール配信さえ可能。新たな客層ほど、直感的で分かりやすいメルマガを歓迎するはずだ。

4.拡大期はますますオンリーワン

 集客手法以上に大事なのがお店の戦略だ。前回述べたように肝心なのはオンリーワン商品。競合が激しい拡大期は、同じような商品なら一番安くて便利な店で買う傾向が顕著になろう。その店でしか買えないオンリーワン商品を自社さらにはパートナーと共同で開発し、サービスも含めてブランドを構築したい。

5.異業種のオンリーワンと手を組め

 自社のオンリーワン戦略を徹底的に進めると同時に、異業種のオンリーワン企業とも連携したい。当社でいえば、Tシャツ以外のオーダーメイドに強いメーカー群と連携すれば、相互に顧客拡大、顧客満足が図れる。システムや広告などの効果的な相乗りも可能だろう。

6.細々と実験はもうおしまい

 専門サイトによる店鋪展開も検討したい。例えば黎明期の当社は小さな新会社を設立して情報発信+小売のサイトを細々と運営していた。しかしそれだけでは対応しきれず、法人専門の卸サイトを新設するに至った。今後はこれを皮切りに、究極の国産限定品、お得な中国製品、デザイナー向け無在庫販売など、顧客ニーズ別サイトや商品別サイトを全社展開する計画である。

7.自前主義ももうおしまい

 黎明期なら自前主義でこじんまりと展開できても、拡大期には受注量も物流量も急増して手に負えなくなる。ここで、コールセンターや物流センターに投資するのはコストもリスクも大きすぎる。アウトソーシングをうまく活用して、外部のプロの力を固定費ではなく変動費ベースで使いたい。

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 拡大期には個人商店を企業に変えるビジネス感覚が問われるはずだ。ここでの投資と展開次第で次なる収穫期での成否が決まると心したい。来るべき収穫期は、実は弱肉強食期でもあるからだ。

出典:日経パソコン 2003年12月8日号
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