iPhoneに関連して、アップルではなんだかみっともない動きが続いている。最新のニュースは、「iPhoneは現金購入できない」というものだ。

 6月末に大騒ぎでiPhone が発売されてたった2カ月後に 、599ドルだったiPhone(8GB)の価格が200ドル(約2万3000円)も下がって、多くのアップル・ファンが唖然としたニュースを覚えておられる方も多いだろう。携帯電話としてはかなり高いけれど、スマートでかっこいいし、アップル製品だから仕方がないかと涙を飲んで大枚をはたいたファンは、「それなら最初から安くしろよ!」と心底怒りを感じたものだ。

 その後、大枚をはたいただけでなく、行列に並んだりしてiPhoneを必死に手に入れた初期の購入者から山のようなクレームが寄せられた。それを受けて、アップルは100ドルのリベート・プログラムを発表した。アップル・ストアーでのみ使えるクレジットとして、100ドル分の電子マネーを返金するのだ。その時のスティーブ・ジョブズの説明のことばが、「正しいことをしたい」というものだったが、そもそもクレームが来るまでそんな対処も思いつかなかったのかと、一部のファンはさらに機嫌を悪くしている。

 そのクレジットの返金は、自己申告制である。アップルのサイトから電話番号と製品のシリアル番号を入力したあとに、自分のiPhoneに届くSMSメッセージに記された暗証番号を登録すると電子マネーが使えることになる。返金申請のリンクも、ある日突然アップルのサイトに上がっていて、正式なアナウンスメントがなかったと文句をつけている人は多い。

 iPhoneがクレジットカードでしか買えないという妙なことになったのは、1週間ほど前のことだ。クレジットカード、あるいはデビットカード(銀行口座から直接現金を引き落とすカード)のみ。つまり現金ではiPhoneが買えないのである。現金だけでなく、小切手もダメ、何とアップル・ストアーの商品券でもダメである。

 アップルはiPhoneの 発売以来、ハッカーとの闘いを続けている。今回のクレジットカード限定作戦はもちろん、専属の通信事業者であるAT&Tのロックを解除して、他の通信事業者でもiPhoneを使えるようにする改造ハッカーを退治するための試みだ。ハッカーたちは、現金でiPhoneを買ってロックを外し、それを転売してきた。現金購入なら身元は割れなかったろうが、クレジットカードやデビットカードでしか買えないようにすればハッカーも躊躇(ちゅうちょ)するだろうというわけだ。

 一説によると、すでに25万人ほどがロック解除するのを目的にiPhoneを購入しているらしい。iPhoneの売り上げだけでなく、AT&Tの月額契約料から18ドルを受け取っているとされるアップルとしては、元を絶って今度こそハッカーらを懲らしめようというところだ。

 ところで、上記の100ドルのリベートも、AT&T利用者でないと受け取れない仕組みになっている。アップルは、あちらからもこちらからも牙城固めに必死の様相なのである。ただ、製品の購入に関して現金を使えなくするのは違法とはならないが、商品券が使えないのは法的に問題があると指摘する専門家もいる。

 私自身はずっとアップル・ユーザーだが、製品の斬新さとはうらはらに、どうも近頃はアップルのマーケティングの不備や顧客をあおり立てたり振り回したりする様子に、ちょっと「古くさい会社」の匂いがして仕方がない。少し腹も立っているのである。

 そうこうするうちに、11月5日、グーグルがとうとう“グーグル・フォン”の正体を明らかにした。一部でうわさされたようなグーグル・ブランドの携帯機器を製造するものではなく、「オープン・ハンドセット・アライアンス」の下に多くのメーカー、通信事業者と提携関係を結び、Linuxを基本にしたグーグル製「アンドロイド」プラットフォームを広めるというものだ。日本企業では、NTTドコモ、KDDI がこのアライアンスに参加している。

 通常のウェブブラウザーが表示できるなど、背後にはグーグルの広告基盤を拡大しようという意図が見えるが、オープンな開発インフラを作って携帯電話の間にある壁を取り払おうとするあたり、アップルとは対照的なアプローチだろうか。けっこうおもしろいアプリケーションやユーザー・インターフェイスが出てくるかもしれないし、携帯業界の重心が変わる可能性もある。

 実際にこのアンドロイドを搭載した携帯電話が発売されるのは、来年後半とのこと。頭のいいアップルと、頭のいいグーグルがどう競合するのか。私は楽しみで仕方がない。