先月に続いて今月も青森にやってきた。快晴の青空に八甲田の山々が映える。いつもながら思うことだが、日本の自然というのはなんと緑が豊かなのだろう。つい数日前にフランスとスペインを歩き、貧しい土地になんとか牧草を育てて酪農で暮らしている人々の姿を目にしてきた。苦労を重ねて作った加工品のチーズやワインもおいしいけれど、豊かな自然の国の食べ物は、やっぱりそのまま食べるのがいい。

 先月は、津軽富士とも呼ばれる岩木山の麓でとれたブランドとうもろこし「嶽きみ」の売店が青森空港のロビーに出ていた※1。乗務を終えたフライトアテンダントのみなさんが、この売店でとうもろこしを買っているのを見て、僕も茹でたとうもろこしにパクついてみた。あま~いのである。茹でたとうもろこしがここまで甘いというのは相当な糖度だ。さすがに、今月はその売店もなくなっていた。もう秋かあ、ちょっと残念だなあ、と思っていたら、りんごが目に飛び込んできた。そうか! りんごがおいしい季節がやってきたのだ。

 りんごといえば、青森。青森といえばりんごだ。地方自治を仕事にしている人ならば、りんごといえば板柳町(いたやなぎまち)の「りんごまるかじり条例」である。

 りんごまるかじり条例などというと、なんだか奇をてらったネーミングのように思われるかもしれないけれど、実は深刻な事情から生まれた条例なのである。正式な名称は「りんごの生産における安全性の確保と生産者情報の管理によるりんごの普及促進を図る条例」である。この条例の施行規則に「りんごまるかじり条例」という略称が登場する。

 「りんごまるかじり」は、板柳町のみんなの切実な願いであった。その願いというのは、町のりんごを消費者に安心してまるかじりしてもらいたいということなのである。そして、そのきっかけは、2002年8月に町内の12戸の農家が発がん性のある無登録農薬をりんご栽培に知らずに使ってしまっていたことが発覚したことだった※2

 海の幸でも山の幸でも、そのまま食べる文化のある日本では、食の安全に神経質になるのは当然だ。当時、無登録農薬の使用が明らかになったため、消費者にそっぽを向かれてしまった青森のりんご市場は大打撃を受け、その被害額は想像を超えて深刻なものとなってしまった。県内の自治体は、地域内のすべての農場を回ってサンプリング調査をし、安全宣言を次々と出していった。

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