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碓井 稔(うすい みのる)
1955年、長野県生まれ。79年、東京大学工学部卒業後、信州精器(現セイコーエプソン)入社。インクジェットプリンタ開発設計部長などを経て、2002年に取締役に就任。現在、研究開発本部長と生産技術開発本部長を兼務する
(撮影:菊池 くらげ)

 セイコーエプソンが開発したインクジェットプリンターの新技術が話題を呼んでいる。インクのヘッドの密度を上げることで、印刷速度が二倍に向上し、本体の小型化も図れるという。新技術を搭載した製品が発売されるのはいつか。

■御社がこの三月に発表したインクジェットプリンターの新技術が、注目を集めています。印刷速度が二倍になり、本体も一気に小型化すると聞いていますが、そんなことが本当に実現するんでしょうか。

 ええ。印刷速度が倍になるのは間違いないし、本体の小型化に寄与するのも確かです。当社のインクジェットプリンターの開発史上、最大の進化であると言っていいと思います。

■何がそれを可能にしたのですか。

 簡単に言うと、ヘッドのインクを吐出する吹き出し口(ノズル)の密度を二倍にできたのです。ヘッドの密度が倍になれば、当然インクが出る量も倍になるから、印刷速度が上がる。逆に、インクの吐出量をこれまで通りに抑えるなら、プリンターのヘッドの大きさは半分で済む。つまり、ヘッドを小さくできるわけです。

■どうやって、ノズルの密度を二倍に引き上げたのですか。

 少し話が難しくなりますが、順を追って説明しましょう。

 インクジェットプリンターの印刷には、「ピエゾ方式」と「バブルジェット方式」の二つの方法があります(図1)。ピエゾ方式は、機械的な力でインクを押し出す方式です。セラミック(ピエゾ素子)に電圧を加えて変形させ、その変形による力で、隣接するインク室のインクを吐出させます。一方のバブルジェット方式は、熱エネルギーによってインクを飛ばします。ヒーターでインクを沸騰させ、そのときに発生する気泡の力でインクを押し出す方式です。

図1 エプソンが採用しているピエゾ方式は、ピエゾ素子に電圧を加えて変形させ、その力でインク室のインクを飛ばす。キヤノンが採用するバブルジェット方式は、ヒーターでインクを沸騰させ、そこで発生する気泡の圧力でインクを吐出させる

 当社が採用しているのはピエゾ方式ですが、そのカギを握るのがピエゾ素子の変形量です。当然のことですが、ピエゾ素子の変形が大きいほど、インクはよく飛びます。従って、素子の変形量を大きくすることがポイントになりますが、実は電圧が一定の場合、ピエゾ素子を薄くすればするほど、素子が大きく変形することが理論上わかっています。

 つまり、インクを効率よく飛ばすには、ピエゾ素子をどこまで薄くできるか、そこにかかってくるわけです。

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