最近、モレスキンを使い始めました。知らない人のために説明すると、ヘミングウェイやピカソが愛用していた手帳で、硬い表紙のしっかりとした作りが特徴です。以前から気になっていたのですが、シンプルなわりに1890円とそれなりにするので、なかなか踏み切れずにいました。正直、ほかの手帳とそんなに違いが分からなかったのです。中身だけ見れば、100円ノートと違いはほとんどありません。

オイルクロス製の硬い表紙とゴムバンドがモレスキンの特徴

 ところが使ってみて分かったのです。実はこの手帳の利点は、しっかりとした表紙にあったのです。この手帳を手に持っていると、その硬い表紙の感触からあるメッセージが常に伝わってきます。それが、「ここに書かれたことは、ずっとあとまで残る」ということ。

 100円ノートと比較してみるとわかりやすいでしょう。100円ノートであれば、紙のぺらぺらとした表紙なので、メモを書き残していてもどこかで紛失してしまったり、痛んでノートがだめになってしまったりする危険を感じます。エコの時代によくないのですが、どうしても「使い捨て」の意識が頭をよぎるのです。

 ところが、モレスキンの場合、頑丈な表紙にふれていると、この手帳が100年後に発見されて、当時の風俗、流行を知るための貴重な歴史的資料として扱われ、後には博物館に所蔵される・・・・・・なんてことまで妄想してしまう自分に気づくのです。この効果は絶大です。

 ひとつは、字を丁寧に書こうとする、ということ。もともと僕自身、字は下手なうえに乱暴で、あとから読むことすら難しいのですが、モレスキンを使い始めて、100円ノートではあり得ないほど、丁寧にメモを書いていることに気が付いたのです。「1890円もする手帳を粗末に扱ってはいけない」という貧乏性も、こういうときには大活躍です。

モレスキンへのメモはRHODIAへのメモに比べ3倍キレイ(当社比)

 次に、メモしたことを見返すことが多くなったということがあげられます。字を丁寧に書くことも要因なのですが、後から見て見返そうと思うようなメモになっている。これがアイデア誘発にとても効果的なのです。

 最近、「歌舞伎美人」で取材に行くことが多いのですが、そこでは僕にはもったいないくらいの名言の数々が飛び出します。この3カ月でも、茂木健一郎さん、書家の紫舟さん、市川亀治郎さん、片岡愛之助さん、市川右近さん、中村芝雀さん、箭内道彦さん、オセロの中島知子さん、いとうせいこうさんなど、豪華メンバー。

 この取材の中でのメモはこれまで、RHODIAを使っていました。簡単にちぎることのできるメモ帳です。これはこれでよかったのですが、問題は、メモした紙をなくしやすいということ。そこで、RHODIAのメモをモレスキンの手帳に転記するようにしたら、これが効果てきめん。すばらしいインタビュー内容がまざまざとよみがえってきて、インタビューしていたときには気づかなかったことや発見があったのです。

 情報というのは、ストックとフローのふたつの状態を行き来しています。ストックされたままでは忘れ去られてしまいますし、かといって次から次へとフローしつづけると、こちらも記憶に残りません。情報は、ストックとフローのあいだを行ったり来たりさせることで、生き生きと取り扱うことができるのです。

 この点から考えると、モレスキンに記載するというのは実は、情報がしっかりとストックされながらも、見返していつでもフローの状態にもどすことのできる、効果的な情報管理の方法のひとつなのだといえるのです。