ひらがな・カタカナは等幅?

 先ほどから何度か登場してもらった「MS P明朝」および「MS Pゴシック」は、「英字がプロポーショナルでデザインされている」だけでなく、「ひらがな・カタカナもプロポーショナルでデザインされている」という特徴を有している。

 漢字はだいたいどの文字も四角形に収まる形をしているのに対して、ひらがな・カタカナは「う」や「リ」のように縦長の字もあれば、「へ」や「ニ」のように横長の字*5もある。そこで、先ほどの英字の場合と同様に、ひらがなとカタカナについても見た目のバランスが文字ごとに最適となるようにデザインされているのだ。

 しかし、この「ひらがな・カタカナもプロポーショナルでデザインされている」という特長は、「MS P明朝」と「MS Pゴシック」以外のすべての日本語プロポーショナルフォントにも共通に見られるワケではないところが厄介な点だ。

 ここでは、「MS P~」フォント以外の例として、Officeをインストールすると同時にインストールされることのある「HG~」フォントを挙げてみた(図5)。例えば、「HG創英角ゴシックUB」というフォントをインストールすると、Wordなどの「フォント」リストボックスには「HG創英角ゴシックUB」*6のほかに、「HGP創英角ゴシックUB」と「HGS創英角ゴシックUB」という選択肢が現れる。この内、「HG」フォントは「MS ゴシック」同様の等幅フォントだが、「HGP」は「MS Pゴシック」同様に英字・ひらがな・カタカナがプロポーショナルでデザインされているのに対して、「HGS」は英字だけがプロポーショナルで、ひらがな・カタカナは等幅でデザインされているという違いがある。「りりしくて」のようにかなが連続した場合、これをプロポーショナルに設定すると字間が詰まりすぎてしまうため、英字だけをプロポーショナルにして、ひらがな・カタカナは等幅にしたフォントがもう1つ、用意されたのだ。

図5 「MS P~」フォントや「HGP~」フォントでは英字のほかにひらがなやカタカナもプロポーショナルでデザインされているのに対して、「HGS ~」フォント(最下段)ではひらがな・カタカナは等幅でデザインされている

 ならば、「P」の付くフォントはいつも英字に加えてひらがな・カタカナもプロポーショナルでデザインされているのかという言うと、さにあらず。年賀状ソフトなどに添付していることの多い「DF」フォントでは、「DFG」は英字・ひらがな・カタカナがプロポーショナルでデザインされているのに対して、「DFP」フォントは英字だけがプロポーショナルでデザインされている(下表)。このように、フォント名に「P」が付いているかどうかでは判断できないのだ。

*5 横長の字
横書きするビジネス文書でプロポーショナルフォントの効果が顕著に表れるのは「り」や「ト」といった縦長の字だが、縦書きする文書の場合は「ヘ」や「ニ」といった横長の字の前後が詰めて表示される。横書き・縦書きでどの字を詰めるかは、変わるのだ。

*6 「HG創英角ゴシックUB」
「コントロールパネル」から「フォント」を呼び出すと、「HG創英角ゴシックUB & HGP創英角ゴシックUB & HGS創英角ゴシックUB」というフォント名になっている。このように複数の書体を含むフォントを「TTC(TrueType Collection)」形式と呼ぶ。

ゴシック体を活用する

 次に、Windowsに標準添付している「MS 明朝」と「MS ゴシック」の2種類の日本語フォントのデザイン差に注目してみよう。

 明朝とゴシックのようなデザインの違いを「書体」と呼ぶ。明朝体は新聞や雑誌、書籍の本文などでもっともよく見かける書体だし、ゴシック体の方も雑誌の見出しやポスターなどでよく見かける書体だ。例えば、本誌なども「本文は明朝体で、見出しはゴシック体で」となっている。

 では、雑誌や書籍のデザインとは無縁の一般ユーザーはこの2種類の書体をどう使い分ければよいだろうか?市販の雑誌や書籍と同じように見出しだけゴシック体を使うほかに、本文中で強調したい文字列だけゴシック体に設定するという使い方が効果的だ。というのも、日本語の文字に「太字」のスタイルを設定しても、ほんのわずかズラして印刷するだけ*7なので、実際にプリンターで印刷してみると、期待したほどの強調効果が出ない。それに対して、明朝体の本文中で強調したい個所だけゴシック体に変えると、際立った強調効果を得られるのだ(図6)。

図6 「文字列を強調するには太字スタイルを設定」というのが公式だが、実際には日本語の文字列に「太字」を設定しても、英語ほどの強調効果がない。強調したい文字列だけゴシック体を設定する方が効果的だ

 もう1つ、ゴシック体が効果を発揮するケースがある。印刷した原稿をファクシミリで送る場合*8だ。とくに家庭用ファクシミリで送・受信すると、元原稿はきれいだったのに、ファクシミリで出力したものは字がかすれてしまい、読みづらくなることがよくある。

 こんな場合、あらかじめ文書全体をゴシック体に設定しておくと、仮にかすれてしまっても、明朝体よりはるかに読みやすいハズだ(図7)。一般家庭向けにファクシミリを用いてDMを流す場合、この読みやすさの違いは大きい。「ファクシミリで送る文書はゴシック体で作成する」と心がけておくとよいだろう。

図7 案内文書をファクシミリで送ると、明朝体の文字(上)はかすれて、読みづらくなってしまうことがある。ファクシミリで送る文書はすべてゴシック体(下)にしておく方が無難だ
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 今回は、等幅フォントとプロポーショナルフォントとの違い、ゴシック体ならではの活用方法を解説した。次回はオフィスソフトや年賀状ソフトなどに添付しているさまざまな書体の話を取り上げたい。

*7 ズラして印刷するだけ
「太字」スタイルを設定した字がズラして印刷されるのは、日本語の文字に限っての話だ。英数字の場合はフォント自体に「標準」用の字形とは別に「太字」用にデザインされた字形も同時に収録されているため、ハッキリと強調効果があらわれる。

*8 ファクシミリで送る場合
原稿をファクシミリで送る場合、「ファイン」モードや「スーパーファイン」モードを選択すると、ある程度、原稿のかすれを防げる。しかし、「ノーマル」モードと比べると、通信時間・通信費用が余計にかかるし、機種によっては対応していない場合もある。
出典:日経パソコン 2006年5月22日号
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