私たちがパソコンを使って文書を作成したりWebページを閲覧したりする時、実際に目にしているのはフォントだ。知れば知るほど不可思議なフォントの世界を探検していこう。

 パソコンを構成するアイテムの中には、誰もが日常的に使っていて、何となく分かった気になっているが、本当のところ、その正体をよく分かっていないというものがある。「フォント」はその最たるものの1つだ。
 フォントに対する大方の理解は「文字の形を記録してあるファイル」といった程度だろう。しかし、一口でフォントと言っても、字の形を表現する方法、デザイン(書体)の違い、カバーしている言語の範囲、文書内にフォントを埋め込む方法、ユーザーが自分で字形を作成する外字……等々、実に数多くのテーマを抱えている。そこで、この連載ではフォントをめぐるさまざまな話題を一つひとつ検証していこう。

そもそもフォントって何!?

 まず、最初に「フォント」は何のためにあるのか、その基本的な働きから確認しておこう。
 Wordを使って文書を作成したり、
Internet ExplorerでWebを閲覧したりする際、その文書やWebページの内容が画面上に表示されるが、これはいったいどういう仕組みになっているのだろうか。ここで主役となって働いてくれているのが「文字コード」*1と「フォント」だ。

 私たち人間は文字の形を見て、それが何という文字なのかを認識するが、パソコンなどの情報通信機器ではそんなワケにいかない。そこで、文字一つひとつにユニークな番号を振って、その番号を文字とみなす仕組みとなっている。41であれば英字の「A」、65E5であれば漢字の「日」…といった具合だ。この仕組みを文字コードという。

 コンピューターの内部では文字情報をすべてこの文字コードで処理・記録するが、その文字情報を画面上に表示したり、プリンターで印刷したりする場合には番号のままでは困る。「41がAをあらわす」とすぐにわかるのはプログラマーだけで、私たち一般ユーザーには分からないからだ。

 そこで、文字の字形情報を文字コードとの対応表付きで収めた「フォント」の出番となる。たとえば、文字コード65E5に相当する文字を画面上に表示する必要が生じたら、フォントの文字コード65E5に相当する*2位置の字形情報を読み取って、その字形「日」を画面上に表示するのだ(図1)。

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拡大しても字形がきれい

 さて、Windowsに添付しているフォントはそのほとんどが「アウトライン」形式のフォント*3だ。アウトライン(outline)を英和辞書で引くと、「概略」のほかに、「輪郭」という意味が載っている。フォントの場合は後者の意味で、複雑な方程式を組み合わせて文字の輪郭を表現する仕組みとなっている。

 アウトラインフォントに対するのは「ドットフォント」または「ビットマップフォント」。こちらはその名の通り、文字の形をドット(点)で表現する。Windows登場以前のパソコンでは、日本語のひらがなや漢字をあらわすのに画面上では縦横16ドットの、プリンタで印刷する際には縦横22~24ドットのドットフォントが用いられていたのをご記憶の向きもあるだろう。

 ドットフォントでは字形情報をフォントファイルから読み取って、その配置をそのまま画面上に表示すればよい。そのため、貧弱なCPUパワーしかない環境でも高速に表示できるという長所がある反面、拡大しても一つひとつのドット(点)が大きくなるだけなので、ギザギザが目立ってしまうところが短所だ(図2)。一方、アウトラインフォントでは方程式を元に文字の輪郭線を計算して表示する必要があるため、CPUの負荷が大きいという短所がある反面、拡大してもその輪郭はきれいなままで、ギザギザになることはないという長所がある(図3)。片方の長所がもう片方の短所となり、片方の短所がもう片方の長所となる関係にあるのだ(左表)。

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 昔のワープロ専用機やMS-DOS時代のワープロソフトではふつうの文字サイズのほかに、それを横方向に伸ばした横倍角、縦方向に伸ばした縦倍角、縦横に伸ばした4倍角といった文字サイズが用意されていた。それに対して、WordなどのWindows用のワープロソフトでは横倍角や縦倍角といった文字サイズはなく*4、20ポイント・36ポイント…といった任意の数値で指定できるようになっている。これもWindowsで誰もがアウトラインフォントを使える恩恵なのだ。

文字を自在に拡大縮小する(後)」に続く