前々回、「ごっそり」に気をつけて、効率良く情報を盗み出す行為を心理的に妨害・抑止してみよう、という話をしました。これは他にも応用できる考え方だと思っています。
 例えば、オークション詐欺の罠を見分けるときなどにも使えます。
 ネットオークションでは、自分がモノの買い手であるにしろ、売り手であるにしろ、取引する相手が怪しいかどうか、自分で見極めなければなりません。しかし、前回も話題にしましたが、ネットを経由したコミュニケーションでは相手の表情や態度など、詐欺師かどうか見極めるのには重要な要素を目にすることができません。あくまでネット上に残されている情報だけを頼りに、分析・判断しなければならないわけです。

 これはそもそも詐欺師にとっては好都合です。「不随意ににじみ出る雰囲気」のように自分ではなかなかコントロールできない要素に足を引っ張られる心配はありませんしね。詐欺師はそもそも情報操作に長けているものですし、言ってみればその能力で存分に「勝負」できるわけです。それに対抗するには並大抵ではありません。

 しかし、詐欺師、というより犯罪者はそもそもなぜ犯罪に走るのかといえば、「手っ取り早く楽をして大金を儲けたい」からだったりします。言い換えれば彼らは「性急」なんですね。性急であるため、希少品を大量に出品してみたり、それ以前にそもそもあまり活動的ではないアカウントが、突然活発に多くの出品を始めたりして、短期間に「ごっそり」儲けてドロン、ということを企てるのです。
 彼らにとっては「ドロン」も重要です。ネット上とはいえ、長く同じアカウントで活動し続けるといろいろな痕跡が残ってしまい、それだけ危険になるということを知っているからです。したがって、彼らの要件としては、どうしても短期に大量に、ということになってしまうのです。

 前々回の「ごっそり」もそうですが、ここでの「ごっそり」は、実は「数量の変化」と言い換えることもできます。普段は平均すると5件のアクセスしかないのに、ある日、ある時間だけ100件のアクセスがあったとしたら、「何かある」と気づくことができますが、これも“数”に注目していばこそ、気づけるわけです。
 初めて取引する相手であっても、これまで1年で2~3回、それも落札している側だったのに、ある日突然多数の商品を出しているとなると「怪しい」と気づくきっかけになります。“数”が突然、急激に変化する、ということをチェックポイントにできるわけですね。

 ところが「数が変化している」ということが、見えないケースもあります。例えば、次点詐欺などはそうでしょう。これは、落札できなかった人に向けて「落札した人が辞退したので、あなた買いませんか?」と出品者を装って持ちかけてくる詐欺です。数量としては1以外の何物でもありませんし、仮に詐欺師がいろんな人に向けてメールを出しまくっていたとしても、受け取る側には見えません。「ごっそり」や「数の急激な変化」は有効な尺度の一つではありますが、万能ではないのです。

(注)
ヤフーオークションの場合ならば、自分が「落札者候補」になっているかどうか、オークションサイト内で調べることができます。「落札者候補」とは耳慣れない用語ですが、落札者が辞退したときに繰り上がって落札する権利を得た人、という意味です。言ってみれば真の「次点」ということですね。「次点詐欺」の場合は、正式に「落札者候補」になっていないのにもかかわらず、「あなたは次点ですが、買いますか」と言ってくるわけです。
ちなみに、「次点詐欺」に引っかかると、オークションの仕組みの外で直接取引してしまったことになり、オークションサイトの補償対象からは外れてしまいます。
(注終わり)

 オークションを安全に利用するには、他にも実にいろいろな対策が必要です。「ごっそり」や「数の急激な変化」と同じくらい簡単で普遍的な対策というのはなかなかありませんが、強いて言えば取引相手のことは徹底的に調査することが挙げられるでしょうか。相手が公開している数少ない情報を元に、これでもかと調べまくるのです。会話して雰囲気で怪しいと察することができないネット上のコミュニケーションにおいては、まさにネットを使って調査分析することの重要度が増してくるわけです。

 幸いにしてオークションの場合、詐欺師であろうと自分のプロファイル情報を登録しなければなりません。もちろん、情報がニセであることも多いし、あるいは本物であっても電話番号ならすぐ解約してしまうとか、そういう手を使って逃げ道を用意していることでしょう。しかし、偽物の情報であっても検索キーワードにはなります。

 電話番号などを検索しても、自分で公開しているのでもなければ、検索には何もヒットしないのが普通です。しかし、詐欺師が使う番号は、同様の被害に遭った人がどこかに“悪いヤツの関連情報”として書き込んでいることがあります。お金を振り込む口座の情報も、詐欺に使われているモノであれば検索に引っかかることがありますし、オークションサイトが情報公開している「要注意口座」のリストに載っているかもしれません。

 流行の手口を知り、その対策をTIPSのように積み上げることも、もちろん重要です。オークション詐欺の具体的な手口、注意するポイントについては、それこそ「オークション詐欺」というキーワードで検索をかければ、過去の手口情報から現在進行形の情報、それに対策入門までさまざまなネタを仕入れることができます。少なくともその検索上位に来るような情報は読んだ方が良いでしょうし、Yahoo!オークション安全対策研究所では、わかりやすく絵解きされた幅広いハウツーをまとめて読むことができます。

 しかし、残念なことに、どれほどわかりやすく書かれたコンテンツであっても、オークション詐欺に関しては気をつけるべきポイントがどうしても多くなってしまいます。それだけ複雑な仕組みであるということなのですが、個別の対策を覚え込むことと同時に、迷ったとき気になったときに戻るべき原則を意識することも大事ではないでしょうか。最後に整理しておきましょう。

・取引相手の過去、現在に、何らかの数量の急な変化があるか?
・取引相手が公開している情報を検索してみて、危険性が読み取れるか?

安全にネットオークションを楽しみたいならば、この2点だけでも、それこそ暗記、暗唱して、調査分析を実践するように心がけてみてください。