「サクラ」「ひまわり」「なでしこ」と日本語でプログラミングできる環境を生み出してきた酒徳氏。実は元々音楽家を目指していたとのこと。酒徳氏とプログラミングの世界との接点についての話を伺います。(編集部)

兼宗:「ド・レ・ミ」とカタカナで書くと音が鳴る「テキスト音楽『サクラ』」という人気のフリーソフトも、酒徳さんの作品ですよね。

酒徳:はい。ひまわりよりも前の、大学時代に作ったものです。もうメンテナンスもほとんどしていないのに、今でもたくさんの人が使ってくれていて、ありがたく思っています。サクラの前にもMML(Music Macro Language、コンピューター上で楽譜を表現する簡易言語)用のソフトは数本作っていたんですが、サクラはカタカナで書けるようにしたことで、いろいろな層のユーザーが入ってきてくれました。「プログラミングが母国語でできると身近に感じられるんだな」というのは、このときに気づいたんです。

兼宗:すると、酒徳さんの出発点はMMLですか。

酒徳:そうですね。もともとはプログラマーになりたいという気持ちは全然なくて、音楽家を目指していたんです。しかし、以前はどのパソコンでも使えたMMLが、Windowsになってから使えなくなりましたよね。それで、自分が使うためにプログラミングを覚えてMMLのソフトを作ったのが始まりです。その結果、音楽家ではなく、プログラマーになりました(笑)。

兼宗:いいじゃないですか(笑)。私の知り合いに、サクラで1日1曲作る、というチャレンジをブログで続けている人がいますよ。

酒徳:それはすごい!やっぱり、パソコンという身近なものを使って音を出すのは楽しいですよね。

兼宗:パソコンはこんなに小さな機械なのに、本当にいろいろな音が鳴るし、作れます。

酒徳:プログラミングができると、その楽しさがさらに増しますね。自作楽器をVST(デスクトップミュージックの標準的なプラグイン規格)で作るとか。

兼宗:VSTは簡単に作れるものでしょうか。

酒徳:多少C言語ができれば、開発ツールキットで簡単にできます。それから、Windowsにはソフトシンセサイザー(シンセサイザーをパソコン上で再現したもの)がはじめから入っているので、MIDI(演奏データの標準規格)を使えばもっと手軽にいろいろな楽器ができますよ。MIDIの関数はすでに多くの人の手でよくまとめられているので、それをネットで拾ってきて組み合わせればいいんです。僕も以前、インド音楽のような半音階の世界を表現できるようなものを作ってみたことがあります。

兼宗:半音階というのは普通の音階よりも細かい、要するに微分音が出せるということですか。

酒徳:ええ、いわば微分音シンセですね。それをライブで使ったら、気持ち悪くて聴いていられないという人が続出してしまって(笑)。

兼宗:それはそうでしょうね(笑)。でも、そう感じるのは生まれついてのものではなくて学習ですよね。絶対音感を持っているという人も、西洋音楽に浸っていなければ、微分音シンセサイザーにも対応できるような気がします。

酒徳:そうかもしれませんね。視覚にくらべて、聴覚は発達しづらいそうです。絵は前衛的なものを見ても比較的理解しやすいものですが、実験的な音楽はノイズにしか聴こえない場合がありますよね。

兼宗:ドリトルにも音楽の機能は盛り込んでいて、パソコンで音楽を扱う楽しさをうまく伝えたいと考えているんです。仕事ではなく趣味として、楽しいところから始めれば、もっとすんなりとプログラミングの世界に入っていけるはずです。

酒徳:確かに、どのようなことでも新しいチャレンジを強制されるのではなくて、趣味のように自分の関心がある分野から入ることができれば理想的だと思います。

(構成:曽根武仁=百年堂)

ゲスト:酒徳峰章(クジラ飛行机)氏1976年生まれ。中学生の頃、MSXというパソコンに出会い人生が一転。ゲームや音楽のプログラミングに没頭。現在は、ソフト企画「くじらはんど」にて、オンラインソフトを多数発表している。代表作は、ドレミで作曲できる音楽ソフト『テキスト音楽「サクラ」』や『日本語プログラミング言語「なでしこ」』など。
オンラインソフトウェア大賞2001に入賞。2004年度IPA未踏ユースでスーパークリエイターに認定される。
著書に『日本語プログラミング言語「なでしこ」ガイドブック』や『ゲームプログラミングで学習するActionScript(Flash8/MX2004)』など。ウノウ(株)にプログラマーとして参画。日本中に、プログラミングの楽しさを伝えるため日々奮闘中。(ホームページはhttp://kujirahand.com/)