著作権団体17法人で組織する「著作権問題を考える創作者団体協議会」は2007年8月31日、音楽や映画、文学作品など各種著作物の権利者情報を検索するための情報システムを2009年1月に運用開始する方針を表明した。17法人それぞれが整備する権利者データベースと、それらに単一の画面から検索可能にするポータルサイトを整備する。

 今回の権利者データベースとポータルサイトの狙いは、一般消費者が著作物を二次利用しようとする際、権利処理にかかる時間や手間を軽減することである。著作物を二次利用するには、原則としてその著作物の著作権や著作隣接権を持つ権利者の事前許諾が必要である。しかし、(1)作者の死去に伴い遺族が権利を継承している(2)作者や発行元の連絡先が不明になっている(3)1つの著作物に多数の権利者が関与し関係者全員の連絡先を把握しきれない、などの理由で許諾を得られず、二次利用を断念せざるを得ないケースも多い。ポータルサイトの新設により権利者の連絡先を探しやすくすることで、こうした問題の解決を図る。

 まず、17法人それぞれが各分野の権利者データベースを新設または強化する。データベースは「著作者・権利者情報」と「作品情報」から成り、前者は氏名、生年月日、死亡年月日、住所、電話番号の5項目、後者は作品名、副題、著作者名、発行年月日の4項目をリストアップする。併せて、保護期間が終了するなどしてパブリックドメインとなった権利者かどうかや、二次利用の許諾の要否やその条件などの情報も盛り込む。

 ポータルサイトは17法人が共同運営し、費用も17法人が持ち合う。権利者データベースの検索画面を用意し、作品名や作者、分野などが検索キーとして入力されると、各法人の検索データベースへクエリーを渡し、結果を受け取って表示する。また、所在不明の権利者を探すための掲示板も用意する予定。

 2007年末までに情報システムの詳細を検討し、併せて日本経済団体連合会(日本経団連)の「コンテンツ・ポータルサイト運営協議会」、文化庁、著作権情報センター(CRIC)などの関連機関と協議を進める。2008年1~12月にシステムの開発とデータベースへのデータ入力を実施し、2009年1月に運用を始める計画だ。

課題はデータの網羅性と費用

 報道関係者向けの説明会に登壇した、著作権問題を考える著作者団体協議会 議長の三田誠広氏は「権利者を探すために利用者が相当の努力をする代わりに、我々が相当の努力をしてデータベースを作る。このデータベースと(著作者の意思表示システムである)クリエイティブコモンズ、裁定制度を併用することで、二次利用の申請手続きの利便性をかなり高められると考えている」とした。

 権利者データベースの構築というアイデアは、元々は著作物の保護期間延長を巡る議論の中で出てきたものである。同協議会は、現行制度で死後50年となっている著作物の保護期間を死後70年に延長するよう主張している。これに関連して、「保護期間が長くなることで、権利者探しが困難な過去の著作物でも許諾申請が義務付けられ、作品の流通が妨げられる」との反対の声がある。これに応えるものとして、同協議会らが提唱したのが今回の権利者データベースである。

 説明会の質疑応答では、「権利者データベースは保護期間の延長とセットなのか」との疑問の声が挙がったが、これについては「保護期間の延長問題にかかわらず、今回の権利者データベース作りは進めていく」(日本音楽著作権協会 常務理事の加藤衛氏)とした。

 ただし、権利者データベースが実効性あるものになるかどうかは不透明だ。データの網羅性とポータルの構築・運営費用の具体的なめどが立っていないためである。

 17法人のうち、2007年3月時点で権利者データベースの原型になるものを運営しているのは14法人。ただし、「著作者・権利者情報」では、保護期間の算定に必須となる死亡年月日を記録しているのは5法人のみで、残りは追加調査の上で入力が必要になる。「作品情報」については、作品名のみを記録しているものを含め6法人しかデータベースを持っていない。さらに、権利者団体の会員にならず活動している権利者も多数いるため、膨大な数の権利者や作品情報を、運用開始までの1年強でどこまでデータベースに追加できるかが焦点となる。

 同協議会も「(データベース構築で)一番大変なのは入力作業」(加藤氏)と認める。「日本文藝家協会については、国立国会図書館の蔵書データベースや日本経団連の書評データベースからデータを譲ってもらう方向で交渉中」(三田氏)といった取り組みもあるものの、大半は手入力になる見込みだ。「『権利者データベースに掲載する方が二次利用の手続きが進み、結果として従来より著作権を守れることになる』と権利者に説明することで、権利者データベースへの登録を促していきたい」(三田氏)というように、網羅性を高めるためにはドブ板の作業も強いられそうだ。「漫画家の場合、現在は徹底して著作権を自己管理している。今後は組織として管理する方向で早急に協議する」(日本漫画家協会 常務理事の松本零士氏)というように、著作権の集中管理をしていない権利者団体では、データ集めだけでなく権利者同士での合意形成も今後の課題となってくる。

 共同運営するポータルの構築にかける費用は「当初は200万~300万円」(加藤氏)と少なく、最小限の検索機能のみを実装するものとなりそうだ。これを17法人で分担するが、具体的な分担方法は「規模の小さい団体にも負担にならないよう、分担方法を考える必要がある」(加藤氏)として決まっていない。また、「初めは小さな予算で立ち上げられる程度の、小さなポータルサイトかもしれないが、どんどんグレードアップしていけばかなりの額になるだろう」(加藤氏)とも述べ、将来的には運営費用をどう調達するかが課題になるとの見方を示した。