松下電池工業は2006年12月19日、ノートパソコン向けリチウムイオン2次電池の発火事故防止に向けた取り組みを明らかにした。同社では、電池内部の正極と負極を分離するセパレーターの耐熱性を向上させる技術を開発し、容量の大きいリチウムイオン2次電池の一部で既に導入を始めている。安全性の確保に併せて、正極材料の見直しにより従来より容量を増やしたリチウムイオン2次電池を開発し、ノートパソコン向け2次電池市場におけるシェア拡大を狙う。

 同日、報道関係者向け説明会に登壇した松下電池工業 取締役社長の石田徹氏は、「現時点で具体的な話があるわけではないが、ソニーや三洋電機など他社から話があればライセンス供与についても考えていきたい」との意向を示した(発表資料)。

不純物混入で電池が発火するメカニズムは…

 一般にリチウムイオン2次電池は、正極材料にコバルト化合物、負極材料に炭素をそれぞれ使用し、正極と負極の間にセパレーター(分離層)を配置する。分離層はポリエチレンやポリプロピレンなどの合成樹脂(ポリオレフィン)を使用している。分離層は、コバルト化合物や炭素を遮断しつつイオンは通過させる性質を持っており、これにより徐々に化学反応を起こして放電させることで、ノートパソコンなどの機器に電流を供給している。

 従来のリチウムイオン2次電池では、製造過程で微細な金属粉などの不純物が電池内部に混入することが、発火事故を引き起こす原因の1つになっていた。分離層は厚さ20μm前後と非常に薄く、金属粉などにより突き破られる場合がある。すると、突き破られた分離層の周辺で正極材料と負極材料の化合が急激に進み、その化学反応の過程で100℃を超える高温が発生する。これにより分離層の合成樹脂が溶解してしまい、急激な化学反応が電池全体に広がり発火に至るという仕組みである。

1000℃耐熱の層により、分離層の溶解拡大を阻止

 これを防ぐために同社では、分離層の負極側に「耐熱層(HRL:high resistance layer)」と呼ぶ層を追加した。耐熱層は酸化アルミニウム(アルミナ)を分離層の表面に厚さ数μmで塗布することで形成する。この耐熱層は溶解温度が1000℃以上と高く、万一不純物の混入により分離層が突き破られた場合、その近隣部でわずかに正極材料と負極材料が化合し発熱するが、そこから化学反応の連鎖で分離層の溶解が進むことを食い止められるとしている。

 同社では2006年初頭から順次、容量2400mAh以上と比較的大容量のノートパソコン向け円筒型電池において、耐熱層を形成した品種の出荷を開始している。既に松下電器産業のノートパソコン「レッツノート(Let's note)」ではこの品種の電池を使用したバッテリーパックを採用済みで、今後ほかのパソコンメーカーへの出荷も順次進める意向だ。

安全性確保に併せ、大容量化も推進

 松下電池工業では、耐熱層の形成により電池の安全対策が確保できたとして、電池の大容量化も進める。正極材料を従来のコバルト化合物からニッケル化合物に変更することで、従来と同じ外形寸法で容量を増やした新型リチウムイオン2次電池を2006年4月に開発済み。コバルト系品種では1g当たりの容量が140mAh前後だったのに対し、新型のニッケル系品種では1g当たり180mAh~190mAhとした。

 ノートパソコン向けに広く使われている「18650サイズ」(直径18mm×長さ650mm)の円筒型電池1本当たりの容量は、コバルト系品種の約2600mAh(終止電圧3V)に対し、ニッケル系品種は約2800mAh(同)と高い。また、レッツノートの現行製品では、バッテリーパック内での電池の構成を従来の2本直列×3並列から3本直列×2並列へ変更するなどの設計見直しにより、電池を終止電圧2.5Vとして使用しており、この場合の容量は約2900mAhとなる。

 この新開発の大容量品種は、2006年4月にサンプル出荷を開始。現在は月産500万個の体制で出荷可能な態勢になっているという。