一般の人にとって弁護士はまだまだ縁遠い存在。そんな中、引っ越し費用や保険費用の見積もり比較をするかのような手軽さで、弁護士を選べるWebサイトがあるのをご存知だろうか。数人の現役弁護士が理事を務める、有限責任中間法人オーセンスが運営する「弁護士ドットコム」だ。弁護士から見積もりを受け取って好みの人を選べる、いわば「逆オークション」の仕組みを提供している。

 2005年8月の開設から1年以上が経過し、利用者数は順調に伸びているという。また、同じ弁護士らが経営するオーセンスグループという会社の運営で、2006年3月には「司法書士ドットコム」、2006年8月には「税理士ドットコム」をオープンした。専門職選びにインターネットを利用することで、ユーザーにはどのようなメリットがあるのか。オーセンスグループの社長である、元榮太一郎弁護士に聞いた。

■弁護士費用の見積もり比較サイトを運営しているのはなぜか。

 弁護士サービスは、一般の人にとっては分かりにくい。報酬が明確でないし、どの弁護士がどの分野を得意としているかもはっきりしない。複数の弁護士を並べて比較することもできない。いわばブラックボックスだ。大企業ならともかく、個人にとって弁護士を見つけるのは大変な作業になる。

 弁護士ドットコムのような比較サイトがあれば、ユーザーは気軽に弁護士を探せるようになる。登録弁護士はプロフィルを公開しているので、自分の近くに、依頼したい分野を得意としている弁護士がいるかどうかを簡単に探せる。また、依頼したい事項をフォームに記入して送信すれば、それを見た弁護士から見積もりを受け取ることも可能だ。複数の弁護士から見積もりを取って、比較検討することができる。これらのサービスは無償で提供している。また、1件あたり3150円と有償になるが、インターネットによる法律相談も受け付けている。

 なお、弁護士の斡旋を有償で行うことは、法律で規制されている。このため、我々は基本的に斡旋サービスの提供による収入は得ていない。

■こうしたサイトの存在は、弁護士にとってもメリットがあるのか。

 弁護士も、これまでのように安穏としてはいられない時代になった。弁護士の数が増えて大競争時代に突入し、これからはあぶれてしまう弁護士も出てくるだろう。弁護士自らが顧客獲得に乗り出さねばならない。

 顧客獲得の機会を得る場として、見積もり比較サイトの存在は大きな意義がある。特に独立したばかりで、顧客を獲得するつてが乏しい弁護士などには非常に有用だ。独立して事務所を構えるような弁護士には意欲のある人が多いので、ユーザーにとっても優れた弁護士に出会いやすいだろう。

 とはいえ、サービス開始直後は、旧来型の弁護士からの風当たりが強かったのは事実。インターネットでは依頼人の顔が見えないなどの問題点が指摘され、賛否両論あった。だが今では、評価されるようになってきた。我々はこのサービスで、弁護士ビジネスを5年ほど前進させることができたのではないかと考えている。

■弁護士ドットコム開設から1年。現在のサービスの規模は。

 現在、登録弁護士が200人を超えている。もう少しで弁護士数が日本一の法律事務所を抜くところまで成長した。これまでの見積もり依頼件数も800件を超えた。

 法律相談の数も増えている。例えば東京都では8個所の法律相談センターがあり、年間9500件ほどの相談が寄せられるが、その1個所に相当する程度の規模にはなるだろう。

 ユーザーからは、弁護士が身近になったとの声が寄せられている。中でも、弁護士に対するクチコミ評価の機能が便利に使われているようだ。ここで高い評価を得ている弁護士には、依頼をしやすい。

■弁護士に続いて開設した、司法書士や税理士の比較サービスの現状は。

 顧客開拓ニーズが高いのは税理士だ。まだサービスをスタートして間もないが、170人ほどの税理士が登録している。2006年内には、500人を突破するのではないだろうか。

 それに比べると、司法書士は伸び悩んでいる。司法書士は職種の性質上、インターネットで顧客を開拓しようという意志があまり強くない人が多い。だが司法書士にも、数年前から訴額140万円以内の事件ならば弁護士と同じように代理人を務めることが認められるようになっている。今はまだ過渡期だが、これから伸びていくと考えている。

 ビジネスとしては、広告収入などを軸に拡大させていきたい。また専門職として登録している人の自己紹介機能を充実させることによって収益を上げることも考えている。例えば、動画による自己紹介機能を有償で用意するなどの方法があるだろう。

■変更履歴
「弁護士ドットコム」の運営団体の名称に誤りがありました。「オーセンスグループという会社が運営する」と記述しておりましたが、正しくは「有限責任中間法人オーセンスが運営する」です。また、5段落目で「弁護士ドットコムのサービス提供による利益は得ていない」と記述しておりましたが、これは「斡旋サービスの提供による収入は得ていない」と表現を改めました。いずれも本文は修正済みです。お詫びして訂正します。[2006/09/28 22:50]