「既存のノートパソコンやデスクトップパソコンという範ちゅうの製品だけで事業を展開していれば、製品単価の下落による市場の縮小は十分に起こりうるだろう。しかし、民生用電子機器とパソコンの垣根はどんどん低くなっている。あとは家庭向けのパソコンとは何なのかという定義づけだけの問題だ。ソニーの『VAIO(バイオ)』が目指す事業領域は今後も拡大させていく——」。ソニーのパソコン事業を統括する、VAIO事業部門 部門長の石田佳久氏は、縮小する国内パソコン市場での生き残りに向けた展望について触れ、こう語気を強めた。

 日本国内のパソコン市場は、2000年度に金額ベースでのピークを迎え、2兆581億円もの出荷額を記録した。しかしパソコンの普及とともに単価下落が進み、販売台数が増えたにもかかわらず、2005年度は1兆6075億円まで市場が縮小している(関連記事)。

 石田氏は、パソコンに対する市場のニーズが二極分化しつつあると分析する。すなわち、「基本的な機能さえ使えれば良いというユーザーと、高付加価値の製品を追求するユーザーに分かれる」との見通しである。その上でVAIOは、高付加価値品に注力することで生き残りを図ろうとの意向だ。「安ければ良い、使えれば良いというだけの商品に対し、ユーザーは愛着を持てるだろうか。VAIOとしては商品の販売やサポート、サービスを通じて、ユーザーにVAIOを所有する喜び、使う喜びを感じてほしい」(石田氏)。今回発表した3機種(関連記事)は、高付加価値品へ注力するという同社の意気込みを具体化した製品といえる。

 石田氏がそれだけ高付加価値品の追求をアピールするのは、市場全体と同様にVAIOも単価下落の波から逃れられていないという厳しい現実の裏返しとも言える。2005年度のVAIOの販売台数は対前年度比40万台増の370万台。とはいえ内訳を見ると、売り上げを伸ばしているのは海外事業で、国内は横ばいの100万台にとどまる。その中でも最も販売台数が多いのは「VAIO type F」をはじめとする、普及価格帯のノートパソコンである。テレビパソコンという高付加価値品で市場が沸き立っていたはずのデスクトップパソコンは、前年度を20万台下回る70万台にとどまった。

 同社は2006年度に、420万台(国内110万台、海外310万台)のVAIOを販売する計画を発表している。2005年度を50万台上回る強気の計画だが、この実現可能性について石田氏は慎重に言葉を選んだ。「420万台を達成できるかどうかは終わってみないと分からない。ただ、きちんとした想定の下に算出した数字である」とだけ述べた。2006年4月に売り始めたパソコン夏商戦向けモデルの販売状況についても、石田氏は明確な回答を示さなかった。

 今回発表した新製品を契機に同社のパソコン事業が競合各社と違いを打ち出せるのか、それとも単なる打ち上げ花火に終わってしまうのか、今後の動向に目が離せない。