ソニーは2007年9月10日、新しい音楽プレーヤー「SEP-10BT」(通称、Rolly)を発表した。ソニーの人工知能ロボット「AIBO」の開発チームが加わって開発した新発想のRolly。どういった経緯で開発が進み、製品化に至ったのか、担当者に話を聞いた。

■Rollyの開発が決まった経緯は?

 3年ほど前にAIBOの開発メンバーで、既存のロボット以外でAIBOの技術を生かした製品を開発できないかという話になりました。そのころはAIBOの開発・生産は行っており、AIBOの代替という意識でそのような話になったわけではありません。

 そういった話の中で、オーディオをベースにロボットを活用できないかという案が出てきたのです。その後、今から1年半ほど前にAIBOの開発チームにいた数名が異動し、オーディオ開発・設計チームと一緒になって「音楽+ロボット」の実現性を探ることとなりました。好きな場所でクリアな音楽をみんなで楽しみたいというコンセプトを定め、ポータブルで、それも手のひらサイズのオーディオプレーヤーにしようと決まったのが1年前。そこから開発が始まりました。

 Rollyはあくまでオーディオプレーヤー。AIBOの技術を生かすのはもちろんですが、音にこだわる必要があります。「踊って音を出す」だけの(サングラスをかけた花が音を出しながら踊る)ロッキングフラワーのようになってないけない、というのは当初から開発チームの中にありました。目指したのは「サイズから想像を超える製品」。つまり、「あのサイズからこの音は想像できない」と思わせる製品でした。

■苦労した部分はどこか

 「動き」と「音」のバランスです。Rollyは6つのモーターを備えていますが、このモーターを4つにして、そのスペース分をスピーカーの容積を大きくすることに充てれば音は良くなります。一方で、動きとしての面白みやバラエティー感は欠けてしまう。両者のバランスを取るのに苦労しました。

 技術者のメンバーとしては、AIBOの開発メンバー、オーディオ開発メンバー、ユーザーインタフェースなどを担当するデザインメンバーと主に3方面の技術屋がいます。それぞれがこだわる部分は必然的に違いますよね。エンタテインメント性にこだわるチーム、音にこだわるチーム、使い勝手や美しさにこだわるチーム、それぞれの思い入れを協調しながら開発しなくてはいけません。「その動きっているの?」とか「それはデザイン的にはちょっと・・・」とか、色々な意見が飛び交います。譲り合いと殴り合いの繰り返しでしたね(笑)。

「動き」は機械に対する感情移入を引き起こす

■AIBOの要素や技術はどの部分で生きているのか

 静音設計とセンシングの部分でしょうか。まず、静音設計ですが、AIBOが動く際にはがちゃがちゃとロボットライクな音はしませんでした。今回もそれは踏襲しています。特に、今回は音楽を聴くことがメインです。音楽を邪魔するような音が出てはいけない。音を出さずに、揺れないで動く、ゆっくり静かに動く、速く急に動くといった動作の実現にもAIBOの技術が生きていますね。

 センシングの部分では、AIBOは持ち上げると足を上下に動かすなどということができました。そういった部分も加速度センサーを搭載することで実現しています。AIBOとRollyは用途は違いますが、機械なのに動くという要素が入ることで、人間がそれに対して感情を移入できるようになっています。

■狙っている層は? AIBOの購入層と重なる部分はあるか

 Rollyはパソコンとつながることが前提です。そのため、まずはパソコンを積極的に触り、ブログなどで情報発信をしているような方に受け入れられると思っています。そこから「そばにあって楽しい」という感覚で女性にも受け入れられ、家族がいれば、その子供達にも楽しんでもらえると考えています。

 テレビなどのマス広告は打つつもりはありません。テレビなどではなく、使った人や興味を持ってくれる人によって少しずつ広まっていくような製品だと思っているからです。また、そういう製品であってほしいとも思っています。

 AIBOの購入層とある程度かぶる部分もあるかとは思います。ただ、AIBOは自分のしたことに対してフィードバックがある、要はコミュニケーション主体の製品。一方、Rollyは自分のやりたいことをやらせる製品。この部分で決定的に違いますし、やはりRollyはあくまでオーディオプレーヤー。僕たちもどういった層が購入するかはまだ見えない部分がありますが、AIBOを購入した人が必ずしもRollyを購入するかといえば、そうはいえないと思っています。

■第2世代、第3世代のRollyはどうなっていくのか。メモリーやバッテリー駆動時間は向上するか

 バッテリー駆動時間はスピーカーの効率(同じエネルギーで出力を上げるなど)を上げたりすることで、まだ伸びる余地はあると思っています。メモリーに関しては、現時点ではおよそ200曲分のメモリー(1GB)を持っています。液晶がないオーディオプレーヤーとしては、これ以上の楽曲を入れると今度は楽曲の選択に困ることになります。その場合、液晶を搭載するのか、ボタンで選択するのか、はたまた、音声認識の搭載までも視野に入ってきます。例えば、音声認識に関しては、Rollyが発している音と人間の声を区別して、音声を認識しなくてはいけないなど課題はまだあります。音声がうまく認識されず、再生したいのにできない、などというのはペット感覚で受け入れられているAIBOだと許されますが、オーディオプレーヤーであるRollyには許されません。一歩間違うと、(AIBOでは受け入れられた音声認識や人工知能が)Rollyではストレスになります。メモリーに関しては、そういった部分や市場のトレンドを見ながら決めていきたいと考えています。

 ただ、今はまずはユーザーのフィードバックを見ることが優先です。次の構想はそれからだと思っています。今はRollyがユーザーの方にどのように受け入れてもらえるか、楽しみです。