AOSテクノロジーズは、パソコンのモニタリングソフト「スペクタープロ 6.0」を発売する。パソコンの画面を逐次キャプチャーするほか、表示したWebサイトや送受信したメール、キー入力した文字など、パソコンのほぼすべての操作を網羅的に記録できる強力なツールである。

 同社 代表取締役社長の佐々木隆仁氏は、企業の情報漏えいを防止する上で同製品が大きな役割を担うほか、インターネットを使う子供を犯罪から守る上でも効果的であると製品の意義を強調した。一方で、他人の個人情報を取得できることや、モニタリング対象者が気付かないような形で動作させられるといった注意点にも言及。導入する際に事前にモニタリング対象者に告知するなど、適切な運用をするよう導入者のモラルが求められるとの認識を示した。

■スペクタープロを国内で発売しようと考えたきっかけは

 ここ数年深刻化している企業の情報漏えいや、未成年を狙ったインターネット上の犯罪にきちんとした抑止力を持つキラーアプリケーションとして、スペクタープロが大きな役割を担えると考えた。

 国内の多くの企業は、情報漏えい対策として内部統制の強化、機密情報へのアクセス権の制限などを施している。しかし、それで本当に漏えいをなくせるだろうか。例えばコールセンターは、オペレーターがディスプレイでユーザー情報を閲覧している。目で見たものは脳で記憶することができる。「漏らすな」といくら声を大にしても、人間の脳にふたはできない。

 日本の社会は、まだまだ性善説が強い。しかし、コンピューターを人が扱う仕組みである限り、情報漏えいを完全に遮断することは難しい。性善説とは一線を画して、情報漏えいを確実に防げる仕組みを整えることが必要だ。そうした仕組みをソフトを使って提供できないかと考えていた。

 スペクタープロは、パソコンのモニタリングソフトとして世界で一番売れており、実績のあるソフトだ。このソフトを日本でも発売したいと考え、当社から米国の販売元に提案した。ダブルバイト対応の難しさといった問題もあり、一度は断られたのだが、このソフトでなければという熱意で繰り返しアプローチし、ようやく日本での販売権を認めてもらった。

■スペクタープロを使うことで、どのように情報漏えいを抑止できるのか

 スペクタープロは、使用中のパソコンの画面を逐次キャプチャリングして保存する。同時に、アクセスしたWebサイト、検索サイトでの検索文字列、メールソフトやWebメールで送受信した電子メール、キーボードで入力した文字列、起動したソフトなど、各種のログを蓄積する機能を持つ。

 また、画面キャプチャーと各種のログをひも付けできるという特徴がある。例えば、アクセスしたWebサイトのURLをログとして蓄積するだけだと、そのサイト上でどんな画面を見て、どんな操作をしていたのかが分からない。スペクタープロでは、ログの中で気になるURLがあった場合、そのときの画面キャプチャーを呼び出して詳細な挙動を確認できる。単にネットオークションや株式情報、匿名掲示板などのWebサイトを見ていたというだけでは、それが仕事に関係あるかないかを確実に評価するのは難しいが、スペクタープロではそれが可能だ。

 ファイルの編集やリムーバブルディスクへのコピー、印刷、削除といった操作の履歴も取れるので、機密ファイルの持ち出しの有無なども明確に確認できる。企業のシステム部門などから、ネットワーク経由で従業員のパソコンの画面キャプチャーやログを確認することも可能だ。

 企業では情報漏えい対策として、誤ってデータを流出させてしまうことを防ぐ処置は既にいろいろと講じている。では、悪意を持ってデータを持ち出そうとする人はどう防ぐか。スペクタープロにより、従来無防備だった個々のパソコンの操作というところをガラス張りにしていく。そして、従業員に「スペクタープロを導入している」と伝えることで、一線を踏み越えて犯罪行為に手を染める人への抑止効果を期待でき、より実効性のある内部統制を実現できる。

 また、誤って情報漏えいが起きたときの原因究明にも役立つ。これまでの情報漏えい事件では、企業で内部調査を実施しても、具体的な原因について「究明中」としたまま、結局突き止められないというケースがしばしばある。スペクタープロをインストールしてあれば、いつ、どのユーザーが、どのパソコンから、どのような操作で漏えいさせたのかをきちんと確認でき、適切な再発防止策を講じることもできる。

 このほか、米国企業の導入事例を見ていると、スペクタープロを導入後、従業員の残業時間が減るという効果が出たところがある。画面キャプチャーやログが取られていることを意識すると、私用でパソコンをいじる時間が減って、早々に仕事を片付けて帰るようになるようだ。

■家庭向けには、どのような用途を考えているのか

 小さな子供を持つ保護者の多くは、「子供がインターネットを使うのは恐い」と考えている。子供がパソコンを使うときに必ず保護者が付きっきりでいられれば良いが、そうもいかないのが実情だ。何らかの対策が必要と考える保護者も多いが、その割に、フィルタリングソフトなどの存在はまだ広く知られていない。スペクタープロを使えば、子供に安心してネットを使わせることができる。

 実際、米国ではネット上での出会いをきっかけにした犯罪が既に深刻な社会問題となっている。日本では深刻な事例はあまり多くないが、これは単に表面化する事例が少ないだけで、実態としては米国と同様に深刻になりつつあるというのが私の考えだ。

 スペクタープロを導入しておけば、保護者が画面キャプチャーやログを確認して、問題があれば子供を注意し、ネット上でやって良いことと悪いことを子供にきちんと教えることができる。子供がどんなことに関心を持ち始めているかも把握できる。また、特定のWebサイトやインスタントメッセージの特定のユーザーとの接続を遮断する機能もある。ログやキャプチャーを確認しながら、簡単な操作で禁止リストにURLやユーザー名を追加できる。

 企業の場合と同様、子供がこうしたモニタリングソフトが入っていることを認知することで、興味本位で怪しいサイトにアクセスしたりせず、注意して使うという心理的な効果も期待できるだろう。アクセス可能な時間帯を制限する機能もあり、インターネットにのめり込みそうな子供に、節度を持たせることもできる。

■Webコンテンツのフィルタリングソフトとのすみ分けは

 スペクタープロとフィルタリングソフトは、補完関係にあると考えている。

 現在市販されているフィルタリングソフトは、本来ブロックしなければいけないものを通してしまうことがあるし、逆に問題ないコンテンツをブロックすることもある。例えば企業なら、転職サイトや掲示板はアクセス禁止としているところも多いだろうが、もしかすると業務上の必要があってアクセスしているのかもしれない。

 そうした場合にスペクタープロでログと画面キャプチャーを確認して、Webサイトの内容やユーザーの振る舞いをチェックし、その上で必要があればアクセス遮断などの措置を採れる。そうした、フィルタリングソフトではカバーし切れないきめの細かさをスペクタープロで補えるのがメリットといえる。

■スペクタープロを悪用すると、他人の個人情報を盗むこともできてしまうのでは

 確かにスペクタープロは恐いソフトでもある。

 私自身、社外で製品のデモをする際、当初は自分が普段使っているノートパソコンに入れていたのだが、デモの際に人事情報の入った文書ファイルを見せてしまったり、移動中の飛行機で麻雀ゲームで遊んでいたことを披露したりするはめになった。さすがにこれはしゃれにならないということで、今はデモ用のパソコンを別に用意するようにしている。

 スペクタープロのインストールにはAdministrator権限が必要なため、きちんと管理された企業内のパソコンなどであれば、勝手にインストールすることはできない。とはいえ、インストールできる環境にあり、インストールする人が悪意を持っていれば、他人のIDとパスワードを盗むこともできる。また家庭であれば、例えば配偶者の浮気調査などを目的に、個人情報を盗み見するという悪意を持ってスペクタープロを使うこともできてしまうかもしれない。しかし、そうした使い方をすれば犯罪になる。中にはそういう使い方をする人がいるだろうが、それは使う人次第。そういうことに使わないという意識が大事だと考えている。

 ソフトは道具である。道具というのは、うまく使えば非常に有用になる。一方で、その道具をどのように使うかもまた重要だ。道具が強力であればあるほどこの傾向は強くなり、利用者のモラルに委ねられる部分が大きくなっていくだろう。

 確かにリスクもあるが、それでも、「会社や子供を守るために有効な手段は何か」という命題に対して、スペクタープロは強力な道具になると考えている。

■スペクタープロをインストールして実行しても、ユーザーにその存在を一切気付かれないような設計になっている

 このソフトは「ステルスモード」というものを持っている。インストールした後、インストールした痕跡をすべて消し、スタートメニューやタスクバーにも何も表示せず、タスク マネージャを見ても分からないようにできる。これは、スペクタープロをアンインストールできないようにする目的で搭載している。よほどパソコンに詳しい人でも、ステルスモードで動いているスペクタープロを見つけ出して止めることはできないと思う。

 ステルスモードはあくまでアンインストールを不可能にするためのもので、誰かをこっそり監視したり、IDやパスワードを盗み出したりするためのものではない。スペクタープロを導入する場合、導入するパソコンを使用するユーザーに対しては、きちんと「モニタリングソフトを入れた」ということを事前に伝えるのが前提だと考えている。

 なお、ステルスモードは設定により解除することもでき、タスクバーにアイコンを表示したり、スタートメニューにスペクタープロを出すこともできる。

■子供に黙って導入し、後でそのことが判明したら、親子関係が悪化する事態を招きうる

 子供が信用できないからこっそりモニタリングする、という使い方は誤りだ。こうしたソフトを導入する際には、親子間の信頼関係があることが前提だと考えている。信頼関係がない状態でこのソフトを使うというのは、ソフト以前に別の問題があるのではないか。

 子供にはきちんとモニタリングソフトの存在を伝えるべき。その上で、きちんと使えば効果あるソフトだと考えている。このソフトをインストールし、子供にそのことを伝えた上で、ある程度自由にネットを使わせるか。それとも、このソフトを導入せず、不安を抱いたまま子供にネットを使わせるか、あるいは親がずっと見守るか。きちんと考えている保護者なら、このソフトを使う方を選ぶだろう。