Windows NT/2000版リレーショナル・データベース(RDB)市場が堅調に成長している。ただ,日本オラクルとマイクロソフトの二強時代は当面続きそう。 他社は技術者の確保に手間取るなど,飛躍のきっかけがつかめない。

図●主なWindows NT/2000版RDBの出荷実績と見込み
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 2001年度のWindows NT/2000版RDB(以下NT版RDB)市場は主要ベンダー6社の合計で前年度比28%増の25万2150本(本誌推定,以下同),金額では同17%増の380億7000万円になる見込み。2000年度の出荷実績が前年度比41%増の19万6700本,金額で同50%増の325億3000万円だったので,伸び率は鈍化したとはいえ,堅調に出荷を伸ばしている。

 市場の牽引役は,日本オラクルのOracle 9i*1*2とマイクロソフトのSQL Server。この2製品で本数の73%,金額の76%のシェアを占め,日本IBMのDB2 ユニバーサル・データベース(UDB)や富士通のSymfoWARE Serverなどメインフレーマの製品が後を追う。

 売れ行きのポイントとなるのは,チャネル展開の有無と技術者の人数の2点。Oracle 9iとSQL Serverはすべて販売代理店によって販売されているが,UDBや国内メーカーの製品は直接販売の割合が高い。対応アプリケーションを増やすことが売れ行きに直結するため,ISV(独立系ソフト・ベンダー)や販売代理店の開拓と,その技術者の教育がベンダーにとって課題となっている。

ISVをきめ細かく回るオラクル

 牽引役の一つである日本オラクルのOracle 9iの出荷本数は2000年度(5月期)に10万本,金額は170億円になった。前年度と比べると本数で67%,金額で55%とそれぞれ増えた。

 杉崎正之製品本部システム製品マーケティング部9iマーケティンググループ担当マネジャーは,急増の理由を「値下げの効果が出た」と説明する。日本オラクルは22万円だったローエンド製品のStandard Editionを2001年1月に16万円に値下げした。価格が高いと指摘されることが多い日本オラクルだが,ローエンドに関しては全くそん色のない料金体系となった。「特に中堅・中小企業への出荷の伸びが顕著だ」(杉崎マネジャー)。

 ただ,値下げと同時に同時ユーザー・ベースだったライセンス体系を指名ユーザー・ベースに変えるなど「トータルでの料金はあまり下がっていないはず」という指摘もある。

 こうした中で,日本オラクルが注力するのはISVへのアプローチ。杉崎マネジャーは「日本オラクルは今後,中堅・中小企業市場を主要ターゲットと位置付けている。Oracle 9iに対応するアプリケーション・パッケージを増やすことで対応していきたい」と話す。2001年春からISV担当の先任営業部隊を設置し,国内300社以上に営業攻勢をかけると同時に,日本オラクルへの要望を聞いた。「オラクル製品から他社製品に離れていたISVが戻ってきている。2002年前半には,ヒアリングの成果を盛り込んだ大胆な販売強化策を打ち出す予定だ」(杉崎マネジャー)。2001年度の出荷本数は前年度比20%増の12万本,金額は値下げにより横ばいの170億円を見込む。

表●主なWindows NT/2000サーバー版リレーショナル・データベース(RDB)製品の出荷状況と販売強化策
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MSはパートナ支援策を重視

 Oracle 9iと拮抗するのがマイクロソフト(MS)のSQL Server。2000年度(6月期)出荷実績は8万3000本,118億円だった。以前から中堅・中小企業市場では強かったが,「大規模システム向けのEnterprise Editionの出荷が伸びている。小規模システム向けのStandard Editionも大企業の部門サーバーに採用されはじめた」(製品マーケティング本部エンタープライズサーバー製品部SQL Serverグループの寺田和人シニアプロダクトマネージャ)。

 大規模システムへの採用を加速させるため,マイクロソフトはEMCジャパンや日立製作所などストレージ・ベンダーとの間で大容量データベースの高速化と信頼性の向上を狙って,2001年夏頃から相次いで技術提携を結んだ。

 拡販策としては,ISVと販売パートナに対する支援策をそれぞれ強化している。ISV向けには2001年2月にPIP(プロダクト・インテグレーション・プログラム)2.1を開始し,ISVに自社製品にSQL Serverを組み込む際にランタイム(実行)ライセンスのみの購入ですむようにした。販売パートナ向けには,2001年10月から会員制の無償WebサイトPartner Potalを開設し,パートナの営業/SEに対してきめ細かく情報を提供し始めたほか,簡易なeラーニングも用意した。2001年度の出荷11万5000本,165億円を見込んでいる。

技術者育成で追い上げるUDB

 Oracle 9iとSQL Serverから大きく引き離されているのが,日本IBMのUDB。2000年度(12月期)の出荷実績は5600本,8億円。2001年度は前年度比50%増の8400本,同50%増の12億円を見込む*3。本数,金額とも上位2社の1割にも満たないが,伸び率だけなら6社の中で最も高い。

 IBM製ハード以外にもUDBの採用を仕掛けるオープン戦略を本格化してから2年。パートナ組織のDB2パートナーズクラブを設置し,既にパートナ企業は約700社になった。現在,この700社を販売,SI(システム・インテグレーション),ISV,研修など7種類に分類し,パートナ同士で協力できる仕組みを構築中だ。

 IBM色を払拭するため,別会社として設立したUDBジャパン(東京都江東区,目次徹也社長)がマスターディストリビュータになっているが,実際にはハードを販売する1次販社がUDBを合わせて販売するケースがまだ多い。

 日本IBMにとって最大の課題はUDB技術者の育成。「UDBを使ったシステムを開発できる技術者が少ないので,営業担当者が受注を取ってこないのが現状」(大沼明穂ソフトウエア事業部データ・マネジメント事業推進部長)。

 2002年から教育コースを拡充し,その費用の一部を負担する制度を設けるなど,UDB技術者を増やす施策を講じる。またパソナテックがこの12月に開始するDB2技術者の育成・派遣事業にも,販売パートナを紹介している。

 日本IBMでは,UDBのほかにInformix Dynamic Server/同Red Brick Warehouseをインフォミクス事業推進部が出荷している。2000年度(12月期)の出荷実績は1700本で,14億5000万円。2001年度は1850本,16億円を見込む。

 外資系ベンダーが市場を席巻する中で,富士通と日立製作所の製品も本数,金額ともに堅調に伸ばた。ただ,両製品とも直販に大きく依存しているため,大幅な伸びは期待できない。販売パートナを通して中堅・中小企業に攻勢をかける外資系に水をあけられているのが現状だ。

 富士通の2000年度(3月期)のSymfoWARE Serverの出荷本数は3300本,金額は8億2000万円。「技術者育成,サービス体制の強化,他のツールと組み合わせて販売するセット商品の増強の三つで販売強化に取り組む」(小幡孝司ソフトウェア事業本部データサーバソフトウェア事業部プロダクトコンサルティング部課長)。

 具体的には,2001年上期からパートナ向けのSymfoWARE教育プログラムBP-TRAINを始めたほか,社内の技術者の教育にも取り組んだ。また,製品開発に携わってきた技術者をSEに配置転換し,2001年からSymfoWARE構築サービスを開始した。さらに,BI(ビジネス・インテリジェンス)ツールと組み合わせたセット商品SymfoWARE OLAP Serverに加え,中堅・中小企業向けのセット商品を開発する予定。2001年度は3900本,9億8000万円を見込む。

 日立製作所のHiRDBの出荷本数は2000年度(3月期)に1200本,金額は4億円に達した。2001年度は1500本,5億円の見込み。Webアプリケーション・サーバーのCosminexusや文書管理のDocumentBrokerなど自社製アプリケーションと組み合わせた販売を強化する。

 また,今年11月にHiRDB V6.1の出荷に伴い,ミッションクリティカル対応のサポートサービスを開始した。24時間問い合わせに対応し,技術者を派遣する。ただし,「グループ外には,包括提携を結んでいる日本ユニシスを除き,販売パートナがいない」(加納直紀ネットワークソフトウェア本部DB設計部主任技師)のが課題。グループ外の販路開拓を進める。

大型案件に注力したサイベース

 サイベースのAdaptive Server Enterpriseの2000年度(12月期)の出荷本数は1900本,金額は2億6000万円。2001年度は,出荷本数が前年度割れしそうだが,出荷金額は前年度実績を上回る見込み。高木伸滋マーケティング部ESDプロダクトマーケティング担当部長は「商談が大型化し,案件当たりの単価が上昇したため」と説明する。

 サイベースは,かねてから強かった金融機関に対する営業を強化したことが功を奏した。2001年度は1500本,2億9000万円を見込む。

(尾崎 憲和)