Question ドメイン名に日本語を使えると聞いたのですが,自社のWebサイトやメール・アドレスにも使用できるのでしょうか?

Answer 現状では,メール・アドレスには使えません。自社Webサイトへのアクセスには利用できますが,用途が限定されます


 2003年3月に国際化ドメイン名IDN(Internationalized Domain Name)の仕様を規定するRFC(Request For Comments)が発行され,ドメイン名に日本語や中国語などを利用できるようになりました。これまではドメイン名に英数字とハイフンしか使えませんでしたが,漢字やひらがな,カタカナなども使用できます。

 日本語のドメイン名は以前から試験的に運用されていましたが,2003年7月に日本レジストリサービスがRFCに準拠した日本語JPドメイン名の登録サービスを提供開始するなど,本格的に利用できる環境が整いました。

ASCII文字列に変換して通信

図1●日本語ドメイン名を利用できる仕組み
日本語ドメイン名を既存のドメイン名と同じASCIIコードだけで構成するドメイン名に変換することで,既存のDNSの仕組みをそのまま利用できるようにしている。変換ルールはRFCとして規定されており,変換機能を実装したアプリケーションでのみ,日本語ドメイン名を利用できる

 日本語ドメイン名は以下のような仕組みで実現しています(図1[拡大表示])。IDNでは既存のDNS(Domain Name System)の仕組みをそのまま使えるようにするため,日本語ドメイン名を英数字とハイフンで構成するASCII文字列に変換して通信します。例えば「日経ビーピー.jp」の場合は「XN--QDKC3JB5388DBM3A.JP」に変換されます。この「XN--」で始まるASCII文字列とIPアドレスの組み合わせを自社のDNSサーバーに設定しておけば,従来と同じ仕組みで日本語ドメイン名からIPアドレスの名前解決ができるというわけです。

 ASCII文字列への変換処理は,Webブラウザなどのクライアント・アプリケーションが実行します。変換規則はRFC(3490~3492)で標準化されており,「半角カタカナ→全角カタカナ」,「全角英数→半角英数」といった正規化をした上で,ASCII文字列に変換します。「日経ビーピー。jp」などのように入力しても「日経ビーピー.jp」に変換してくれます。Netscape 7.1以降がこの機能を標準で備えるほか,Internet Explorerはプラグイン(http://jprs.jp/i-Nav/)を利用できます。

 なお,これまで提供されていた試験サービスでは日本語ドメイン名のASCII文字列化にRACEと呼ぶ方式を使っていましたが,RFCではPunycodeと呼ぶ方式が採用されました。RACEの変換機能だけを実装したアプリケーションもあるため,現在は2種類の変換方式を併用する運用になっています。PunycodeとRACEの両方のASCII文字列を自社のDNSサーバーに登録しておく必要があります。日本レジストリサービスの場合,2003年9月上旬にPunycodeのみの運用に切り替える予定です。

現状では利用範囲が限られる

図2●自社Webサイトに日本語ドメイン名を利用する際の注意点
既存ドメイン名と日本語ドメイン名を混在させて使うとCookieやSSLの利用時に問題が起きる。Cookieは既存ドメイン名と日本語ドメイン名のページをまたがって利用できない,SSLでは既存ドメイン名と日本語ドメイン名の両方のサーバー証明書を用意する必要がある

 企業が日本語ドメイン名を取得すれば,ユーザーが入力しやすくなる,覚えやすくなる,などのメリットを享受できます。しかし,現状では日本語ドメイン名を使える範囲は自社Webサイトへのアクセスに制限されます。メール・アドレスに日本語ドメイン名を使うことはできません。日本語ドメイン名を扱えるメール・クライアントがほとんどないためです。

 自社Webサイトに日本語ドメイン名を利用する場合も注意が必要です。当面は日本語ドメイン名から既存ドメイン名のWebサイトにリダイレクトする利用形態が中心になります。日本語ドメイン名と既存のドメイン名は別のドメインになるため,混在させるとCookieやSSLの利用時に問題が発生するからです(図2[拡大表示])。

 Cookieは日本語ドメイン名と既存のドメイン名のページをまたがって利用することができません。Cookieを利用する必要がある場合は,日本語ドメイン名と既存のドメイン名のページが混在しないようにWebアプリケーションを開発する必要があります。現実的にはそれぞれのドメイン名ごとにコンテンツを分けることになります。

 SSLの場合も,既存のWebサイトで利用しているサーバー証明書をそのまま使うことができません。「ドメイン名の不一致」という警告画面が表示されます。警告画面が出てもユーザーが無視すれば継続してアクセスできますが,日本語ドメイン名のサーバー証明書を別途取得すべきです。ただし,日本ベリサインや日本ボルチモアテクノロジーズといった大手の発行機関は,日本語ドメイン名でサーバー証明書を発行するサービスを提供していません。

(本誌)
出典:2003年9月号 252ページ
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。