図●2002年度技術士第一次試験の技術部門別受験申込者数。かっこ内に受験者数と合格者数も示した。合計では3万4132人が申し込み,2万3979人が受験,3585人が合格した
 「技術士」は技術士法という法律にもとづいて行われる国家試験の合格者に与えられる資格で,業務独占(国家試験の合格者だけが特定の業務を行える。医師,弁護士など)こそないが,名称独占が認められている。この試験に合格しなければ,「技術士」と名乗ってはいけないのだ。日本技術士会技術士試験センターの渥美純一試験部次長は,「学問の最高峰が博士,技術者の最高峰が技術士」であるという。

 そ,そんなすごい資格なのか,知らなかったぞ,という方も多いかもしれない。そうなのだ。この資格は技術者の最高峰と呼べる資格でありながら,合格者の絶対数が少ないため,少なくともソフトウエア開発の現場では,ちっともメジャーではない。2001年3月末現在のデータでは,技術士は全部で4万6099人存在する。その48%を占めるのが建設部門の技術士だ。情報工学部門はわずか3%,1400人くらいしかいないのである。第1回で取り上げた基本情報技術者(第二種情報処理技術者)が累計60万人いることと比べると,「技術士(情報工学部門)」(情報工学技術士とは言わないので注意)なんて,ほんと目立たない存在だ。

 しかし,数が少ないイコール希少価値とも言える。私はかなりの数の資格を持っているが,名刺に印刷しているのは,博士(学術)と技術士(電気・電子,情報工学)だけだ。一般企業ではそうでもないが,官公庁には「技術士」という資格は非常にウケがよい。さらに,「技術士にしては若い方ですね~」などと言ってくれる方もいて,そういうときは思わずニンマリしたりするのである。技術系のコンサルタントを目指すなら,ぜひこの資格に挑んでみてほしい。

4年超の実務経験を求め口頭試験も手厳しい

 技術士には,下の図に示す19の技術部門と,さらにもう一つ,総合技術監理部門がある。それぞれの部門の中にさらに選択科目がある。建設部門なら(1)土質及び基礎,(2)鋼構造及びコンクリート,(3)都市及び地方計画,(4)河川,砂防及び海岸,(5)港湾及び空港,(6)電力土木,(7)道路,(8)鉄道,(9)トンネル,(10)施工計画,施工設備及び積算,(11)建設環境だ。情報工学部門では(1)情報システム,(2)情報数理及び知識処理,(3)情報応用,(4)電子計算機システムといった具合である。

 図を見ると,建設部門の受験者数が他を圧倒していることがわかっていただけるだろう。建設部門がこれほど人気なのは,国土交通省が会社に技術士がいるかどうかを入札参加資格にしており,橋,トンネル,道路などの計画,調査,設計を行う会社には技術士がいなければならないことになっているからだ。技術士一人が何点,といった会社の評価もする。そのために建設会社,建設コンサルティング会社は競って技術士を増やしているというわけだ。

 技術士になるのはなかなか大変だ。第一次試験はだれでも受けることができるが,第二次試験は違う。総合技術監理部門を除く部門では,(1)一次試験に合格した後に技術士の下で技術士補として4年を超える期間働いていること,(2)一次試験合格後に優れた指導者のもと4年を超える期間働いていること,のいずれかが必要になる。総合技術監理部門では,これがさらに7年を超える期間と長くなる。二次試験を受けるには業務経歴票,監督者用件証明書,監督内容証明書などを提出しなければならない。これも試験の一部ではないかと思えるほど、受験申し込み書類を用意するのは大変だ。業務経歴票には勤務先の代表者の印などが必要で、会社に技術士を受験することが知られてしまう。気軽に申し込める試験とはとても言えない。

 試験の内容も手ごわい。一次試験は朝の9時から午後5時30分まで,休憩を除いて7時間かかる。二次試験の筆記試験は総合技術監理部門だと2日に分けて10時間,それ以外だと7時間かかる。右の「過去問題」に示したように,択一式の問題と記述式の問題があり,かなりの体力が必要になる。

 受験対策としては,市販されている問題集で過去出題された問題を一通り解けるようにし,さらに雑誌などで新しい技術を学ぶとよい。たとえば2002年度の情報工学部門の一次試験では,UML(Unified Modeling Language),ADSL(Asynchronous Digital Subscriber Line),Webサービス,公開鍵暗号などが出題されていた。二次試験には業績を記述する論文があるので,規定の文字数でまとめる練習をしておくとよいだろう。

 二次試験では,筆記試験合格後に約30分の口頭試験もある。この口頭試験も部門によっては2~3割落ちる人がいて,決して気が抜けない。試験では面接官数名から次々飛んでくる質問にうまく応対することが求められる。コンサルティングをする際に,クライアントから質問を浴びせられているような雰囲気だ。私は試験官のぞんざいで挑戦的な態度にびっくりしたことを覚えている。若い受験者に試験官が厳しい態度であたる傾向があることを後で聞いて,なるほどと思ったものだ。

出典:2003年4月号 142ページ
記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります。