東京証券取引所は2010年をメドにメインフレームを撤廃する。今後数年間で基幹系システムをオープン系サーバーで順次再構築する。情報系についてはグリッド技術も導入する。株式市場としての魅力の向上や、売り上げ・利益の確保を考えると、メインフレームの維持は困難になると判断した。

図1●東京証券取引所の新システムの構成
すべてオープン系サーバーを使って構築する
図2●東京証券取引所における主要システムの更新スケジュールと使用プラットフォーム(一部本誌推定)
 数十台のメインフレームを使う東京証券取引所のオープン化プロジェクトがついに本格化する。2010年をメドに、すべてのシステムをオープン系サーバー上に作り替える(図1[拡大表示])。「拡張性、柔軟性、先取性、コストなど、さまざまな面でメリットの高いシステムを実現する」(丸山 顕義 経営企画部課長)。東証は2006年3月期までのシステム整備予算を約390億円と見積もっている。

 東証の基幹系オープン化計画は2004年秋に稼働予定の次期・清算システムで幕が上がる。清算システムは有価証券や資金の受け渡し業務を担う基幹系システムの一つ。現行の清算システムは日立製作所のメインフレームを使って1994年に構築したもので、「“建て増し”の連続で保守性が低下しているうえに設計も古い。T+1(証券の翌日決済)のニーズに対応するのは難しい」(丸山課長)と東証は判断した。

2006年には売買系もオープン系に

 続けて東証は特に高い信頼性が要求される売買システムのオープン化に踏み出す。手始めに、金融派生商品を売買する「派生システム」と、単一銘柄取引などの売買を処理する「ToSTNeT(トストネットシステム)」を2006年秋ごろにオープン系で再構築する。

 2010年には株式/CB(転換社債)売買システムを含め現存する三つの売買システムを一つにまとめ、「統合売買システム」として作り直す。もちろんこれもオープン系サーバーで動かす。丸山課長は、「商品追加などに伴うシステム変更を容易にする。また、複数の売買系システムを一つに統合することで、保守費を削減する」と狙いを説明する。

 相場報道システムも同じく2010年にオープン系で作り替える意向である。この時点で東証の基幹系システムのサーバーは、すべてオープン系に置き換わる(図2[拡大表示])。

周囲環境の変化がオープン化を促す

 東証は2001年11月に組織を株式会社に変更。米NASDAQをはじめとする海外の市場運営会社との競争を勝ち抜くために、システムを積極的に整備していく必要が出てきた。

 そのため信頼性はもちろんだが、システムのコストや柔軟性が今まで以上に重要になった。新商品への対応や制度変更、関係各社へのサービス向上を安く、かつ素早く実施する必要があるからだ。丸山課長は、「その面から見ると、現行の東証システムは効率や保守性が悪い」と打ち明ける。システム維持コストは年間100億円を超えている。

 オープン系技術の進展を背景に、東証は「更改するのであれば、メインフレームよりも将来性のあるオープン系プラットフォームのほうが現実的」と判断した。ただし丸山課長は「基本姿勢として全システムをオープン化することに変わりはないが、検討の余地も残す」と付け加える。例えば2005年春に更改する予定の次期株式/CB売買システムと次期相場報道システムにはメインフレームを使う。この二つのシステムは特に高い信頼性が求められるので、「この時点ではオープン系サーバーで置き換えるのはリスクが大きい」と考えた。

情報提供系はグリッド技術を導入

 すでにオープン系サーバーで構築している情報提供系のシステム群は、さらにコストと柔軟性を追求する。具体的には複数のコンピュータをつなげて資源を最適配置するグリッド技術を導入する。日本オラクルのデータベース・ソフト「Oracle 10g」を採用し、サーバーの利用効率を高める。負荷に応じてOracle 10gは複数台のサーバー間で処理能力を融通しあう機能がある。

 TD-netは5月や11月など決算発表の前の時期にはシステムのプロセサ使用率が6~7割にまで上がる。しかし、「普段は数パーセント程度」(丸山課長)という。現在はシステムごとに別々のサーバーを用意しており、無駄が多い。そこでデータベースをOracle 10gによる共通基盤システムに統合し、利用状況に合わせてリソースを融通し合う構造を実現する。Oracle 10gを使った基盤システムは2005年春までに完成させる予定だ。

(高下 義弘)
出典:2004年1月26日号 14ページ
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