富士通とNECがインターネット事業戦略の見直しを迫られている。事業の基盤と位置づけていたインターネット接続サービスの会員数の伸びが,計画を大きく下回っているからだ。両社はこれまでの拡大路線を撤回。付加価値サービスを拡充して,プロバイダ事業の立て直しを目指す。

 「インターネット時代における,富士通のソフト/サービス事業の中核として,@niftyは2004年春に会員1000万人を目指す」(富士通の秋草直之社長),「これからはインターネット領域に事業を集中する。BIGLOBEを新たなビジネスを生む“創発の場”として,2002年9月までに会員を1000万人に増やす」(NECの西垣浩司社長)――。

 富士通・秋草社長と,NEC・西垣社長のコメントは,いずれも1999年半ばのもの。当時,両社はインターネット事業戦略の基盤に,インターネット接続サービス(ISP)を位置づけ,それぞれ「1000万会員」という目標を掲げていた。

 両社とも「会員数が1000万人を超えれば,会員向けのビジネスを企画する企業をパートナとして呼び込める。それに付随するシステム構築の需要も期待できる」と目論んでいた。

 ISP事業の強化に向けて,富士通は1999年3月,日商岩井との合弁会社だった「ニフティ」を100%子会社化,同年11月には自社のISP事業「InfoWeb」と統合して,「@nifty」として再出発させた。NECも1999年以降,BIGLOBE事業を大幅にテコ入れし,アクセス・ポイント数やコンテンツを拡充した。

通信事業者との体力勝負で伸び悩み

図1●大手インターネット接続事業者(ISP)の加入者数の推移
通話料込みの料金コースを武器に,通信事業者系ISPが大きく加入者数を伸ばしている(各社の公表値を基に,本誌が作成)
 ところが,両社の思惑通りに事態は進まなかった。今年3月時点では,@niftyの会員数は460万人,BIGLOBEの会員数は372万人に過ぎない。しかも,ここ1年間の加入者の伸び率は,いずれも20%台にとどまっている(図1[拡大表示])。このペースでは,数年後に1000万会員という目標達成は難しい。

 富士通とNECにとって誤算だったのは,NTTコミュニケーションズやKDDI,日本テレコムといった通信事業者系ISPの台頭である。この1年間で,通信事業者系ISPはいずれも会員数を倍増させた。

 インターネットへの接続料金とアクセス・ポイントまでの通話料金(電話代)をセットにした割安な料金プランが,通信事業者系ISPの躍進の原動力になった。例えば,NTTコミュニケーションズのOCNダイヤルアクセスは,利用時間10時間までは電話代込みで月額2350円という割安な料金プランを用意している。

 通信事業者系に対抗して,@niftyとBIGLOBEも同様の料金プランを打ち出している。だが,利用時間10時間までのプランでみると,@niftyとBIGLOBEの料金はいずれも2500円で,通信事業者系ISPよりもいくぶん高い。

 自前の電話回線網を持たない両社にとって,電話代込みの料金プランは実質的な値下げになる。NECでBIGLOBE事業を担当する鈴木泰次NECソリューションズ執行役員常務は,「料金の値下げは限界にきている。ISP事業の存続が社内で議論されるほどだ」と打ち明ける。事実,NECのBIGLOBE事業は1999年度は赤字だった。「2000年度も,収支はトントン」(鈴木執行役員)という。

 苦しい台所事情は,ニフティも同じだ。ニフティの渡辺武経社長は,「@nifty事業は健全な利益を出している」と語るが,通信事業者系ISPとの値下げ競争が,同社の収益に悪い影響を及ぼしているのは間違いない。

サービス事業拡大で巻き返し図る

図2●富士通の子会社「ニフティ」が運営する「@nifty」とNECの「BIGLOBE」の事業戦略
いずれもサービス事業を拡大させるという基本方針は同じだが,@niftyは個人会員を重視する。一方のBIGLOBEは,企業と個人両方のサービス拡充を目指す
 「通信事業者系ISPとの競争を考えると,@niftyとBIGLOBEの会員数が今後急増する見込みはない」。こう判断した富士通とNECは,インターネット戦略の方向転換を決断した。両社とも,ISP事業の拡大路線を事実上取り下げる。

 今後,@niftyとBIGLOBEは,より収益性が高い付加価値サービスに事業の軸足を移す(図2[拡大表示])。具体的には,個人向けのコンテンツ配信サービスや,物販サービスなどに力を注ぐ。例えば,@niftyは,2002年3月までに映画やゲームなど100を超えるタイトルを配信できるようにする。複数のコンテンツを一つのWebページに集約して提供する「アグリゲーション・サービス」も近々開始する。

 NECのBIGLOBEは,個人向けに加えて,企業向けのサービスも拡充する。BIGLOBEのインフラを使った,Webサーバーのホスティング・サービスや,マーケットプレイスの構築・運用支援サービスなどを積極的に企業に売り込む。

 一連のサービス事業強化によって,ニフティは現在は売り上げの10%強にとどまっているサービス事業の比率を,2003年度に30%にまで増やしたい考えだ。NECも「2002年度にはBIGLOBE事業の売り上げの半分以上をサービスで上げる」(鈴木執行役員)と意気込む。

(玉置 亮太)
出典:2001年5月7日号 13 ニュースレポート
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