DRAMの構造を転用したFeRAM

図3●DRAMとFeRAMの構造の違い
FeRAMはDRAMのキャパシタ部分を強誘電体素子に変えたもの。ただし,強誘電体素子に記録したデータを書き換えるには双方向に電圧を加える必要があるため,そのためのプレート線が追加されている。
図4●FeRAMの記録の仕組み
1を記録するときはプラスの電圧を印加,0を記録するときはマイナスの電圧を印加する。このとき,強誘電体の結晶構造は,真ん中にあるチタン原子が上下に動いている。
図5●FeRAMが抱える信頼性の課題
繰り返し記録することへの耐性や,時間が経過することでデータ保持力が低下するなど信頼性の面で課題がある。NECエレクトロニクスの資料を基に本誌が再構成。
図6●FeRAMの破壊読み出しと非破壊読み出し
FeRAMは基本的に,読み出し時に元データを破壊する破壊読み出しである。そのため,DRAMと同様にデータを書き戻す必要がある。また,読み出し時にも書き込み動作が必要なため,強誘電体が劣化する。これらの問題を解決するため,非破壊読み出しも研究・開発されている。

 フラッシュ・メモリーの限界を補うべく,次世代の不揮発性メモリーはデータ保持に使う素子を工夫している。そのうち,既に量産されており,一歩リードしているのがFeRAMである。

 FeRAMの記憶素子に使うのは強誘電体だ。強誘電体は,結晶の一つひとつが自然状態でプラスとマイナスに分極している。電界をかけるとその極が一方向に揃うという性質を持つ。極の方向は,電源を切っても状態は変わらないためデータを保持できる。これにより不揮発性を実現する。

 ただし,FeRAMには大きな欠点がある。読み出し回数に制限があることだ。現在の読み出し回数は1012回ほど。「読み出し回数に制限があるメモリーなど使えないと言う声もある」(NECエレクトロニクス先端プロセス事業部FeRAM開発プロジェクト豊島秀雄プロジェクトマネージャー)と言う。

 FeRAMの構造は,パソコンのメイン・メモリーとして使われているDRAMによく似ている(図3[拡大表示])。このため書き換え動作が100ナノ秒程度と速い。DRAMとの違いはデータを記録する部分だ。DRAMは,トランジスタに電荷を貯めるキャパシタを加えたもの。FeRAMはこのキャパシタを強誘電体に変えた。つまり,DRAMを不揮発性にしたものだと言える。

 書き込み方法はDRAMとは少し異なる。DRAMはキャパシタに電荷があるかないかで記録するので,ビット線という配線を使って一方向の電圧を印加する。これに対してFeRAMは,双方向の電圧を印加する必要があるため,ビット線に加えてプレート線という配線が追加されている。1を書き込む場合,プレート線からビット線の方向に電圧をかける。0を書き込むときは逆にビット線からプレート線の方向に電圧をかける(図4[拡大表示])。

 読み出し方法もDRAMとは違う。DRAMはキャパシタに電荷があるかないかで1と0を判別する。これに対し,FeRAMではそのままではキャパシタの状態を読み出せない。このため,読み出し時に強制的に1を書き込むことで0か1かを判別する。データが1の場合は状態が変わらないため,電荷の移動は少ない。一方,データが0の場合だと状態が反転するため,大きな電荷の移動が起きる。この電荷の差により1と0を判別する。

 このようにFeRAMは読み出し時にも書き込み動作を行う。ところが,強誘電体で書き込みを繰り返すと劣化が進む。つまり,FeRAMでは書き込み時に加えて読み出し時にも強誘電体が劣化することになる。

信頼性を阻む材料の性質

 FeRAMで用いる強誘電体の材料には大きく二つある。米Ramtron International社がライセンス供与するPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)と,米Symetrix社のSBT(ストロンチウム・ビスマス・タンタル複合酸化物)である。PZTの方が低い温度で製造でき,取り出せる電荷量が多いが,SBTは低消費電力を実現できる。今のところPZTを使って開発を進めるメーカーが多い。既にFeRAMを量産している富士通はPZTを採用している。

 PZTの結晶構造は,原子の位置に偏りがあり安定する点が二つある。データが0の状態と1の状態では,結晶中の原子の位置が異なる。具体的には中央にあるチタン原子(もしくはジルコン原子)が上にあるか下にあるかという二つの状態だ。

 メモリーには,信頼性が不可欠である。ところが,FeRAMには強誘電体の性質に由来する二つの問題がある。繰り返し書き換える際の耐性とデータの保持力に関する問題だ。

 繰り返し書き込みに対する耐性の問題は二つある(図5[拡大表示])。一つ目が,何度も繰り返し記録することで材料が疲労し,0と1をはっきりと区別して記録できなくなること。二つ目は,片方だけに電圧を繰り返し印加して同じデータを書き込むとその書き込みのクセがついてしまい別のデータが書き込めなくなる「ダイナミック・インプリント」である。

 データ保持力にも二つ問題がある。一つ目が,時間が経つにつれ,プラスとマイナスの極性が失われ読み出せなること。これを「減極」という。二つ目は,0か1の片方のデータのみを長時間保持することでデータが焼きついてしまい,書き換えられなくなる「スタティック・インプリント」である。これらの問題が起きるメカニズムは「まだ解明されていない」(NECエレクトロニクスの豊島氏)と言う。

 読み出し時にも強誘電体が劣化してしまうという欠点を克服するために,読み出し方法を工夫して,非破壊読み出しにすることも考えられている(図6[拡大表示])。プレート線に微小な電圧を印加することで極を反転させずにデータを読み取る。この場合,読み取れる電流が少なくなるため,データの判別が難しくなるという問題がある。

(堀内 かほり)
出典:2003年6月号 92ページ
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