不揮発性メモリーはメモリーカードやICレコーダーなど小型の記録媒体に多く使われている。電源を切っても保存したデータが消えないというのが特徴だ。不揮発性メモリーとして最も広く使われているのがフラッシュ・メモリーである。だが,フラッシュ・メモリーは書き込み動作が遅く,書き換え回数に制限があるという欠点を持つ。この欠点を解消するために,データを記憶する素子を工夫した三つの不揮発性メモリーが開発されている。記録素子に強誘電体を使うFeRAM(Ferroelectoric RAM),磁性体素子を使うMRAM(Magnetic RAM),相変化材料を使うOUM(Ovonic Unified Memory)である。

図1●次世代の不揮発性メモリー
現行の不揮発性メモリーの主流であるフラッシュ・メモリーの欠点を補う次世代の不揮発性メモリーは,大きく三つのものが研究開発されている。2003年5月現在,FeRAMのみが量産されている。
図2●フラッシュ・メモリーの構造と仕組み
電荷を貯める浮遊ゲートは絶縁体であるシリコン酸化膜に囲まれている。このため,一度浮遊ゲートに入った電子は電源を切っても外に逃げない。ただし,酸化膜が劣化するため書き換え回数が100万回程度という制限がある。また,書き込みに9V程度の高電圧が必要になる。
 フラッシュ・メモリーは,データを書き換えられる不揮発性メモリーとして多くの機器で使われている。身近な例で言えば携帯電話が挙げられる。携帯電話のアドレス帳では,一度登録したアドレスや携帯電話番号を修正できる。そして,電源を切った後でもそのデータを保存し続けられる。

 もともとフラッシュ・メモリーは,電源を切ってもデータが消えない読み出し専用メモリーであるROM(Read Only Memory)から派生した。ROMを電気的に書き換えられるようにしたのがEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)だ。EEPROMは1ビットごとの書き込みと消去ができる。ただし,1ビットずつであるため書き込みが遅く,消費電力が高い。そこで,1ビットずつではなくブロック単位で書き込んだり消去する仕組みを持つメモリーが考えられた。これがフラッシュ・メモリーである。フラッシュという名前は,一括で消去するという特徴に由来する。

 フラッシュ・メモリーはEEPROMに比べると書き込みが速く,消費電力が低い。ところが,揮発性(電源を切るとデータが消える性質)のメモリーであるDRAMやSRAMに比べると,書き込み動作は遅く消費電力も高い。これはフラッシュ・メモリーの構造から来る問題だ。

 そこで,フラッシュ・メモリーより高速で消費電力が低い次世代の不揮発性メモリーが開発されている(図1[拡大表示])。主なものは三つある。データを記憶する素子の材料はどれも半導体ではない風変わりなものだ。DRAMに似た構造でデータを保持する部分に強誘電体を用いたFeRAM,ハードディスクのヘッドに使う素子を用いて磁気ディスクの仕組みで記録するMRAM,記録型光ディスクと同じ相変化材料を使うOUMである。

記録するにつれ絶縁体が劣化

 書き込み速度が遅い,書き換え回数に制限があるといったフラッシュ・メモリーの欠点は,その構造に原因がある(図2[拡大表示])。

 フラッシュ・メモリーは,電流がソース領域とドレイン領域の間で一方向に流れる半導体の上に,電子を貯める浮遊ゲートを載せた形をしている。浮遊ゲートは,絶縁体であるシリコン酸化膜で覆ってある。その上には,ソースとドレインの間に流す電流をコントロールする制御ゲートがある。データが0か1かは,シリコン基板上に形成した浮遊ゲートに電子があるかないかで決まる。電子がある場合が0,ない場合が1である。

 フラッシュ・メモリーはその名のごとく,書き込む前にいったんデータを消去して初期化する。具体的には,すべての浮遊ゲートから電子を抜き出す。つまり,データをすべて1にする。

 書き込み時には,データが0の場合のみ書き込み,データが1の場合は何もしない。0の書き込み時には,ゲート電極とドレイン電極に高電圧をかけて,ソースとドレインの間を流れる電子を高エネルギーにする。すると,電子は絶縁体である酸化膜を突き破って浮遊ゲートに飛び込む。

 データを読み出すときは,ゲート電極に一定の電圧をかけて,多く流れれば1,電流があまり流れなければ0と判別する。浮遊ゲートに電子がない状態(データが1)では,ゲート電極に電圧がかかった状態でドレイン電極に電圧をかけると,ソースとドレインの間(チャネル)で多くの電子が移動し電流が流れる。一方,浮遊ゲートに電子がある状態(データが0)では,チャネルを流れる電子が少なくなる。ゲート電極にかけた電圧が浮遊ゲートの電子に取られてしまい,チャネルに影響しにくくなるからだ。

 このようにフラッシュ・メモリーは「酸化膜を突き破る」という激しい動作を行うため,速度と書き換え回数に限界がある。書き換えにより酸化膜は劣化する。フラッシュ・メモリーの書き換え回数は100万回程度に制限されている。

(堀内 かほり)
出典:2003年6月号 92ページ
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