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IP通信開始までの2ステップ

図3●PPPoEのフレーム・フォーマット

 PPPoEのパケット構造を図3[拡大表示]に示す。上段の図を見てみよう。あて先アドレス,送信元アドレス,イーサタイプ(ETHER_TYPE),データ,そしてチェックサムから成るのは,イーサネットのフレームで,その中のデータの部分がPPPoEのフレームだ。

 実際の通信ではまずPPPoEのセッションを確立する。その後PPPを使って認証などのステップを経て,IPによる通信を開始する。このPPPoEのセッションを張るまでを「Discovery Stage」,その後のPPPによるやり取りを「PPP Session Stage」という。これらはイーサネット・フレームのイーサタイプというフィールドで判断している。

 Discovery StageでPPPoEセッションを成立させるまでには決まった手順がある。クライアントとサーバ間のこの手順を管理するのが「CODE」というフィールドである。値によって五つの状態を表す。

 次に,PPPoEのセッションを確立する手順について見ていく。

図4●PPPoEとPPPのセッションを確立するシーケンス

 まずパソコンにセットアップしたPPPoEクライアントはPPPoEサーバを探すためにPADI(PPPoE Active Discovery Initiation)というパケットをブロードキャストで送信する(図4[拡大表示](1))。

 このパケットを受け取ったPPPoEサーバは送信元のPPPoEクライアントのMACアドレスを指定し,応答のためのPADO(PPPoE Active Discovery Offer)というパケットを送信する(図4(2))。この前の段階で,クライアントはネットワーク全体にブロードキャストを行っているので,応答パケットは複数のPPPoEサーバから受け取る場合がある。PPPoEクライアントはその中から一つを選択し,特定のPPPoEサーバ向けてPPPoEセッションの開始を要求するPADR(PPPoE Active Discovery Request)パケットを送信する(図4(3))。

 選ばれたPPPoEサーバは,PADS(PPPoE Active Discovery Session-confirmation)パケットでPPPoEのセッションIDをクライアントに通知する。こうしたやり取りを経てPPPoEセッションが確立される。

 この後はダイヤルアップ接続と同様にPPPで認証やIPアドレスを確認する(図4(5)~(8))。

 PPPではまずLCP(Link Control Protocol)のメッセージ・パケットを使って,PPPoEのクライアントとサーバ間の基本的な通信条件を決める。次に,PAP(Password Authentication Protocol)やCHAP(Challenge Handshake Authentication Protocol)などの方式を利用して,ユーザを認証する。CHAPの方がPAPに比べてセキュリティの強度が高い。認証が終わった時点でIPCP(Internet Protocol Control Protocol)を使ってサーバからIPアドレスを通知してもらう。

 すべての通信を終了させる時は,クライアント,サーバいずれの側からでもPADT(PPPoE Active Discovery Terminate)パケットを送ることで通知できる。

PPPoE以外のクライアント設定

 ADSLサービスでPPPを使ってIPアドレスを配布する方法には,PPPoA(PPP over ATM)という方式を使うやり方もある。

 PPPoEはイーサネットのネットワークでPPPのセッションを張るのに対し,PPPoAはATMのネットワークの上で確立する。

 PPPoEではIPパケットにPPPとPPPoEのヘッダを付加してイーサネットのネットワークで送受信する。一方,PPPoAの場合はIPパケットにPPPのヘッダを付加してATMのネットワークでやり取りする。各パケットをATMのネットワークでやり取りする手順はPPP Over AAL5(AAL5はATM Adaptation Layer 5を意味する)で定めている。IETFでRFC2364として規定されているものだ。

 パソコンにATMインタフェース・アダプタを装着するのは一般的ではない。そのためPPPoAの場合,ADSLモデムにPPPoAのクライアント機能を搭載する。ADSLモデムとパソコンはイーサネットで接続する。ADSLモデムはIPパケットをPPPでカプセル化し,ATMのセル・フォーマットに変換する。そしてADSL回線を使ってサーバへと送りだす。

 PPPoEとPPPoAの差は,PPPoAがADSL以外のCATV,無線,あるいはFTTHなどのほかのブロードバンド技術に対応していないことと,ブリッジ・モードのADSLモデムを利用できない点にある。つまり,クライアント側でPPPoAのセッションを終端するのは必ずルータ・モードのADSLモデムとなる(図5[拡大表示] )。パソコンが終端することはない。

 PPPoAのADSLサービスはイー・アクセス,アッカ・ネットワークスなどが提供している。両社ともユーザのADSLモデムの種類によってはPPPoAだけでなくPPPoEも使うことができる。

 このほか,PPPの機能ではなくDHCPサーバを使って各ユーザのパソコンにIPアドレスを配布する場合もある。DHCPの場合,ユーザ認証やアカウントの管理ができない(DHCPでは特定のMACアドレスを持つイーサネット・アダプタにIPアドレスを配布する設定が可能)。

 このほか,グローバルな静的IPアドレスをパソコンに設定して使うことができる,ビジネス・ユーザ向けのADSLサービスもある。これらの各方式についてクライアントのネットワーク環境設定の特徴を表1[拡大表示] にまとめた。ただし,これらはユーザの利用する機器やサービスなどの条件によって異なる場合がある。

図5●PPPoE,PPPoAでやり取りするパケットの構造
 
表1●PPPoE,PPPoAとその他のアドレス設定機能の比較(アドレス配布サーバの視点で比べた)

安田 佳世子

レッドバックネットワークス マーケティングマネージャー。米国機器ベンダの日本法人でDECnetやFDDI製品から始まりEthernetを扱ってきた。



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