米Sun Microsystemsが米国時間6月14日にOS「Solaris 10」を「OpenSolaris」として公開した(関連記事)。1週間後の22日には米国から担当ディレクタとマネージャが来日,東京・経団連会館でプレスセミナーを開催するなど,この取り組みにかける意気込みを感じる(関連記事)。

 Sun社によれば,2月に無償提供を始めたSolaris 10のダウンロード件数はすでに160万件。今回のOpenSolaris公開を機にSolarisへの関心がますます高まると期待しているという。しかし,米メディアを見てみると懐疑的な見方も多い。「長期的に見てOpenSolarisがオープンソース・コミュニティからどれくらい受け入れられるかは不明」といった具合。今回は各種の米メディア情報などを見ながらOpenSolarisについてレポートする。

長かったオープンソースまでの道のり

 OpenSolarisについては,社長兼COOのJonathan Schwartz氏が1年前に明らかにし,これまで準備を進めてきた。Sun社がまず取り組んだのがライセンス。採用したのは,Mozilla Public Licenseをベースにした「CDDL(Common Development and Distribution License)」。Sun社が策定し,今年1月14日にOSI(Open Source Initiative)から承認された。

 同ライセンスは,Linuxなどが採用しているGPL(General Public License)と異なり,改変した部分を必ずしも公開しなくてもよいというのが特徴である。また開発者に特許権の行使を放棄させるという条項を盛り込んでおり,これらにより企業導入の垣根を低くしている。これに伴いSun社も,1600件以上のSolaris関連特許を無償提供。CDDLに基づくソフトウエアであれば自由に利用できるようにし,特許問題への耐性も高めたという(関連記事)。

 Sun社は開発者コミュニティに向けた取り組みも始めた。コミュニティを"セルフ・ガバナンス(自己管理)"の形で運営させる目的で,OpenSolaris諮問委員会「CAB(Community Advisory Board)」を設立。これにApache Software FoundationのRoy Fielding氏や,独立系UNIXコンサルタントのRich Teer氏などを委員として迎えた(関連記事)。

Sun社の狙いはユーザーの拡大

 これらの取り組みを経てようやく今回の公開に至ったというわけだ。Webサイト(http://opensolaris.org/)やブログ(http://blogs.sun.com/)も開設し,ソース・ブラウザ,ビルド・ツール,書類,コミュニティ・ポータル,メーリング・リストなどへのアクセスも提供している。来日したOpenSolarisマーケティング担当マネージャのClaire Giordano氏によれば,Webサイトにはこの1週間で100万以上のヒットがあり,また約5700人がメーリング・リストに参加,すでに1200通以上のメールが投稿されたという(関連記事

 Solarisをオープンソース化するSun社のメリットは何だろう。米CNET News.Comの記事に次のようなものがある。「Sun社は学生も含めた多くの開発者を取り込みたい考えだ。学生は将来のアドミニストレータやコンピュータ購入者。開発者が多くいるということは,多くのユーザーを獲得することを意味し,ソフトウエア会社とのパートナーシップも増えることになる。結果として開発者がさらに増えることになる」(掲載記事)。

 Sun社幹部のインタビュー記事を見ていてもこうした意向がうかがえる。もともと売上比率の低いSolarisで稼ぐのではなく,開発者を中核としたユーザー層を拡大することで,同社製品の利用を促進していこうというのが狙いのようだ。

大事なのはコミュニティの管理モデル

 しかしSun社には,まだまだ課題が多くあると指摘するのは調査会社Quandt AnalyticsのStacey Quandt氏(米internetnews.comに掲載の記事)。同氏は,コミュニティの管理モデルのことを指している。これは,開発者がOpenSolarisに取り組む際に明確にしておくべきこと。例えば,使うビルド・システムは何かといったことや,外部開発者がどのような形でプロジェクトに寄与できるのかといったことについて詳細をまとめたものだ。

 同記事によると,Apache Software FoundationのRoy Fielding氏(OpenSolaris諮問委員)が,管理モデルの提案書ドラフト初版の策定に尽力したが,正式な提案書がいつ完成するかについては,定かではないという。

 OpenSolarisを開発者にとって魅力あるものにするのはなかなか難しいことではあるが,そのためにもきちんとした管理モデルを策定して,Sun社の意向を示しておくことが重要だろう。同氏は,これは米Red HatがFedoraプロジェクトで経験していることと同じと説明している。外部の関与の規模を大きくしたければ,それだけ困難に直面するという。

 また同氏は次のようにも表現している。「プロジェクト推進のためには,ソースコードの公開は必要。だからSun社それを公開した。これは理解できる。しかしそれははじめの一歩に過ぎない。これから長い旅が始まる」(掲載記事

Sun社が否定する「Linux対抗」という見方

 OpenSolarisについてはや競合企業や民間団体などからの非難や揶揄も多い。代表的なものが2つある。1つは,OpenSolarisに踏み切ったのはLinuxの台頭があったせいではないか,というもの。もう1つは,CDDLライセンスに対する否定的な見方だ。しかしSun社はこの2つについて,きっぱりと否定している(関連記事)。

 前者については,Sun社自体がもともとはオープンソースの企業という説明である。同社の共同設立者であるBill Joy氏はBSDの開発者。これによりSun社はこれまで2番目に大きいオープンソースのコントリビュータだったというのだ。Sun社プラットフォーム・ソフトウエア担当副社長のTom Goguen氏は,「Sun社はOpenSolarisでステップ・アップし,最大のコントリビュータになる」としている(米COMPUTERWORLDに掲載の記事

 ライセンスについては,「Sun社はSolarisの技術を広く一般のコミュニティに提供せず,Solaris特有のライセンスであるCDDLに限定している」などと非難されている。これについて同社マーケティング担当マネージャのClaire Giordano氏は,「異なるニーズに向けたさまざまなライセンスが世の中にあって,それを選択できることはよいことだ」と説明している(掲載記事)。

 確かに,Sun社の起源はオープンソースだったのかもしれない。しかし,同社は今回初めて,その旗艦ソフトであるSolarisで本格的にオープンソースに取り組む。また確かにCDDLは,ビジネス利用には親和性があるように思う。果たしてこれを世界中の開発者がどうとらえるか。Sun社がこれまで行ってきた一連の改革の本丸,それがOpenSolarisだ。じっくりと見守っていきたい。

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