9月4日,Debian Projectが電子メールの送信者認証技術/規格「Sender ID」を支持しないという声明を発表した。9月2日のThe Apache Software Foundation(ASF)による不支持表明に続く動きである(関連記事)。両者はいずれもオープンソース・ソフトウエア推進団体で,支持できない理由として米Microsoftのライセンス条項などが団体の方針と衝突することをあげている。

 Sender IDは,Microsoft社の「Caller ID for E-mail」ともう1つの認証技術である「SPF(Sender Policy Framework)」とを統合した技術だ(関連記事)。6月にMicrosoft社がインターネット技術標準化団体であるIETFに仕様を提出しており,今はそのパブリック・レビューの段階。今回の声明はそんなタイミングでIETFに出された。Sender IDは今後,電子メールの世界を大きく変える技術/規格として期待されているだけに波紋を呼んでいる。

■オープンソース団体が懸念するライセンスと特許

 Debian ProjectとASFがともに懸念している問題は2つある。

 1つは,Microsoft社のライセンス「Royalty-Free Sender ID Patent License Agreement」だ。これにより,オープンソース開発者はSender IDの技術を自由に使用したり,サブライセンスしたりすることができなくなる。またすべてのライセンシはMicrosoft社と直接ライセンス契約を結ぶ必要がある。ASFのWebサイトに掲載されたOSI(Open Source Initiative)のLawrence Rosen氏の電子メールによれば,「(Microsoft社の同ライセンスは)開発者に対してエンド・ユーザー並みの使用制限を設けている」という(掲載サイト)。

 オープンソースのコミュニティでは,互いに技術を提供し,サブライセンスも自由。世界中の開発者の労力や経験・知識を提供しあう。その代わり,誰もが自由にアクセスし,使用することができる。Microsoft社のライセンスではこうしたことがままならなくなるというわけだ。

 Debian Projectも発表した声明の中で次のように述べている。「Microsoft社のライセンスでは,Sender IDの技術を自由に使用,配布,修正することはできない。このことはDebian Projectのガイドラインと相いれない。したがってSender IDを実装したDebianのソフトウエアは配布できないし,もちろんSender IDのサポートもできない」(Debian ProjectのWebページ

 もう1つの懸念は特許だ。

 Microsoft社は今年3月にCaller ID for E-mailを発表したが,その時点から指摘されていた問題である。Microsoft社はCaller ID for E-mailに関する技術で特許を申請しているが,その範囲については明らかにしてない。つまり特許が成立し,内容が開示されたときに,それがとてつもない広範なものであるかもしれない。SPFと統合され,Sender IDとなった現段階でもMicrosoft社の方針は同じ。そうした不安からオープンソース団体はSender IDを実装できないでいる。

■Sender IDはスパム・メール全体の万能薬にはならない

 これまで,Sender IDは,割と早く普及するのではないかと言われてきた。実装が容易なこと,標準化作業が早く進んでいることなどが理由だ。しかし,ここにきてその前途に暗雲が垂れ込め始めたといった感じだ。最近,米メディアでそうした記事をよく見かける。

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