(Paul Thurrott)

 毎春Microsoftは,恒例の「Windows Hardware Engineering Conference(WinHEC)」つまりハードウエア開発者向けのトレード・ショーを開催している。WinHECはデバイス・ドライバを開発する際の概念が,あなたにとって特に重要だと感じられなければ,あまり楽しい催しには思えない。しかし過去数年にわたり,WinHECは驚くほど面白かった。Microsoftは直近の2回のショーを,遅れ続きのLonghorn OSを売り込むために使った。

WinHECでx64のLonghornの新ビルドがお披露目
 Microsoftはそのショーで,Longhornの新しいビルドを出荷した。そのビルドはデバイス・ドライバの開発者とほかのハードウエア中心の開発者向けのものだ。Longhornのベータ1は今のところ7月初旬にリリースされる予定で,これにはエンドユーザーやセキュリティ担当者や運用管理担当者向けのものが搭載される。従って,WinHECで配布されたビルドにはそれらは含まれていない。

 その代わりに私はこのショーで仕入れた,企業にとって大事なニュースをいくつか書きたいと思う。このニュースの大部分はx64プラットフォームと64ビット・コンピューティングに関するものだ。

 MicrosoftはWinHEC 2005を自社のx64 OS製品の販促開始のために使った。その中には「Windows Server 2003 x64 Edition」(standard,enterprise,datacenter)と「Windows XP Professional x64 Edition」を含む。こうしたシステムは,32ビット版の対応製品をそっくり鏡に映したものだが,DOSと16ビットWindowsアプリケーションのサポートを含めていくつか既に枯れてしまった枝を切り払い,膨大な量のRAMとその他のシステム・リソースへのアクセスを提供する。

 x64プラットフォームの成功は間違いない。x64ベースのサーバーやワークステーションやパソコンは,既存の32ビットOSとアプリケーションを従来以上に速く動かせる。採用した人には,最近PC業界では珍しくなった素晴らしい「未来の保証」を与えてくれる。これはまずx64ベースのシステムを今年購入して32ビットOSとアプリケーションを動かし,それから64ビットOSに移行し,最終的に64ビット・アプリケーションに移行できるというアイデアだ。

「AMDはデュアルコアの作りが違う」
 ロー・レベルでは,x64への賞賛のほとんどは,AMDに与えられるべきものだ。同社はこの革新的プラットフォームを初めて開発し,スクラッチから開発するというItaniumモデルは問題の多いものだと証明してみせた。賞賛のいくらかは,x64のポテンシャルを理解したという理由でMicrosoftに与えられるべきである。2年前,ためらいながらもこのプラットフォームをサポートすることに踏み切ったあと,今ではMicrosoftは総力をあげて取り組んでいる。

 今やIntelがx64の車列に飛び乗った。Intelは市場を支配する方法を持っており,x64プラットフォームは同社が競合他社の設計をコピーして採用した最初のものになるが,Intelが再び後塵を拝さないように,真剣そのものなのは今や明らかだ。

 WinHECで私が話したAMDの人によると,AMDのプロセッサ設計は,Intelのx64ベースのチップにある重大な性能面のボトルネックを排除したエレガントなものだという。これによりAMDはx64対決で善戦するだろうと述べた。そして,デュアルコア・プロセッサが,2005年後半に広く一般に入手できるようになると,ボトルネックのないことが,AMDとその顧客にとってさらにいっそう有益であると分かるだろうという。私が聞いたところでは,Intelのチップはデュアルコアの設計に手足を縛られることになるので,将来は作り直す必要があるとも述べた。

 HPはx64プラットフォームをベースにしたメインストリームのビジネス用PCを強く印象付けた。HP dx5150は以前の5000シリーズのマシンと同じマイクロタワー型の設計と,フォーム・ファクタを継承しながら,AMD Athlon 64プロセッサを装備することを可能にした。このシステムはさらに,組み込みのビデオのほかにPCI Expressベースのビデオを追加するオプションも用意しており,2つの別々のグラフィックス・チップで駆動される面白いデュアル・ディスプレイ・システムが実現できる。それらは現在では4GバイトのRAMをサポートするが,2GバイトのDIMM(デュアル・インライン・メモリー・モジュール)が入手できるようになれば,8GバイトのRAMをサポートできる。びっくり仰天だ。

 メモリーの余裕は別にして,なぜ今の時点でx64を買うのだろうか? HPは私に,その値段は32ビットのIntelベースのシステムと同じだから,システムの寿命を考えればx64 PCはバーゲンみたいなものだと言った。そしてHPは,これらのシステムをフルにサポートする。互換性のあるドライバのフルセットが入手でき,常にアップデートされるように保証する。それによって,現在の64ビット・システムに関する大きな懸念をなくそうと努力している。

 DellはIntelのお得意さんなので,Intelのロードマップ(デスクトップ用プロセッサよりも先にサーバー用のチップを提供するというもの)に合わせたシステムを売り込んでいた。Dellは私に,パワフルで静かなDell Precision 670ワークステーションを見せてくれた。これは3.6GHzの64ビットXeonプロセッサを搭載し,16GバイトまでのRAMをサポートし,大量のストレージを積んだものだ。多くのDellのシステムと同様に,Precision 670の内部はきれいでコンポーネントにアクセスしやすい実装のお手本みたいなもので,同社が優位を続ける特徴でもある。  Dellが私に語ったのは,ワークステーション市場がXP Pro x64を求めてうずうずしているので,同社は32ビットOSよりもはるかに多くのメモリーを使えるシステムの能力を活用するという。同社は18社の異なるISV(独立系ソフトウエア・ベンダー)が,XP Pro x64用に特別に設計された34種類の64ビット・アプリケーションを準備中であるという。そしてこれらのアプリケーションはデジタル・コンテンツ作成,CAD,ソフトウエア開発,さらにほかの関連業界の市場を狙っていると語った。

 私はさらにAvid Technologyの「SOFTIMAGE/XSI」の印象深いデモも見た。このソフトウエア・パッケージは,実質的にすべてのハリウッドの映画会社が,写真品質のデジタル・アニメーションを作るために使っているものである。George LucasとIndustrial Light and Magic(ILM)は,「Star Wars Episode III, The Revenge of the Sith」の製作中にSOFTIMAGE/XSIを大々的に利用した。

まずサーバーからx64になる
 Microsoftの話に戻ると,同社の様々な代表者が自分たちの信じているところをくり返し語っていた。つまり,2005年はx64がメインストリームのサーバー・プラットフォームになるが,クライアントの移行は2007年末まで終わらないだろう,ということだ。Microsoftはそのサーバー製品で,全面的にx64をサポートしようとしている。同社は2005年末までにはx64上で自社の全サーバー製品をサポートする予定だ(つまりほとんどの製品は32ビット・オンリーのままだが,x64システム上で動作することが保証されるだろう)。その後に同社は2006年末までに,サーバー製品のすべてをネイティブのx64版に移植するつもりだ。32ビット版とMicrosoftがその後にリリースする64ビット版の製品が混在する期間は,顧客の要求が決めることだが,時間がたつにつれて同社は32ビット版のサーバー製品をフェーズアウトさせるだろう。

 x64のMicrosoftの社内利用も印象的である。同社は最近,Microsoft.comのサーバーを,Active Server Pages(ASP)やASP.NETのコードのただ1行も変えずに,すべてx64プラットフォームに移行させた。それに加えて同社はすぐに性能と信頼性の向上という成果を手にした。MSNでは,MicrosoftはMSN Messengerサーバーのファームをx64に移行させ,250台必要だったサーバーの数を30台以下に減らした。明らかにサーバー統合の勝利である。それらのシステムは,常時世界中から来る7000万以上の同時接続を処理している。

メモリー増量でドメイン・コントローラの統合が進む
 Active Directory(AD)もx64で大きな恩恵をこうむるだろう。x64ベースのサーバーは膨大な量のRAMをサポートできるから,ADデータベース全体をメモリー内でホストできるので,クライアントのアクセスを劇的に高速化する。より小規模なハードウエアで同じレベルの性能を維持できることから,将来のサーバー統合のシナリオを考える余裕も出てくる。

 絶対的な最高レベルの拡張性と性能を必要としない限り,言い換えればItaniumが少なくとも数年は支配し続けるだろう領域に踏み込む必要がない限り,x64プラットフォームはアップグレードを考える時には明らかな選択肢になる。

 Microsoftが私に語ったところによれば,x64は32ビットWindowsの後継者になる。そしてあらゆるビジネスがx64に移行するのは時間の問題だ。あなたにそれが起きるかどうかは,あなたの都合次第である。しかしミスをしないこと。x64の時代は今始まったのだ。

Windows IT Pro, (C)2005. Penton Media, Inc.