日本医師会は2001年11月20日,現在試験運用中の診療報酬明細計算システムORCA(仮称)のソフトウエアをオープン・ソース・ソフトウエアとして2002年1月に公開すると発表した。ORCAは,OSにLinuxを使用するなど,ほとんどを無償のオープン・ソース・ソフトウエアで開発したシステム。日本医師会が開発し,ソフトウエアを無償で配布する。現在47都道府県の104医療機関で実証実験を進めており,2002年3月に本運用開始を目指している。

 日本医師会によれば,メーカー製の診療報酬明細計算システム(レセプト・コンピュータ)が350万~500万円であるのに比べ,ORCAを使用すればハードウエア代として50万~150万円程度をかけるだけで同等のシステムが構築できるという。「日本医師会としての医療改革として,全力を挙げて推進したい」(日本医師会 副会長 糸氏英吉氏)。狙いはコスト・ダウンだけではない。ORCAはネットワーク機能を備えるため,将来的にはORCAを導入した全国の医療機関をつなぎ,電子カルテの情報交換の基盤などとしてIT化による医療の効率化,高度化へつなげたいという。

 今回,ORCAの開発のために,Linux上で動作する,クラスタ機能を備えたトランザクション管理モニター(TPモニター)・ソフトウエアMONTSUQI(開発コード名panda)を開発し,それ自体もオープン・ソース・ソフトウエアとして公開する。「ORCAの標準構成はサーバーとクライアント兼用のマシン2台だが,どちらかに障害が発生しても,TPモニターのクラスタ機能によってデータは保護される」(TPモニターを含めORCAの基盤部分を開発したネットワーク応用通信研究所 取締役 生越昌己氏)。

 アプリケーション・ロジックはCOBOLで開発した。現在,ドット研究所が開発した商用のCOBOLコンパイラであるdot COBOLを使用しているが,日本医師会はORCAを完全に無償にすることを目標としており,ソース・コード公開までにオープン・ソースのCOBOLコンパイラに置き換える方針。そのため,TinyCOBOLと呼ばれるオープン・ソースのCOBOLコンパイラをベースに,OpenCOBOLというCOBOLコンパイラを,ネットワーク応用通信研究所の開発スタッフが中心となってオープン・ソース・ソフトウエアとして開発している。

 RDBMSとしてはオープン・ソース・ソフトウエアであるPostgreSQLを採用している。ただし「RDBMSに依存しない形になっており,ドライバ・ソフトウエアを開発すれば他のRDBMSも使用できる」(生越氏)。帳票は,オープン・ソースの描画ツールDiaを使ってデザインし,そのXMLにアプリケーション・データを埋め込んで印刷する。各医療機関と日本医師会が運営するセンター・サーバーを結ぶネットワーク上のプロトコルは,セキュリティ確保などのため,IPv6を採用する。

 ORCAは基本的には無償だが,「日医オープンソース使用許諾契約」という,LinuxなどでのライセンスGPL(GNU Public License)をベースにしたライセンス下で配布する。ライセンスを変更しない,ソース・コードを入手できるようにするなどの条件を守れば,システム・インテグレータなどはORCAのプログラムを改良したり有償でサービスを提供したりできる。日本医師会は,オープン・ソース化により,多くのインテグレータがプログラムを改良し,ORCAの品質が向上すると期待している。一般的なオープン・ソース・ライセンスと大きく異なるのは,診療報酬などのマスター・データの取り扱いである。健康や治療への悪影響を避けるため,マスター・データについては,改変して再配布することを禁じている。

高橋 信頼=日経オープンシステム)