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 あんまんや肉まんで知られる井村屋製菓を取材した。同社は2004年3月期に会社設立以来、初めてとなる赤字に陥った。直接の原因は、大口の取引先であった冷菓卸の倒産と冷夏によるアイスクリームの売り上げの極端な落ち込みであった。

 2003年6月に就任したばかりであった浅田剛夫社長は、「ショック療法になった」と赤字決算を振り返る。そして大幅な改革に着手しようとしている。在庫削減を目的としたサプライチェーン・マネジメント(SCM)の導入や商品ジャンルごとに開発、営業、生産、物流を分けるユニット制への移行などだ。

 IT投資に関しては、井村屋流のSCMを意味する「ISCM」というシステムの確立に向けて全社一丸となっている。ただ、浅田社長はITシステムを導入しつつも、「やっているのは(アナログな)企業風土改革だ」と話す。

 井村屋製菓は伝統的に生産が営業より強い力を持ってきた。その証拠に井村屋にはこれまで「発注」という言葉があまり使われなかったという。代わりにあったのが「補給」という言葉だ。「営業が工場に商品を発注する」ことはなく、「工場が製品を営業へ補給する」のが当たり前だったからだ。自然に営業部隊は顧客のニーズではなく、社内の生産部隊を向いて仕事をすることが多かったという。

 浅田社長は、本社勤務の経験がないまま役員になったという珍しいキャリアの持ち主だ。同社の外食部門であるレストランチェーン「アンナミラーズ」の立ち上げに携わるなど常に本社を外から見てきた。「ITというテクノロジーを使って社員の意識改革を促して、こうした企業風土そのものを変えたい」と意欲を見せる。


上木 貴博=日経情報ストラテジー)


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