■事前調査に約1年、本番さながらのトライアルも実施

 アウトソーシングの実施については、全くの初めてということもあり、約1年の準備期間を設けて慎重に進めていった。まずは2001年5月に総務事務の業務調査を開始。その後マニュアルを作成し、さらにトライアル実施をしてマニュアルを修正していった(別表参照)。そして、2002年4月に出納局に「総務事務センター」を設立、集中化とアウトソーシングの本番を迎えたのである。

■総務事務センター事務手続き

2001年
5月
業務調査実施

業務量、発生頻度、システムの状況などをヒアリング調査
7月
業務フロー検討
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集中化・アウトソーシングに向けて、業務フローを再構築
9月
マニュアル作成


外注スタッフ用マニュアルを作成。業務規定、フロー、用語などを修正
12月


トライアル実施

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新しい業務フロー、マニュアルに沿って、いくつかの部署でトライアル(マニュアルの修正、適正人数、外注スタッフにとっての業務の難易度などを検証)
2002年 3月

※トライアル実施部署では、実際の業務処理とは別に、集中化後と同じプロセスでも伝票を流して実験
※旅費システムは新システム稼働前だったため、旧システムでトライアル
4月
総務事務センターによる総務事務集中化/アウトソーシングがスタート

 この調査を委託する業者を決めるために、行政改革室では、2000年秋に入札を行った。「我々も全く初めてのことなので、まずは、どのような形で調査ができるのか、静岡市内で人材派遣の免許を持つ約40社に声を掛け、提案してもらいました」(八木氏)。その中から、実際に人材を派遣してトライアル・検証し、アウトソーシングの本番では少人数から徐々に業務委託の範囲を増やしていくという、パソナのプランを採用した。

 この事前調査の段階で最も難しかったのは、複雑な自治体業務を外注スタッフにも理解できるようなマニュアルに“翻訳”して落としこむ作業だったという。自治体の旅費や手当の規定は、「公金という性質上、民間の企業に比べて、かなり細かいと思います。実際、民間企業数社に伺いましたが、ここまでは細かくないんです」(八木氏)。

 また、会計事務をやっていた経験がある人でも、民間企業と自治体では用語や規則が異なるため、即座には対応できないことも多いという。逆に言えば、県の職員でなくても本当に業務を代行できるのかは、派遣業者に判断してもらわなくてはならないということだ。そのための調査だった。

 万全を期すため、ヒアリング調査だけでなく、2001年12月からはトライアルを実施した。これは、実際に一室を設けて、パソナから派遣された外注スタッフが常駐して作業を約3カ月間試行するというものだ。いくつかの部署に協力を仰ぎ、実際の伝票処理とは別に集中化移行後の本番と同じテスト環境を作って伝票の流れをチェックし、集中化業務の適性人数を実地検証した。この段階では、同時に業務マニュアルの修正も手がけている。

 一方、パソナはトライアル期間中に「スーパーバイザー」(派遣スタッフに業務の指示を出す担当者)候補の育成を行った。業務委託契約の場合、同じ場所(県庁にある総務事務センター)で働いているとはいえ、法律上、外注スタッフに県職員が直接業務の指示を出すことができない。このため、派遣会社サイドで、ある程度業務全般に精通したスーパーバイザーを育てる必要があったわけだ。

 なお静岡県では、調査だけでなく、その後の本番でのアウトソーシング業務委託についてもパソナに発注している。一般に自治体では調査と実際の運用は別の企業に発注することが多い。にもかかわらず今回、調査・業務委託ともにパソナに発注したのは、現実問題として「なにぶん初めての事務だったので、(マニュアル作成やトライアルを通じて)実際にこの仕事ができるノウハウを持っているところにお願いしました」(八木氏)という選択だったという。パソナの営業企画室長である松原浩幸氏は、「建築物なら設計と施工を分けることができるが、人の運用ともなると現実問題として業者を分けるのは難しいのではないか」と分析する。