ICタグのブレークは来年

 自戒の念を込めて言う。新聞や雑誌でICタグの話題を目にする機会は増えたが,新たな動きだけを散発的に報道する傾向があった。加えて,新聞や雑誌の報道内容のほとんどは国内外の標準化動向や実証実験,プライバシ問題などに偏っていた。

 結果として,ICタグを導入するうえで本当に必要な情報はいまだに不足している状態だ。これがICタグを巡る誤解や認識のズレを招いている。それを解消しないまま導入に踏み切れば,中断や白紙撤回を余儀なくされるプロジェクトが出てくる可能性がある。

 そうならないためにも標準化動向やプライバシ問題に加えて,ICタグの技術特性や実用化動向を改めて整理し,正しく理解する必要がある。上掲のICタグ特集は,その一助になればとの思いで,まとめたものだ。

 日経コンピュータはICタグ特集に合わせて「無線ICタグ・システム調査2004」を実施した。その結果,興味深いデータがいくつか得られた。その一つに,国内におけるICタグの実用化元年が来年であることを裏付けるデータがある。

 調査では,ICタグに興味がある国内のユーザー約1360人に現在の取り組み状況と実用化の展望を聞いた。すると,回答したユーザーの40%以上が既に実験に着手したり,実験の準備を始めたと回答。そのうち約80%が2005年までに実用化に踏み切るとした。

 海外では米ウォルマート・ストアーズや米国防総省が来年1月をメドに,物流管理の分野でICタグを使い始める(関連記事1関連記事2)。これを受けて,「松下電器産業やソニー,三洋電機が水面下でICタグの導入に取り組み始めた」(業界関係者)。ICタグは来年,世界中で本格的にブレークする。

 「自分の仕事にICタグは関係ない」「特に興味がない」という人もいるだろう。しかし,ICタグが普及すると当然,情報システム側の対応も必要になる。誰かに入れ知恵された経営陣や上司が「うちはICタグをやらなくていいのか」と,ある日突然言ってくるかもしれない。いまのうちに,すべてのITプロフェッショナルの方にICタグに関する正しい知識を持ち,誤解や認識のズレをなくしておいていただきたいと思っている。

(栗原 雅=日経コンピュータ)

■冒頭の質問に対する回答
質問1ICタグとバーコードは何が違う?
複数個を一括で読んだり,いったん書き込んだ情報を追加・変更できる点が,ICタグとバーコードの最大の違い。
質問2ICタグはリーダーとどのようにデータをやり取りする?
電源を持たないICタグの場合,リーダーが発する電波から電力を得て,無線通信でデータを送受信する。
質問3ICタグの単価はいくら?
シール状のICタグで50~100円,樹脂加工したカード状のもので200~300円が相場。
質問4今後はUHF帯ICタグが本命になる?
UHF帯ICタグだけでなく,13.56MHzや2.45GHzを用途によって使い分けることになる。無線ICタグ・システム調査2004に回答したユーザーの60%以上がUHF帯ICタグを使うが,そのうちの半数以上は13.56MHzと2.45GHzを併用すると回答した。
質問5ICタグに寿命はある? あるなら何年?
電源を持たないICタグは半永久的に使える。ただし,チップとアンテナの接合部分が壊れると使えなくなる。
質問6ICタグは何個単位で購入できる?
ベンダーとの交渉次第で変わるが,少なくとも1000個単位というのがICタグ購入の実態。
質問7システム構築費用は一般的なシステムと,どの程度違う?
ハードやソフトを除く開発費だけで見た場合,ICタグ・システムの構築には一般的なシステムの2~3割増しの費用がかかる。