こうしたレビュー批判に対し,レビューを効果的に実施しているユーザー企業は「やるだけムダというのは,やり方が悪いからだ」と反論する。

 確かに,それこそやるだけ時間のムダといえるような形骸化したレビューの話は,けっこう多い。「要件定義でシステムの作り手がITの専門用語を多用し,システムの使い手が仕様の誤解に気づかなかった」「システム部門が詳細設計書をITベンダーに渡したところ,ITベンダーから段ボール箱10箱のソースコードが届いた。すべてをチェックできず,承認のハンコを押したら,後で大量の実装漏れが見つかった」「進捗が遅れているからと,レビュー自体を丸ごと省略したら,手戻りでさらに進捗が遅れた」。こんな話はザラに転がっている。

 では,効果的なレビューとはどういうものなのか。参考になるのが,三井生命保険の取り組みである。同社はシステム用語でなく業務の言葉で詳細設計書を書き,システムの作り手と使い手が1ページずつ読み合わせて中身を確認していく作業を必ず実施する。

 圧巻は,2年前に稼働した基幹系システムの再構築プロジェクトでのレビューだ。17万ページに及ぶ詳細設計書を1ページずつ確認する作業を貫いた。ほとんどすべてのページに最低一度は修正が入った。当然時間がかかり,プロジェクトの進捗は一時的に2カ月遅れた。それでも愚直にレビューを続けたところ,実装やテストでの手戻りが減り,結果的に同社はスケジュールどおりに新システムを稼働できた。

 同社のシステム担当者は,「進捗がどんなに遅れても,レビューを省略することは絶対にない」と断言する。「システム開発プロジェクトは,急がば回れ。焦ってレビューをないがしろにしては,さらに事態は悪化する」と続ける。

 「レビューは,当事者であれば気づきにくいミスや誤解を,第三者が指摘できる絶好の機会」。レビュー強化活動を実施している東京海上火災保険のシステム担当者は,レビューが果たす気づきの機会を提供する場として有効であると説く。品質管理に最も積極的なITベンダーの1社であるCSKの有賀貞一副会長は,「ソフトウエアの品質を強化するためにレビューを実施するのは当たり前。レビューの徹底が,赤字プロジェクトを減らし,収益向上につながる」と話す。

 レビューと言うと,どうしても管理・検閲といったイメージが強く,システム担当者は面倒くさがったり,反発しがちだ。悩みや問題を正直に報告しないこともある。だが,レビューの実施で手戻りがなくなれば,プロジェクトの追い込みで土日返上,徹夜の激務を強いられるシステム担当者にもプラスになるはずである。大手ITベンダーで難関プロジェクトを数々こなした経験を持つ,コンサルタント会社ウィンアンドウィンの近藤哲生代表取締役は,「レビューには,参加者が正直に問題を打ち明けることができるような雰囲気作りが欠かせない」と話す。

 トラブルのもぐらたたきを続けるだけでは,失敗プロジェクトは撲滅しない。システム開発で苦しむユーザー企業やITベンダーは,改めてレビューを見直してみるべきであると筆者は考える。

(大和田 尚孝=日経コンピュータ)