各社の証言を総合すると,反対の先頭に立つのはユーザー企業のシステム子会社。「メインフレームをなくすと子会社の売り上げが減りかねない」というのが,その理由という。子会社のメインフレーム技術者が「オープン化で自らの居場所がなくなるのではないか」と心配することも影響している。

 ユーザー企業のシステム部門にも,反対派は少なくない。マイグレーションは未知の作業だけに,万が一失敗したときの責任を取るのが怖いといったことが原因だ。

 それでも経営層が「システム部門はITコストを減らす手段を講じろ」と半ば強引に押し切れば,マイグレーションの道は開ける。ところが経営層やユーザー部門にも,マイグレーション反対派は少なくないという。「機能が変わらないのにコストかかるのおかしい」とマイグレーションにかかる一時費用の支出を理解してくれない経営層や,「システム部門主導で実施するのは構わないが,機能強化など目に見えるメリットがない限り費用は負担できない」と突っぱねるユーザー部門がそれだ。

効果は大きいが反対も多い,それがマイグレーション

 コスト削減効果は高いが,社内外に反対勢力が多い。仮にうまくいっても,ITベンダーが宣伝したがらず事例として世に出にくい。これが記者が見たレガシー・マイグレーションの実態である。

 これは余りにももったいない。少なくない数の企業が,マイグレーションに成功し,効果を挙げているからだ。そこで日経コンピュータ6月28日号特集で「さらば,レガシー」と題する特集を執筆した(概要)。日経コンピュータとしては久々にCOBOLのソース・コードまで掲載し,各社の事例を紹介した。

 例えば,住友スリーエムは再構築の半額近い費用でマイグレーションをやり抜いた。文具大手プラスの子会社であるジョインテックスは,レガシー・システムの棚卸しとマイグレーションを断行。プログラム資産480万ステップの4割を捨て,システムの維持コストを半減させた。中華調味料最大手のユウキ食品は,COBOLプログラム800本とJCL(ジョブ制御言語)400本をそれぞれ半減させ,年間1500万円以上のコスト削減効果を得た。ダイキン工業は,空調機の生産管理システムでマイグレーションを成功させたのを皮切りに,現在は経理や人事などの業務系プログラム1万数千本をマイグレーションしている真っ最中だ。

 レガシー・マイグレーションを巡っては,「既存のアプリケーションを流用するのは単なる問題の先送りでしかない。肥大化したアプリケーションを解体しなければ,レガシー・システムの根本的な解決にならない」との指摘もある。

 確かにこれは正論である。だが,現実解とは言い難いのではないか。今なおメインフレーム/オフコンに残るレガシーは,オープン系への移行が長年見送られてきたシステムにほかならない。「業務の独自性が強く再構築が難しい」とか,「業務は稼働時からあまり変わっていないので,再構築の必要がない」と判断されたシステムが,メインフレームやオフコンの上で動き続けている。予算やリスクの面で再構築できないシステムの維持コストをどう下げていくか。この答えが,レガシー・マイグレーションなのである。

 であれば,オープン系サーバーに比べて競争が少なく割高感が強いメインフレームやオフコン,高止まりしている専用OSや専用ミドルウエアのライセンス料/保守サポート料を下げるだけでも,効果はある――。白状すると前職時代,レガシー・システムのお守りをしていた記者はこう考える。

難敵レガシーは,2段階で攻めるべき

 別の言い方をすると,レガシー・マイグレーションは2段階でレガシー・システムから脱却する作戦である。まず,メインフレームをなくして,ハードウエアや専用ソフトの利用料を下げる。その際,複雑なアプリケーションは極力いじらずに移行する。ただし,棚卸しなどで不要なアプリケーション資産は捨てて極力スリム化する。その次に,経営戦略に基づく業務改革のタイミングで,業務アプリケーションを再構築したり,ERPパッケージ(統合業務パッケージ)を導入する。手間はかかるかもしれないが,この2段階方式がレガシー・システムに別れを告げる有力な選択肢の一つであることは断言してよい。

 もちろんすべてのレガシー・システムがマイグレーションに向くわけではない。業務を変える必要がある場合は,難易度やシステムの規模にかかわらず再構築せざるを得ない。ただ,すぐに業務が変わるのでなければ,マイグレーションは十分検討に値する。

 古いシステムの扱いに悩むユーザー企業は,ぜひレガシー・マイグレーションを前向きに検討してほしい。その手助けとして,日経コンピュータはレガシー・マイグレーションを成功させたユーザー企業3社の担当者に,実体験を語っていただくセミナーを開催することにした。日時は少しはすごしやすくなっているはずの8月30日(月)。参加をお待ちしている。

(大和田 尚孝=日経コンピュータ)