第2回 北東アジア
OSS推進フォーラム
 「日中韓のオープンソース協力計画は順調に着実に進展している」――7月28日,札幌市で「第2回 北東アジアOSS推進フォーラム」が開催された。日本,中国,韓国,3国の政府やオープンソース推進団体の代表が,オープンソース・ソフトウエアの活用状況や,オープンソース推進活動の報告を行い,日中韓の協力計画は順調であることを強調した。

 2004年4月に北京で開催された前回の「第1回 北東アジアOSS推進フォーラム」で,日本,中国,韓国政府のIT担当局長が,オープンソース・ソフトウエアの推進に関する合意(参考資料)に調印した。一部ではOSの共同開発という報道もあったが,実際に中心となるのは普及のための環境整備や共同での標準化である(関連記事)。

中国はLinux標準案をすでに作成

中国OSS推進連盟
陳冲氏
 基調講演を行った中国OSS推進連盟 専門家委員会主任 陳冲氏は,中国でのLinux普及状況を紹介。2003年の第3四半期と第4四半期だけで,中国では81万7458セットのLinuxデスクトップが出荷されたと報告した。市場規模は2004年で9931万人民元,2008年には4億5130万人民元になると予測する。

 中国 信息産業部電子信息産品管理司 丁文武(Ding Wenwu)氏は,「4月の合意のもとでの協力は着々と進行中で,効果を挙げている」と述べた。例えば,「OSS,特にLinuxにかかわる人材育成に関して協力する」という点に関しては,35の大学のソフトウエア専攻と35の職業訓練校でLinuxを必須教科とするトライアルを実施した。その他の合意についても施策を実施しているという。

 「Linux,文字コード,文書交換フォーマットなどの標準化に関して協力し,中国,日本,韓国の各国言語に対するLinuxのサポートを強化する」という合意に関しては,Linux標準化ワーキング・グループにおいて,すでにLinux標準案を作成した。日本側の担当者によれば,標準案は200ページ程度ので,内容はユーザー・インタフェースやAPIなどから,「標準仕様というより,調達基準のようなものもあった」という。現在,日中韓の担当者により,内容について協議中である。

日本では9月から学校でのLinuxデスクトップ実証実験を開始

日本OSS推進フォーラム
桑原洋氏
 日本OSS推進フォーラム 代表幹事として基調講演に立った日立製作所 取締役の桑原洋氏は,開発基盤,デスクトップ,サポートインフラ,ビジネス推進の4つのワーキング・グループなどによる日本OSS推進フォーラムの活動を紹介。2003年のサーバー市場でのシェアは3.9%,2004年には12%となりUNIXを追い抜くというIDCの予測を紹介。Linux普及のための用件としてユーザーが安心できる環境の整備や人材育成の重要性などをあげた。

 総務省は2003年度にセキュアOSに関する調査研究を行っているが(関連記事),登壇した総務省 松井英生 大臣官房審議官は,来年度にもOSの評価のための予算申請を準備中であることを明らかにした。

 また,デスクトップ・ワーキング・グループの活動報告を行った日本IBM Linux事業部長 水橋久人は,ワールドワイドでLinuxデスクトップはMacOSを抜き去ったという米IDCの調査結果を紹介。9月から,日本の学校にLinuxパソコン約500台を無償で貸与し,教育現場で使用するための実証実験を行う計画を紹介した。

韓国サーバー市場のLinuxシェアは9.45%

韓国OSS推進フォーラム会長
イー・ヨンテ氏
 韓国OSS推進フォーラム会長であるTriGemコンピュータ 名誉会長イー・ヨンテ氏は「まだUNIXに比べればLinuxはあまり使われていない」とし,“Linuxが使われない理由”について言及した。Linuxが使われない理由として,ユーザーに信頼性やセキュリティに対する不安があると指摘し,これらについて調査し,正しい情報を広める必要があると訴えた。

 また韓国ソフトウェア振興院(KIPA) ヤン・ソンハ 副理事長は,韓国ではUNIX,Windowsが高いシェアを持つものの,Linuxサーバーの出荷台数シェアは2001年の4.86%から2003年の9.45%へと拡大しているというIDCの調査結果を紹介。また韓国でのOSS推進フォーラムの活動なども紹介した。

 また3国は,各国の活動をより密接に連動させるため,日中韓共同でのワーキング・グループを設けることで合意した。

(高橋 信頼=IT Pro)

◎参考資料

2004年4月3日 日中韓IT局長による政府間合意10項目(日本語訳)

1. OSS,特にLinuxの開発利用のために望ましい政策環境を創る。
2. Linux,文字コード,文書交換フォーマットなどの標準化に関して協力し,中国,日本,韓国の各国言語に対するLinuxのサポートを強化する。
3. 中国,日本,韓国におけるOSSベースのデスクトップ用Linux,サーバー用Linux,およびオフィス用ソフトの研究開発,商用化および利用を促進する。
4. PDA,デジタルカメラなどのデジタル機器(コンピュータ,通信機器および消費家電)における組込Linuxの共同研究およびその利用を促進する。
5. 電子政府,企業情報システムおよび遠隔教育などの分野におけるLinuxの利用を促進する。
6. 「Linux公共サービス・プラットフォーム」(または「ソフトウエア産業促進センター」あるいは「エンジニアリングハウス」)の設置のような形で,中小企業を支援する最善の方法について共同で研究する。
7. より多くのハードウエア/ソフトウエア・ベンダーによるLinuxのサポートを促すため,Linux向けのソフトウエアの認証および適合性検証を研究する。
8. OSSのグローバル・コミュニティに対し,中国,日本,および韓国がいっそうの貢献をするべく,北東アジアOSS推進フォーラムを設立する。
9. OSS,特にLinuxにかかわる人材育成に関して協力する。
10. 競争政策のようなソフトウエア産業にかかわる関連施策について研究し,情報交換を行う。