大手企業を中心に、コーポレートサイトや販促サイトでは動画の配信が目立つようになってきた。消費財メーカーや小売業にとどまらず、産業機械やゼネコンなど幅広い業種で、Webサイトに何本もの動画を用意して製品・サービスを紹介している。

 動画による情報伝達量や表現力は、文字や画像だけのWebページを上回る。動画の制作にはコストが掛かるが、それだけ訴求力が強いとみなしているのだろう。

 さらに、日常生活でも仕事でも、日ごろからスマートフォンなどでネット配信された動画を見ることが習慣化してきた。このことも、企業が配信する動画が増えている要因の一つになっている。

 クラウドでも、動画配信サービスが充実してきている。その代表格といえるのが、今回取り上げる「Azure Media Services」だ。一般提供が始まったのは2013年1月。それ以来、性能や機能を拡充し、進化してきた。一般企業向けの小規模な動画配信システムから、ネット配信事業者向けの大規模システムまでのニーズに応えるサービスである。

 本稿では、コーポレートサイトや販促サイトにおいて数本から数十本の短い動画を配信する、という小規模な動画配信システムの構築を前提に、Media Servicesを解説・検証する。

 最初に、Media Servicesがどんなサービスであるかを簡単に説明しよう。

 Media Servicesの特徴は動画配信に必要な機能をオールインワンで提供することだ。それは、動画配信の最低限の機能だけを持つAzure Blob StorageやApp Service Web Appsと比較すると分かりやすい(表1)。

表1 BlobやWeb Appsによる動画配信との機能比較
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 実はAzureでは、Blob StorageやWeb Appsに動画ファイルを保存するだけでも、動画配信が可能だ。その際に利用できる機能は、動画ファイルを格納するストレージ、世界中に配置されたキャッシュサーバーであるCDN(Content Delivery Network)、配信の三つだけだ。

 これに対してMedia Servicesは、ストレージ、CDN、配信に加えて、動画ファイルのエンコード(コード変換の意味で、トランスコードとも言う)、AI(人工知能)による動画の分析・加工、動画ファイルを保護するDRM(Digital Rights Management)の機能が使える。

 多機能だが、使い方はシンプルだ。基本的なシステム構成では、図1のようにWebサーバーとMedia Servicesを組み合わせる。

図1 WebサーバーとAzure Media Servicesの関係
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 あらかじめMedia Servicesにソースの動画ファイルを投入すると、それを基にして、スマートフォンやPC向けに複数の形式の動画ファイルを生成したうえで、CDNに引き渡しアクセス先のURLを発行する。動画配信システムの管理者は、そのURLをWebサーバーのページに埋め込む。

 あとは動画の視聴者であるユーザーがWebサーバーにアクセスし、動画へのリンクをクリックすると、CDNから動画が配信される、という具合だ。

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