近年、オンプレミス(自社所有)環境からAWSへのプラットフォーム移行が急速に増加している。本稿では、基礎知識として一般的な移行の方式や工程を説明したうえで、対応するAWSのサービスを解説する。

 まず移行の方式は、細かく分類すると10種類ほどあるが、代表的なのはリホスト、リライト、リビルド、BPRという4方式だろう。これらの違いは、システムをどのレベルまで再構築するかにある(表1)。

表1 四つある移行方式
今回はリホストを前提に解説する
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 リホストはインフラを新しいものに置き換えるだけ。リライトはソフトウエア仕様はそのままにソフトウエアを最新化する。リビルドは、業務仕様はそのままでシステムを再構築する。最後のBPR方式は、ビジネスプロセスを含め全て設計し直す。

 オンプレミス環境のシステムをクラウドに初めて移行する際は、リホストで検討するのがよい。リホストは他の方式に比べ、期間、コストとも最小である。

 クラウドに移行すれば、システムを複製して複数の環境を構築するのが容易なため、最適化のための改修などをしやすい。そのうえで順次最適化していくことが望ましい。

 AWSの移行支援サービスはリホストを前提としており、本稿でもリホストによる移行をテーマとする。

 続いて、移行プロセスについて説明する。移行プロセスは、計画段階の「調査」「分析・設計」、実行段階の「変換」「テスト・移行」、運用段階の「運用」「最適化」という六つのフェーズで構成される。

 本稿では、これらのうち「調査」「分析・設計」「変換」「テスト・移行」の4フェーズを扱う。参考までに、それら4フェーズの主な工程とタスクを表2に示す。

表2 移行プロセスのフェーズ、工程、タスク
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 移行対象はデータ、サーバー、データベースの三つに分類できる。データは、サーバーイメージと一体ではなく、分けて移行する場合がある。データベースについては、初期移行、差分移行と複数回に分けて行うことが多い。

 理由は、データ転送に長い時間を要するためだ。例えば100Mbpsのネットワークであれば、10TBのデータを送るのに12日以上掛かる(ネットワークの使用効率を80%とした場合)。1Gbpsのネットワークでも28時間30分だ。100TBのデータになると、その10倍の時間を要する。

 移行時のデータ転送作業は綿密に計画する必要がある。

移行元のオンプレ環境を調査

 AWSが提供する移行支援サービスはどのようなものがあるのか。「調査」「分析・設計」と「変換」「テスト・移行」のフェーズに分けて見ていこう。

 「調査」「分析・設計」フェーズについては、AWS Migration Hubに付随するApplication Discovery Serviceが役に立つ。

 Application Discovery Serviceは、オンプレミスのVMware環境を調査するものだ。

 仮想マシンにエージェントをインストールする「エージェント型」と、vCenter Serverホストに仮想アプライアンスをデプロイする「エージェントレス型」から選択できる。インストールされているソフトウエアを含めた調査が必要な場合は、エージェント型を利用する。

 Migration Hubは後述するAWS SMS(Server Migration Service)やAWS DMS(Database Migration Service)と連携させて、移行状況を可視化するサービスだ。米ATADATAの「ATAmotion」、米CloudEndureの「CloudEndure Live Migration」といったサードパーティーの移行支援ツールと統合することも可能である。

 なお2018年4月時点で、Migration Hubは米オレゴンリージョンのみで提供されているが、他リージョンのリソースにアクセスできるので実用上は問題ない。

 AWSは移行計画のベストプラクティスを「AWS Cloud Adoption Framework」というドキュメントとして提供している。移行前に参照することを勧める。

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