米Googleが提供する、IaaSおよびPaaSのクラウドサービス「Google Cloud Platform(GCP)」。興味を持っている読者は多いかもしれないが、既に使っているという人は少数派だろう。クラウドサービスのシェアでは、日本国内でも世界でもAWSとAzureの後塵を拝する。

 しかし2017年ごろから、企業情報システムへのGCP導入を検討するユーザー企業が増えている。客観的なデータがあるわけではないが、GCPを使うシステム構築に携わってきた筆者の実感だ。

 GCPは技術力を武器に、近い将来AWSとAzureの2強体制に割って入る可能性もあると思う。AWS、Azureのユーザー企業にとって、GCPは理解しておく価値の高いクラウドサービスといえる。

 本連載では、主にAWSと対比させながら、GCPの設計思想や主要サービスを基本から解説していく。

 今回は、GCPのルーツをひもとき、なぜ最近になって注目を集め始めたのか、という理由を探る。さらにAWSやAzureと比べた、GCPの特徴を説明する。

PaaSから始まりIaaSを拡充

 GCPのルーツは、2008年に登場したGAE(Google App Engine)にさかのぼる。GAEはアプリケーション実行環境のPaaSで、現在はGCPのサービスの一つになっている。

 GoogleのIaaSであるGoogle Compute Engine(GCE)の正式リリースは、5年後の2013年まで待たなければならない。GCEも現在はGCPのサービスの一つである。

 この経緯からも分かるように、GCPはもともとPaaSを志向しており、IaaSをあとで拡充させてきた。2013年の仮想プライベートネットワーク「VPC」、2016年の日本国内で初となる「東京GCPリージョン」、2017年のオンプレミス(自社所有)環境とGCPの仮想プライベートネットワークを結ぶ専用線接続サービス「Dedicated Interconnect」といった具合に、企業情報システムの必須要件になるサービスを順次追加している(図1)。

図1 GCPが、企業情報システムで必須要件となるIaaSのサービスを拡充してきた経緯
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 ユーザー企業にとって、ようやく企業情報システムにGCPを適用できる基本条件が整った。これが、GCPが注目を集めるようになった要因の一つといえる。

 仮想マシンを使わない基盤構成にして運用保守の負担を減らす「サーバーレス化」が叫ばれ、クラウドの先行ユーザー企業でPaaS導入が進んでいることも大きい。

 PaaSはIaaSより導入のハードルが高いとみなされるケースが多い。特に、従来のオンプレミス環境からクラウドへの移行に際して、アプリケーションを修正したくないという意識が強い。そのため、PaaS志向のGCPは敬遠されてきたきらいがある。

 しかしサーバーレス化の機運が生まれ、GCPがかねて志向してきたPaaSが今は強みになっている。

 さらに、GCPの追い風となっているのが、AI(人工知能)や機械学習の盛り上がりである。プロ棋士に勝った囲碁AIのAlphaGo、Google フォトの画像認識機能、関連企業の米Waymoによる自動運転車をはじめとして、GoogleはAI/機械学習の技術力で大きな存在感を示す。

 それは偶然ではない。GoogleはAI/機械学習を最重点分野の一つと位置付けている。

 2016年にGoogleのサンダー・ピチャイCEO(最高経営責任者)は「モバイルファーストからAIファースト」の方向性を打ち出した。2017年には、GoogleでAIの研究開発を主導するフェイフェイ・リー氏が「Google CloudによるAIの民主化」を宣言。AI/機械学習のサービスをGCPで積極的に展開している。

 オープンソースの機械学習ライブラリTensorFlowを取り込んだ「Google Cloud Machine Learning Engine」、音声認識の「Google Cloud Speech API」、画像認識の「Google Cloud Vision API」、機械翻訳の「Google Cloud Translate API」、自然言語解析の「Google Cloud Natural Language API」、動画解析の「Google Cloud Video Intelligence API」(2018年3月時点でベータ版)といったAI/機械学習のサービスをGCPで提供する。加えて、AI/機械学習用の専用チップ「Cloud TPU(Tensor Processing Units)」を独自開発し、基盤に導入している(写真1写真2)。

写真1 Cloud TPUを搭載したボード
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写真2 Cloud TPUを集積したTPUポッド
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 また、2018年3月時点ではアルファ版ではあるが、機械学習モデルの構築を半自動化する「Google Cloud AutoML」は、ユーザーがAIの活用を進めるうえで強力なサービスとなり得る。

 このようにAI/機械学習のサービスや基盤に力を入れていることも、GCPが注目を集める要因の一つだろう。

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