「当初はクラウド利用に懐疑的な声が多かった。一つずつ不安を解消するなかで、道半ばだが利用部門や経営層にも理解が広がりつつある」――。みずほ銀行でAWS導入を推進する個人マーケティング推進部の黒須義一参事役はこう語る。みずほ銀行は2018年12月20日、システム基盤にAWSを採用し、2019年度から順次適用事例を増やす計画を明かした。

 パブリッククラウド導入に踏み切ったのは「ビジネス拡大のために有力な技術を活用し、新たな価値提供や顧客満足度の向上につなげる」(みずほ銀行の山泉亘個人マーケティング推進部調査役)ため。クラウド導入によりハードウエア更改作業からの解放や事業コストの最適化、ビジネス変革の加速を狙う。

 巨大かつ、高度なセキュリティーやプライバシー保護が強く求められるメガバンクでガバナンスを効かせながらAWS活用を推進するため、複数の工夫を凝らした。権限管理やログ収集などを一元化する共通基盤を構築し、余計な手間や機能の重複を省いて利用部門が円滑にAWSを利用できるようにした(図1)。社内のAWSコンサルティング役としてCCoE(Cloud Center of Excellence)を設置し、利用部門がクラウド化の是非や適切なシステム構成について助言を得られる体制を整えた。

図1 システム基盤にAWSを採用
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 共通基盤の整備にとどまらず、行内のデータ分析業務の基盤でAWS導入の検証も実施した。BI(Business Intelligence)サービスのAmazon QuickSightを中心に、S3やDWH(Data WareHouse)サービスのAmazon Redshift、ビッグデータ処理サービスのAmazon Athenaを組み合わせ、オンプレミス環境のデータ分析基盤をクラウド化した。従来0.25~0.5人月かかっていたエグゼクティブ向けレポートの分析作業工数を8割減らせる試行結果を得た。

 みずほ銀行がシステム基盤としてパブリッククラウドの活用検討を始めたのは2018年春のこと(図2)。複数サービスを比較検討した結果、「確かなニーズの存在や、行内に経験者が多く利用者のコミュニティーの成熟度が高い」(黒須氏)といった理由から、同3月にAWSを採用した。

図2 AWS活用の主な経緯
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 当初の課題はパブリッククラウドの導入に疑問を持つ利用部門の説得だった。「使ったことがない人にAWS特有の用語を並べても伝わらない。利用部門が理解しやすい表現にかみ砕いて説明して回った」と黒須氏は話す。例えばEC2という用語は使わず仮想マシンと表現する。VPC(Virtual Private Cloud)は「賃貸マンションでユーザーごとに小部屋を貸し与えるイメージ」(同氏)といった具合だ。

 山泉氏も「オンプレミス環境のシステム開発や運用の流れをいったん理解したうえで、似ている点や異なる点を丁寧に解説した」と語る。黒須氏や山泉氏は週に2回以上のペースで利用部門やIT部門、経営層を訪ねてクラウド活用の理解を深めていった。説明を続けるなかで「AWSに対する感度が高いキーパーソンを探して回った。理解度に差はあるが、正しく使えば安心でメリットがあると意識を変える人が増えている」(山泉氏)という。

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