沖縄県の主要銀行の一つである琉球銀行は県内企業のAWS活用を引っ張る存在だ。日本におけるAWSのユーザーグループ「AWS User Group - Japan(JAWS-UG)」の沖縄支部である「JAWS-UG沖縄」で講演するなど中核を担う。

 人材確保が難しい状況のなかシニア人材の活用や、全行員に加え嘱託・派遣・出向受入社員やパートも含む約2000人にiPhoneを支給するなど業務効率化も推進する。

 頻繁にハードウエア障害を起こしていたシステムの可用性向上や内製化を目的に、AWSの採用を決断した。他行と共同利用している勘定系や業務系、営業店端末などのデスクトップ仮想化システムを除く全システムを移行検討対象としている。

 第1弾としてコーポレートサイトのシステムをAWSに移行した(図1)。営業統括部の伊禮真メディア戦略室室長は「移行済みも含め現在10程度のシステムを移行中。サポート終了に合わせて着手しており、今後さらに数は増える」と語る。

図1 コーポレートサイトやコールセンター業務にAWS活用
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 コールセンター業務の負担軽減にもAWSを活用する。コンタクトセンター業務アプリケーションのSaaSであるAmazon Connectを導入し、70以上ある支店を対象に顧客からの電話による問い合わせの1次対応を集中化する体制を構築中だ。

重要システム皮切りに意識改革

 AWSへの移行を決めたのは2017年9月のこと(図2)。伊禮室長は移行第1弾にコーポレートサイトのシステムを選んだ理由をこう話す。「インターネットバンキングシステムへの入り口の役割を果たすなど非常に重要なシステム」。ページ数は3000を超えるなどコンテンツ量も多い。「初めに重要なシステムを移行して行内の意識を一気に変えれば、ほかのシステムの移行も進みやすくなる」(同)との狙いがあった。

図2 AWS活用の主な経緯
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 同システムは従来、資本関係のあるITベンダーのリウコムが持つデータセンターにサーバーなどを持ち込むハウジングサービスで運用していた。ところがハードウエア障害が何度か起きていた。

 事務統括部 システム企画課 調査役の山崎崇氏は「インターネットバンキングの利用に関わるため、システム障害が発生すると金融庁に報告の義務がある。冗長化の仕組みを入れてシステムを止めないようにするための費用がかさんでいた」と話す。

 伊禮室長によるとAWS採用の検討を始めたのは2012年に遡る。「値下げを繰り返すなどAWSの思想に注目した」。

 ただし今でこそ金融機関でのパブリッククラウド活用は珍しくないが「当時は『銀行がクラウドなんて使うわけない』という風潮が主流だった」(同)と振り返る。

 JAWS-UG沖縄の支部長やAWSのエバンジェリストなどとの交流を深め、リウコムと一緒に勉強会を開くなど社内の意識変革に努めた。2017年4月に営業統括部長や総合企画部長を歴任した川上康氏が頭取に就任したタイミングで、役員にAWS採用を説明する合宿を開いた。「現頭取は営業統括部長時代にコーポレートサイトのシステムを我々と一緒に独自開発した経験があり、システムに対する造詣が深かった」(伊禮室長)。

 同時期に大手金融機関のAWS導入を支援した山崎氏が入行した。山崎氏と一緒にITベンダーで同金融機関のAWS導入に携わった篠根徹也 事務統括部 システム企画課 調査役も加わり「技術やノウハウの面でもAWSを導入できる素地が整った」と伊禮室長は語る。

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