エネルギー業界の自由競争に勝つため、東京ガスは2018年4月にAzureを使ったAPI連携基盤を運用開始した。約200ある既存の社内システムの機能を連携して新サービスを素早く開発しやすくする(図1)。

図1 社内システムを連携し新サービスを素早く開発
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 2019年度以降に、API連携基盤を活用した新サービスの第1弾を投入する計画だ。東京ガスにとって、パブリッククラウドを本格活用する初の取り組みとなる。

 東京ガスがAPI連携基盤を構築したのは、競争力向上を目的とした攻めのIT活用を加速させるためだ。

攻めのIT活用の契機に

 グループ全体で1100万件超の顧客を抱える同社はこれまで、安心・安全を重視したシステム開発や保守を中心に進めてきた。

 都市ガスの小売り自由化が2017年4月に始まり、新規企業が参入するなど競争が激化したことで「顧客満足度のさらなる向上が喫緊の課題として浮上した」と、東京ガスグループのIT子会社である東京ガスiネットでデジタル技術部デジタルトランスフォーメーションセンターに所属する斉藤秀明氏は振り返る。

 顧客満足度を高めるには、顧客への提案力を強化するシステムや魅力的なサービスを迅速に開発できる仕組みづくりが欠かせない。

 実現に向けた課題はガスの検針や請求、保安、顧客管理、契約管理といった既存のシステムと連携させようとすると、時間と手間がかかることだ。「社内システムはサブシステムを含めて200以上あり、それぞれ密に関連し合っている。一部のシステムを変更するだけでも、影響範囲を明らかにするのに膨大な調査が必要だった」(斉藤氏)。

 同社は打開策としてAPI活用を選んだ。既存システムの機能をAPI経由で利用可能にするとともに、外部のシステムや新システムとAPIで連携できる基盤を用意しておけば「システムを変更する際の影響範囲を小さくでき、新サービスを素早く実現できる」と斉藤氏は説明する。

 新規のAPI(REST API)は基本的にAzure上で開発する計画だ。現時点ではAPIの実行環境としてアプリ実行基盤のAzure App Service Web Apps、コンテナ管理ツール「Kubernetes」のサービスであるAzure Kubernetes Service(AKS)、サーバーレスコード実行のAzure Functionsの利用を想定している。

 斉藤氏と同じく、東京ガスiネットでデジタル技術部デジタルトランスフォーメーションセンターに所属する中村達也氏は「既存システムにあるSOAP APIをREST APIに変換して使ったり、オンプレミス環境に新たにREST APIを作成したりする可能性もある」と話す。

開発者向けポータルが決め手

 東京ガスがAPI連携基盤の構築を決めたのは2017年3月のことだ(図2)。同年9月にクラウドベンダー7社に提案依頼書(RFP)を提示した。中村氏は「コストをかけずに短期間で開発するために、クラウドサービスの利用を当初から前提としていた」と話す。

図2 Azure利用の主な経緯
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 国内外のクラウドサービスを比較し、同年10月にAzureの採用を決めた。「決め手はAPI管理ができるPaaSと、開発者向けポータルがあったこと」と中村氏は理由を挙げる。

 AzureにはAPI作成・管理のPaaSであるAzure API Managementがある。API作成・管理のPaaSを提供しているクラウドサービスは他にもあったが、「当時、開発者向けポータルを利用できたのはAzureだけだった」(中村氏)。

 開発者向けポータルは、作成したAPIの一覧や仕様、利用方法を表示する機能だ。「基盤を用意するだけでは、APIを使った新規システムの開発が進まない恐れがある。ポータルは開発者がAPIを利用する際に必要な情報をまとめて提供するので、利用促進につながる」(同)と考えた。

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