「これまでライブの盛り上がりや来場者の属性は感覚でしか把握できなかった。リアルな空間で生の顧客データを取れるのは新鮮な驚きだ」――。エイベックスの山田真一 CEO直轄本部 デジタルクリエイティヴグループ ゼネラルマネージャーは、Azureの顔分析AIを使ったライブ来場者の感情分析システムの開発をこう振り返る。

 エイベックスはAzureのコグニティブ(認知)AIのAPI群である「Microsoft Cognitive Services」を使い、ライブ来場者の性別、年齢、感情の推移を数値化、可視化するシステムを開発した。

 ステージ上に設置したカメラで来場者を撮影し、顔画像を学習済みのAIである顔分析クラウドサービスの「Face API」で分析する。解析結果はストリームデータ受信の「Azure Event Hubs」で受け取る。ストリームデータ処理の「Azure Stream Analytics」で加工後、リレーショナルデータベースの「Azure SQL Database」に蓄積し、各種BI(Business Intelligence)ツールで可視化する(図1)。

図1 Azureの顔分析AIでライブ来場者の属性や感情を可視化
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 分析データを基にマーケティング施策を見直したり、ライブの曲順や演出を改善したりするといった活用につなげる。山田氏は「来場者の感情の盛り上がりに応じて、ライティングを変えるといった仕組み作りを検討中。早ければ2018年内に実現したい」と語る。

きっかけは顧客データの争奪戦

 同システムを開発したきっかけは、チケット販売大手とのデータ争奪戦だ。「多くの顧客はチケット販売大手でライブチケットを購入する。当社もチケットの直販サイトを運営しているがシェアが小さいため、誰がチケットを買ったか分からない状況だった」と山田氏は語る。

 チケット購入者と来場者が同一人物ではない場合もあり、正確な来場者の属性を把握するのが難しい問題もあった。山田氏は「グループ横断で顧客のデータをマーケティングに生かす動きがあったが、基となるデータが本当に正しい対象を捉えているのかどうかという疑念もあった」と振り返る。

 正確な属性やライブの盛り上がりをつかむには必然的に来場者を見るしかないが、「マーケティング担当者が全ての会場に足を運ぶのは現実的ではない。属性の分布や盛り上がりも肌感覚でしか捉えられなかった」(山田氏)。

 課題解決の糸口として期待を寄せたのが、顔分析AIだ。山田氏は「2017年6月に米Microsoftの本社に行く機会があり、Face APIの最新事例を見た。対象者の年齢や性別を数値化でき、感情も数値化できることから、販促に生かせると考えた」と話す(図2)。

図2 Azure活用の主な経緯
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 2017年7月末に所属アーティストのライブツアーで実証実験を実施した。2017年8月には実証実験時のデータを使い、ほかの海外大手クラウドベンダーや、国内外のベンダーが提供する顔分析AIとの比較検証を行った。

 比較検証結果について、山田氏はこう説明する。「ある条件下では他社サービスのほうが認識精度が高い場合もあったが、Face APIは8種類の感情の割合が分かるなど、当時としては最も細かく分析できた」。

 Face APIを使うと、性別や年齢、眼鏡の有無に加え、怒りや喜びといった感情の度合いを示した数値が、判定結果としてJSON形式で返ってくる。顔の表情から「怒り」「軽蔑」「嫌悪感」「恐怖」「喜び」「中立」「悲しみ」「驚き」といった8種類の感情の割合を算出する。

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