「クラウドの画像認識AI(人工知能)を使うことで、1万枚以上の写真から顧客が自分の子供が写ったものを1~2秒で検索できる」――。ネット写真販売サービス「はいチーズ!」を手掛ける千の千葉伸明社長は、AWSの深層学習による画像認識AIサービス「Amazon Rekognition」活用の効果をこう語る。

 はいチーズ!は幼稚園や保育園の運動会といったイベントの写真を、ネット経由で閲覧・購入できるサービスだ。幼稚園や保育園を中心に全国で5000団体が利用する。

写真を探す手間をAIが軽減

 大規模な園では写真が1万枚以上になることもある。保護者にとって多数の選択肢から写真を選べる一方で、画像を探す手間が課題となっていた。「10年前から業界全体で問題視されていた。保護者の負担になるだけでなく、販売機会の損失を招く重要な課題だった」(千葉社長)。

 課題解決のために2017年に採用したのが、Rekognitionだ。

 同サービスを使い、顔検索機能を開発した。保護者が子供の写真をアップロードすると、AIが顔の類似度を判別してその子供が写っていると推測される写真を自動抽出する(図1)。

図1 Rekognitionによって膨大な写真から我が子が写ったものを1~2秒で検索
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 開発を手掛けた千の熊谷大地ものづくり部マネージャーは、「100%の精度とはいかないが、保護者の負担を大幅に減らせた。販売につながる割合も上がっている」と効果を挙げる。

障壁(1)
ストレージコストの負担増でシステムをAWSに移行

 千のAWS活用は2011年にさかのぼる(図2)。はいチーズ!の提供開始は2006年。当初同サービスのシステムは、完全に外注任せで構築していた。

図2 AWS活用の経緯
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 熊谷マネージャーによると「安定運用できていなかったり、融通が利かなかったりする点が課題になった」ことから、内製化を決断。ニフティクラウドを使い、2010年にシステムを再構築した(図3)。

図3 段階的にインフラをAWSに移行
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 ところがサービス拡大に伴い、ストレージコスト削減の必要性が高まった。「当時はAWSの東京リージョンはまだなかったが、シンガポールリージョンでメールサーバー用にEC2を使い始めた。Amazon S3に比べてニフティクラウドのストレージサービスは割高に感じていた」という。

 2011年3月の東京リージョン開設をきっかけに、ストレージのみニフティクラウドのサービスからS3へと移行した。

 しかし、二つのクラウドサービスを利用する過程で、新たな課題が生じた。「開発や運用担当者は2種類のクラウドに精通する必要がある。ノウハウ習得の負担が増えることによる開発スピードの低下を懸念した」。

 課題解消のため、AWSへの全面移行を決断。段階的に移行を進め、2016年末に移行完了した。熊谷マネージャーは「インスタンスタイプの選定、細かなチューニング、動作テストなどで想像以上に苦労した」と振り返る。

 利用している主要なEC2のインスタンスタイプは、CPU性能重視の「コンピューティング最適化」ではc4.largeを使用。

 CPU、メモリー、ネットワークのバランスを取った「汎用」ではt2.large、t2.medium、t2.smallなどを使っている。

 AWSへの全面移行により「詳細な比較はしていないが、実感としては全体で4割以上のコストを削減できた」(熊谷マネージャー)。

 千葉社長も「AWSの継続的な値下げもあり、コストについては圧倒的にメリットを感じている」と語る。

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