世界10拠点以上で、オイルレスベアリング(軸受け)と免震・制震装置を製造するオイレス工業。同社は2016年5月、全拠点の業務を担う欧州SAPのERP(Enterprise Resource Planning)システムの開発・検証環境を、オンプレミス(自社所有)環境からAzure上に移行した。

 プライベートクラウドで運用していたSAP ERPは従来、国内拠点向け、海外拠点向け、欧州拠点向けに分かれていた。これをAzure上で、国内拠点向けと海外拠点向け(欧州を含む)の二つに集約。欧州拠点向けの本番機は会計データを15年間保持する必要があるなどの理由から、普段は動かさずバージョンアップもしない状態でAzure上に残した。

 オイレス工業 企画管理本部 情報システム部長の加藤謙一氏は「販売、購買、在庫、生産管理、会計、人事など、全ての業務でSAP ERPを利用している」と話す。

 同社がパブリッククラウドの活用に踏み切った狙いは、大きく三つある(図1)。第一はオンプレミス環境で運用していた、プライベートクラウドのリソース不足の解消だ。

図1 国内・海外拠点向けSAP ERPの開発・検証環境をAzureに移行
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 毎年のように拠点を拡大するなかで、機能拡張やシステム統合の要望が増えたため、「プライベートクラウドでは、各拠点に合わせた業務変更や機能追加などをテストするための物理リソースが足りなくなっていた」と加藤氏は語る。

 例えばプライベートクラウドの共有ストレージは、約91TBの容量に対して「ほとんど空き容量がなく、本番機を含めてレスポンスが下がるといった問題が起きていた」(オイレス工業 企画管理本部 情報システム部 IT企画課の杉崎智史氏)。

プロジェクトの俊敏性を向上

 SAP ERPの開発・検証環境をAzure上に移行すれば、その分プライベートクラウドのリソースに余裕が生まれる。各拠点に向けた開発・検証環境もAzureを活用することで、「プロジェクトの俊敏性を高められる」と加藤氏は考えた。

 第二はハードウエアの更新コストの低減だ。通常は5年に1回更新するが、SAP ERPのライセンスが切れる2025年まで、あと2回は更新する必要があった。加藤氏は「SAP ERP関連では仮想と物理を合わせて全体で約140台のサーバーがあった。2回とも全て買い替えるとなると負担が大きかった」と話す。

 Azureへの移行で、インフラコストは「次の更新までの5年間で約4割削減できる」(加藤氏)と見込む。

 第三はDR(Disaster Recovery)環境の運用負荷軽減だ。同社は藤沢本社のプライベートクラウドのほかに、香港で国内拠点と海外拠点向けのSAP ERP本番機のDR環境を運用してきた。「サーバーラック2本にネットワーク機器を入れていたが、ディスクが壊れた際に国内で代替品を購入して送る必要があるなど手間が掛かる」と加藤氏は語る。

 復旧作業を試したところ「当初は3時間経っても復旧しなかったり、慣れた人が作業しないと関連するサブシステムが全く動かなかったりすることもあった」と杉崎氏は打ち明ける。DR環境についても、2017年中にAzure上へ移行する考えだ(図2)。

図2 オイレス工業のAzure活用の主な経緯
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