「AWSの活用で遭遇しがちなトラブルは一通り経験した」――協和発酵キリン 情報システム部長の篠田敏幸氏は、業務システムのAWS移行の取り組みをこう振り返る。

 同社は2013年初頭にインフラとして、AWSの本格利用を開始した。欧州SAPのERP(Enterprise Resources Planning)システムや、生産管理、営業支援、販売物流といった基幹系システムを順次AWSに移行している(図1)。

図1 AWS環境のシステム概念図
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 2017年1月時点でAWS上で本番稼働しているのは、基幹系から開発・テスト向けまでを含めて46システム、94台のサーバーになる。月額の利用コストは約9万2000ドルと年々増えている。一方、「オンプレミス(自社所有)環境のサーバーは半分程度に減らせた」(篠田氏)という。

洪水やDC移転がきっかけ

 同社がAWSの試用を始めたのは2011年春。2011年3月にAWSの東京リージョンが開設し、「1年間の無料利用枠を使い、Linuxサーバーを動かしてみた」と篠田氏は話す。

 2011年8月には、データセンター内に顧客専用の仮想プライベートネットワーク環境を作れる「Amazon VPC」が登場した。篠田氏は「VPCに加え2011年末にはAWSへのVPNサービスが出そろったことで、企業システムでも使えると判断した」と説明する。

 2012年には評価用のインフラをAWS上に構築した(図2)。AWSの活用にはインフラ管理の作業工数の削減、IT資産の費用化、システム開発期間の削減といった狙いがあった。

図2 AWS活用の主な経緯
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 折しも2011年に発生したタイの洪水の影響で、2012年春に発注していたサーバーの到着が約2カ月遅延する事態が起きた。篠田氏は「物理サーバーの場合、供給が止まるとビジネスに多大な影響を与える可能性があるという恐怖感が背筋を走った」と打ち明ける。

 2011年3月の東日本大震災の影響で、データセンターを移転したときの経験も、クラウド活用に踏み切った一因だ。「サーバー輸送中の事故を考慮して、トラックの輸送路を複数ルートに分けるなど苦労した」(篠田氏)。

 2012年秋にはSAPが「SAP ERP」などを含む「SAP Business Suite」の実行環境としてAWSを認定した。「少なくとも開発系のサーバーは移行できる」と篠田氏は感じた。

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